Disc Review

The Montreux Years / Nina Simone + The Montreux Years / Etta James (BMG)

ザ・モントルー・イヤーズ/ニーナ・シモン + ザ・モントルー・イヤーズ/エタ・ジェイムズ

長い歴史を誇る伝説の音楽フェスのひとつに、毎年7月にスイスのレマン湖畔の町、モントルーで開催され続けているモントルー・ジャズ・フェスティヴァルがある。メインのコンサート会場となるオーディトリアム・ストラヴィンスキーやマイルス・デイヴィス・ホールを中心に、夏の16日間、当地の様々な会場に世界中から多彩なアーティストが訪れ、熱いライヴを展開しているわけだけれど。

去年はさすがに開催中止。その代わり、過去50年以上の歴史の中で撮影してきた50本超のライブ映像を期間限定で無料公開したり。そして、それら映像に続いて、今度は音のほう。モントルー・ジャズ・フェス絡みのライヴ音源発掘シリーズもスタートすることとなった。

1967年に同フェスを立ち上げた功労者、クロード・ノブズは生前、5000以上のライヴ・パフォーマンスをレコーディングし、その音源をコレクトしていたのだとか。そのうちいくつかは、えーと、たとえばエラ・フィッツジェラルドとか、チック・コリアとか、サンタナとか、ウェイン・ショーターとか、アリス・クーパーとか、アーティスト自身の手によって正規ライヴ・アルバムなり映像作品なりでリリースされたりもしてきたわけだけれど。まだまだ未発表のまま眠っている音源も膨大。

ということで、BMGレコードがモントルー・フェスと手を組み、それら貴重なライヴ音源を、既発もの/未発表もの取り混ぜつつ発掘リリースする“ザ・モントルー・イヤーズ”シリーズを旗揚げしたというわけだ。以前もイーグル・アイあたりと組んだ形で同趣向のシリーズが企画されていたけれど、また心機一転。新たなスタートとなった。その第一弾としてこのほど2作がリリースされた。ひとつがニーナ・シモン、もうひとつがエタ・ジェイムズ。

ニーナ・シモンは1968年の第2回に初出演後、1976年、1981年、1987年、1990年の計5回、同フェスに出演していて。今回の盤にはそのすべてのパフォーマンスから厳選された音源が詰め込まれている。ディスク1に映像作品としてもリリースされている1976年の音源をはじめ、以降4回のステージからのベスト・パフォーマンスを年代順不同で収め、ディスク2に初出演となった1968年のステージを初めてフルで収録。

ロジャース&ハート作の「リトル・ガール・ブルー」から、ビージーズの「トゥ・ラヴ・サムバディ」、ジャック・ブレルの「行かないで(Ne Me Quitte Pas)」、ジャニス・イアンの「スターズ」、ボブ・マーリーの「ノー・ウーマン、ノー・クライ」、そしておなじみ「シー・ライン・ウーマン」や「マイ・ベイビー・ケアズ・ジャスト・フォー・ミー」まで。“自らがジャンル”と言うべきニーナ・シモンの魅力をたっぷり味わえる。

で、エタ・ジェイムズのほうは、ディスク1に1977年、1978年、1989年、1990年、1993年の出演時の音源からセレクトされたベスト・パフォーマンスを収め、ディスク2には彼女にとって初のヨーロッパ公演でもあった1975年出演時のステージからのハイライト音源を収録。もちろん「テル・ママ」あり、「サムシングズ・ガット・ア・ホールド・オン・ミー」あり、「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」あり、「アット・ラスト」あり。10年くらい前、同趣向のライヴ・コンピが編まれたこともあった。1975年のもっと曲が多いライヴ盤も出てはいた。けど、今回は最新UKリマスターもほどこされた形でのリリースなので。やはり見逃せません。

とにかく、どちらもそれぞれ強力な歌姫による強力なライヴ・コンピレーションだ。間違いなし。週末はこれで盛り上がろうっと。

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