Disc Review

Beautiful & Strange / Chelsea Williams (Blue Élan Records)

ビューティフル&ストレンジ/チェルシー・ウィリアムス

オハイオ生まれ、ロサンゼルス育ちのシンガー・ソングライター。2017年のアルバム『ブーメラン』に続く、ロサンゼルスのインディー・レーベル“ブルー・エラン”からの第2弾が出た。もう10年選手らしいのだけれど、勉強不足でぼくはこの人の活動初期のこととかよく知らないまま。

でも、前作『ブーメラン』で初めて出会ってなんだか好感を持って。かといって、それ以前の活動を深掘りすることもなく時が過ぎて。そしたら、今回新作が出て。これ聞いて、また変わらず好感を抱いた、と。そういうことで、よくわかっていないまま、軽く紹介させていただきます。

“チェルシー”という名前は、ヴォーカル・コーチなどもつとめていた音楽好きの母親がジョニ・ミッチェルの曲「チェルシー・モーニング」にちなんでつけたものだとか。母親はシングル・マザーで、チェルシーを含む二人の娘を苦労しながら育てていたようだけれど、常に音楽がそばにあって。それがチェルシーの感性を豊かに育んでくれた、と。

ママのレコード・コレクションの中では特にパッツィ・クラインとニール・ヤングがお気に入りだったというチェルシー。そんなわけで、まあ、そういう感じの音楽性です。数年前、米ローリング・ストーン紙がこの人のことをシェリル・クロウと比較して注目度を語っていたりした。なるほど、それもわかる。

本人も、自分の音楽をあえてジャンル分けするとすればたぶん“アメリカーナ”ということになるのだろうけど、もうちょっとポップで多彩なニュアンスが強いかな…と語っていて。今回のアルバムもまさにそういう仕上がりです。

とはいえ、シェリル・クロウほどロック的なやばさとか毒っぽさを孕んでいるわけではなく。適度にゴージャスかつオーガニックなオーケストレーションなども導入しつつ、アメリカーナ+1970年代西海岸ポップ的な質感をすっきり実現した1枚。特に目新しい要素とかはないものの、そこそこいい曲をいい声で気持ちよく歌っていて、聞いているこちらの気分をほんわかさせてくれる。

でも、けっして軟弱なわけじゃない。歌詞のほうは曲によってけっこう辛辣だったりもするし、音に関しても、なにやらこの人、サンタモニカ・サードストリート・プロムナード界隈で路上演奏していたストリート・ミュージシャン時代がけっこう長かったようで。そこで鍛えられた地力はバカにできない。どんなサウンドをバックに従えようと、けっして自分を見失わない強さと柔軟さを持ち合わせている気がする。そこがいい。

プロデュースは旦那さまのロス・ギャレン。ハーモニカ・プレイヤーとしてボン・イヴェールとかケシャとかブルース・ホーンズビーとかブラッド・メルドーとか、幅広いアーティストたちとも共演してきた人だ。ベン・フォールズやマーク・コーンとのライヴ活動でもおなじみかも。この人もアメリカーナを基調に、レトロとモダンが入り交じった音楽性を持った人なので、チェルシーとの相性はばっちりか。

そういえば、アルバムには入っていないのだけれど、この人、最近アメリカの「金色の髪の少女(Sister Golden Hair)」のカヴァーってのをラジオ放送用にやったみたいで。それがYouTubeに載っていた。いい出来だった。なので、それもリンクしておきますね。こちらです。なんか、とってもこの人の個性をよく表わしているような気がして。素敵でした。

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