
ネオン・サマー・スキン/ベドウィン
本当にぽつぽつと…というペースながら、素晴らしいアルバムをリリースし続けているシンガー・ソングライター、“ベドウィン”ことアズニヴ・コーケジアン。新作出ました。2021年の『ウェイサイズ』以来かな。
どういう人なのかについては以前のエントリーとかにもざっくり書いてはいるのだけれど。
簡単に繰り返しておくと。シリアのアレッポ生まれ。家族はアルメニア人で。その後、一家でサウジアラビアへ。ベドウィンが10歳になるまでそこのアメリカン・スクールに通って、伝統的なアルメニア音楽、アラブ音楽に加えて、アメリカの音楽にもたくさん触れて育ったのだとか。やがてグリーンカードの抽選に当選して、一家はアメリカに移住。ボストン、オースティンなどさまざまな土地を経由して、現在はロサンゼルスを本拠に活動中…と。
そんな感じらしいのだけれど。ぼくも詳しいことは全然わかっていなくて。なんか今回の新作アルバム聞いていたら、ご両親はサウジアラビアに戻っちゃっているみたいで。もう会えないかもしれないという、その別れに直面したとき、“誰かの子供であることをやめる準備ができていなかった”と感じて。その感情を核にして、今回のアルバムが生まれたらしい。
彼女にとっては初めてのコンセプト・アルバムというか、ひとつの思いに貫かれたフル・アルバム。生まれ故郷を離れ、20代、30代、さまざまな土地を転々として、自分を変えようともいろいろ試みて…。でも、最終的に思いはほろ苦い感触とともに自分の人生のもっとも古い記憶へ。
かつて身を包んでいたネオン・カラーの水着、夏の午後の温かな静けさ、距離が生まれるまで痛むほどに深く見つめることのなかった家族生活の日常の光景…。タイトル・チューンでベドウィンは“みんな、もう歳を取った”みたいなことも歌っているのだけど。過去の記憶、無垢さの喪失、明日への思いみたいな、不可逆的な時の流れがじんわりと綴られていて。この人の表現の深さのようなものが胸に沁みます。
曲もいいし、音像も素敵だし。今回もガス・セイファートとの共同プロデュース。金管楽器も含む多くをベドウィン本人が演奏。曲によってはセイファートに加えて、ジョナサン・ラドやレモン・ツイッグスのダダリオ兄弟も参加。弦やホーンを含むアンサンブルの構築に関しても今回が最高の仕上がりかも。



