Disc Review

Seven Psalms / Paul Simon (Owl Records/Sony Music)

七つの詩篇/ポール・サイモン

本日、毎月恒例のCRTイベントです。今夜のテーマはポール・サイモン。新作アルバム『七つの詩篇(Seven Psalms)』が5月にUSでリリースされて、本日、晴れて国内盤も出るということで。それをことほぎ、CRTも勝手にリリパさせていただこうか、と(笑)。

おかげさまで、小さなお店での開催ということもあり予約で満席。ありがとうございます。ただ、モニターでの観覧になる2階席へのご案内にはなりますが、ほんの少しだけ当日分もあり。予約キャンセルが出る可能性も。空席状況はお気軽にお店までご確認ください。そんなことも含め、予約したけどご都合悪くなったなんて方は、ぜひお店まで一報をお願いしますね。

ということで、今朝のピックアップ・アルバムは『七つの詩篇』でいきます。US盤が出たタイミングで取り上げようかとも思ったけど、これ、すごく深い一作なもんで。丸山京子さんによる歌詞の対訳とか、能地祐子による入魂のライナーノーツとかが付いた国内盤のほうが絶対いいだろうなと思って。今日まで寝かせちゃいました。

とはいえ、まあ、誰もが認める偉大なアーティストが久々にリリースした手応えたっぷりの傑作アルバムだけに、寝かせているうちに当然あちこちでたくさん紹介/解説もされたし、ポール・サイモンご本人が制作の背景を語ったトレーラー映像(下に貼っておきます)とかも公開されて、今さらぼくごときが何かを新たに付け加えることもないわけですが。

基本情報を簡単に繰り返しておくと、ポールさん、2019年のアタマに夢を見たそうで。“お前は『七つの詩篇』という作品を作る”と告げられた、と。以来、ポールさんは毎週2回か3回、午前3時半から5時くらいに目が覚めて、そのつど言葉が降りてくるように。それを書き綴り、まとめあげたのが今回のアルバムらしい。アルバム・タイトル通り、全部で7つの楽曲が収められているものの、CDもサブスクのストリーミングもトラックはひとつ。七つの楽章に分かれた全長33分の1曲として記録されている。

タイトルからもわかる通り、ダビデの詩篇なども意識した、聖書的なニュアンスを色濃く反映した一作で。プロデュースは、ポールさんとエンジニアのカイル・クラシャムとの共同名義。基本的にはポール・サイモンの歌とギターをメインに綴られた1枚ではあるけれど、英混声アンサンブルのヴォーチェス8、フルートのアレックス・ソップ、ヴィオラのナディア・シロタ、チェロのゲイブリエル・カベサスら現代音楽室内楽団“yMusic”のメンバーたち、サイモンの奥さまでもあるイーディ・ブリケルなど、気になる顔ぶれがここぞのところで的確にサポート。そのあたりの参加ミュージシャンについても能地祐子が国内盤ライナーでけっこうきっちり追いかけているので、ご興味ある方はぜひチェックしてみてください。

曲そのもののクオリティだけでなく、アルバム全体を貫く音像に思いきりハマりました。サイモン&ガーファンクル時代からポールさんは“エコーの魔術師”と呼ばれたロイ・ハリーの助けも借りつつ、音響というか、残響というか、そういうものにこだわった音作りを続けてきたわけで。例の「ザ・ボクサー」のレコーディングの際、コロムビア・レコードのビルのエレベーター・ホールにマイクをセッティングして、ハル・ブレインがスネア2本をバシーッと叩いて深い深いナチュラル・エコーを得たとか、“ライラライ…”のコーラスをわざわざ教会で録音したとか、いろいろなエピソードが残っている。

それは彼が弾くアコースティック・ギターのフレージングというかコードの響かせ方にも色濃く表われていて。開放弦を絶妙にコードの中に交え、それを鳴らしっぱなしにすることで、なんとも言えない独特の和声感を生み出してきた。前述した通り、今回もそういう彼独自のギター・プレイが音像の基本を作り上げていて。加えて、自ら奏でるバス・ハーモニカとか、ハリー・パーチ考案による現代音楽系の楽器とか、あるいはヴォーチェズ8のコーラスとか、yMusicの弦楽アンサンブルとかが背後を静かに、淡々と埋めて。独特の音響空間を生み出している。

倍音出まくりのホーミーとか、お経とか、ああいうのにも近い世界観かも。

ポール・サイモン本人はこのアルバムを“死”のイメージと二重映しにしないでほしい旨、インタビューで語っているらしい。でも、このアルバムに通底する深淵かつホーリーな音世界が、生とか死とかを超えた、どこか現実とは別次元の“場所”を聞く者にイメージさせるのは仕方ないことなのかもしれない。そういう意味じゃ、ポールさん、ここにきてとんでもないアルバムを作り上げてしまった感も。

7曲それぞれを単体で語るのはポールさんの意図に反する野暮な行為なのかもしれないけれど、個人的には3楽章目、アルバムの中でもっともポップなコード進行を伴った「マイ・プロフェッショナル・オピニオン」って曲にぐっときました。とことんホーリーなテイストのアルバムの中にもこういうキャッチーな感触をぶち込んでくれるポール・サイモンが好きです。

あと、ラスト2曲で歌声を重ねるイーディ・ブリケルも素晴らしく。今夜のCRTでもそのあたり、みんなで語り合い、堪能したいです。ちなみに例のポールさんのトレーラー映像、このアルバムの制作過程を描いたアレックス・ギブニー監督によるドキュメンタリー『イン・レストレス・ドリームズ』の一部だそうで。そっちも楽しみっすね。

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