Disc Review

Foreign Tongues / The Rolling Stones (Polydor)

フォーリン・タングス/ザ・ローリング・ストーンズ

昨夜、東京・丸の内のCOTTON CLUBで佐野元春のスポークンワーズ・ライヴ『In Motion 2026・空気』を生体験することができて。井上鑑、山木秀夫、坂井紅介という腕ききトリオとのタッグの下、濃密さと軽快さ、軽い難解さとポップなキャッチーさ、鋭さと緩さ、いくつもの相反する要素をスリリングに交錯させながら言葉を発していく様子にすっかりしびれて。

まあ、今夜もまだパフォーマンスは続くので、細かいことは綴りませんが。特に、昨夜初披露された新作が、今の時代に対してものすごくストレートなメッセージを放っていて。なにかとくじけそうになることだらけの空気感の中、いやいや、諦めずに怒り続けないと、めげずにふんばり続けないと…と、力強く心を奮い立たせてくれたりして。佐野さん、やっぱりかっこいいな、との思いを新たにしながら帰ってきて。

で、深夜、ローリング・ストーンズの新作のストリーミングがスタート。それ聞いたら、今度はそこでミック・ジャガーがまたあれこれ怒っていて。前作『ハックニー・ダイアモンズ』の「バイト・マイ・ヘッド・オフ」同様、ポール・マッカートニーがベースで参加した「カヴァード・イン・ユー」って曲では“独裁者ども/やつらはまるで汚いネズミの群れのように繁殖する/ミサイルを誇示する”とかシャウトしていたり。

5月に先行リリースされていた「イン・ザ・スターズ」でも“法服に身を包んだ裁判官たちは全員ゴム印を受け取った”とか歌っていたし。“若いころは火星に行きたかった”とか歌われる「ミスター・チャーム」って曲には“誰に頼ればいいんだ?/ボーイングか? NASAか?/それとも、あの狂気の富豪、マスク氏か?”なんてフィンガー・ポインティング的なフレーズも盛り込んでいるし。「ディヴァイン・インターヴェンション」では“ディストピア的な価値観は手に負えないほど熱い/俺は炎に包まれて消えていく”とか吐き捨てているし。

80代のミック・ジャガー、70代の佐野元春、内外問わず意識的なベテラン・ミュージシャンたちの心意気に胸躍る夜になりましたよ。

というわけで、ストーンズの新作。既報でたぶんご存じの通り、ポール以外にも、スティーヴ・ウィンウッド、ブルーノ・マーズ、ロバート・スミス、チャド・スミスらが曲によって客演。プロデュースは前作から引き続きのアンドルー・ワット。基本リズム・セクションはもちろんスティーヴ・ジョーダン&ダリル・ジョーンズ。故チャーリー・ワッツが生前に参加した音源も1曲あり。

全14曲中12曲がジャガー=リチャーズ作品で、ミックのハーモニカがいい味を出しているエイミー・ワインハウスの「ユー・ノウ・アイム・ノー・グッド」と、アルバムの締めくくりにアコースティックで演奏されるチャック・ベリーの「ビューティフル・デライラ」の2曲がカヴァー。ミックも曲によってダメダメなプレイボーイになったり、虚飾のセレブになったり、シニカルなアウトサイダーになったり…。ああ、ストーンズだなぁ、という感触は今なお衰えず。

特にどこに文句をつけるとか、そういうこともない、だいたいアルバムの半分くらいは、何も考えず思いきり痛快に楽しめた1枚でした。個人的にはちょっと地味ながら、キースとグラム・パーソンズの蜜月時代を彷彿させる「リンギング・ホロウ」って曲にぐっと来ました。お達者!

ただ、前述のシングル曲「イン・ザ・スターズ」のビデオクリップとか見ていると、そこでのストーンズ3人が1970年代っぽい風貌で演奏していて。AIを駆使したのであろうこのディープ・フェイク感って、まあ、それか今どきなのかなとも思うけれど、妙に居心地が悪かった。あれ見ちゃうと、このアルバム全体までディープ・フェイクっぽく感じちゃうというか…。

本人たちもあのころが全盛期だったなと認めているってことなのかもしれないけど。できることなら今の風貌そのままでロックしている姿を見せてほしかった、というのが個人的な本音ではあります。アルバムのトレイラー映像とか見ると、今の姿で十分かっこいいのに。こっちでお願いします。

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