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Disc Review

Down in the Bottom: The Country Rock Sessions 1966-1968 / The Everly Brothers (Cherry Red Records)

ダウン・イン・ザ・ボトム:ザ・カントリー・ロック・セッションズ1966〜1968/エヴァリー・ブラザーズ

カントリー・ロックの起源に関しては諸説あって。

まあ、単に伝統的なカントリー感覚とロックンロール感覚との融合ということであれば、たとえばロカビリー。1950年代半ばに爆発した一連の初期型ロックンロールなど、その典型ということになりそうだけど。

が、これはまだ“ロックンロール”時代の話。ロックンロールが“ロック”と短縮されて呼ばれるのが普通になった1960年代半ば以降、はじめてロック・アーティスト的な視点で伝統的なカントリー文化を徹底的に見つめ直した偉人ということになると、やはりグラム・パーソンズか。

1966年にインターナショナル・サブマリン・バンドを率いてデビューしたのち、ザ・バーズに引き抜かれ、1968年に名盤『ロデオの恋人』を制作。直後、バーズのメンバーだったクリス・ヒルマンとともにフライング・ブリトー・ブラザーズを結成…。ここに至ってパーソンズはカントリー・ロックを完成させた、と。

でも、彼がロック・バンドのフォーマットでカントリーをやったら面白いんじゃないかと思いついたのは、ローリング・ストーンズがハンク・スノウのカントリー・ヒット「アイム・ムーヴィン・オン」に挑んだカヴァー・ヴァージョンを聞いたからだとか、ビートルズが『フォー・セイル』で取り組んでいたカール・パーキンスのカヴァーを聞いたからだとか、いろいろ言われていて。そうなると、ストーンズやビートルズこそカントリー・ロックの元祖と言えるのかもしれない。

あるいは、1966年にボブ・ディランがアルバム『ブロンド・オン・ブロンド』を録音するためにナッシュヴィルに向かい、そこで当地の気鋭ミュージシャンたちを起用して繰り広げたセッションがきっかけだったとか、いや、1969年、モンキーズに在籍中だったマイク・ネスミスが彼らナッシュヴィルの気鋭たちを集めて行なった伝説のセッションこそが重要だったとか…。

いろいろあるわけですが。とにかく1960年代後半、アシッド・ロック、サイケデリック・ロックなどがシーンを席巻し、ロックを取り巻く共同幻想がまさに飽和点に達しようとしていた混乱の時代、いろいろなところでいろいろな人たちが時流に逆らうように、今一度自らのルーツを見直そうとしながら、当時最先端のポップ・ミュージックとしてのカントリー・ロックというものを生み出そうと試行錯誤していた、と。

そういう意味では、1966年から67年にかけて、時流に流されることなく建国以来のアメリカの歩みを自分なりのやり方で模索しようとしたビーチ・ボーイズの『SMiLE』とか、その制作に大きく関わったヴァン・ダイク・パークスの『ソング・サイクル』とかも同じ根っこを持った動きだったのかも。今で言うところのアメリカーナのひとつの在り方というか。

で、長い前フリでしたが、本日の主役、エヴァリー・ブラザーズ。彼らが1968年にリリースしたアルバム『ルーツ』っていうのも、当時たいして売れた作品ではなかったものの、そうした初期型カントリー・ロックの誕生を記録した名盤としてけっして見逃せない1枚なのだった。

エヴァリーズの場合、もちろん全盛期は「バイ・バイ・ラヴ」「起きろよスージー(Wake Up Little Susie)」「夢を見るだけ(All I Have To Do Is Dream)」「マリーへのメッセージ(Take A Message To Mary)」などを連発していたケイデンス・レコード在籍時代から、「キャシーズ・クラウン」「クライング・イン・ザ・レイン」などをヒットさせたワーナー・ブラザーズ・レコードへと移籍した当初あたり、1950年代末から60年代初頭にかけてのシングル盤の時代ということになるのだけれど。

実はそのあと、アルバム中心になってからの時期にもいい作品をけっこう残していて。そのうちのひとつが、この『ルーツ』という盤だ。プロデュースはレニー・ワロンカー。アレンジャーとしてロン・エリオット、ペリー・ボトキン・ジュニア、ニック・デカロらが関わって。ソングライター・クレジットにはランディ・ニューマンの名前も。エンジニアはリー・ハーシュバーグ。まさにバーバンク・サウンドの粋。ヴァン・ダイクの『ソング・サイクル』やハーパース・ビザールの『ザ・シークレット・ライフ・オヴ…』とかと共鳴するサウンド/コンセプトが展開しているのだった。

ドンとフィルのエヴァリー兄弟が子供時代、ショー・ビズ界へのデビューのきっかけとなったのは両親がやっていた人気ラジオ番組だったのだけれど。そのときの懐かしい録音なども交えつつ、マール・ハガード、ジョージ・ジョーンズ、グレン・キャンベルら当時ばりばりに活躍していたカントリー・シーンの人気アーティストたちのレパートリーをカヴァーしたり、文字通り自分たちの重要なルーツのひとつであるジミー・ロジャースの代表曲へと立ち返ったり、ランディ・ニューマンやロン・エリオットの楽曲を取り上げたり、様々な角度から“過去”と“現在”を交錯させつつ、新時代のポップ・ミュージックのフォーマットを作り上げようとした。

1968年暮れにリリースされて、結局チャートインせずじまい。あんまり売れたアルバムではないけれど、でも、その存在意義は大きい。そんな隠れた名盤『ルーツ』へと至る道のりをまとめたのが今日紹介する3枚組『ダウン・イン・ザ・ボトム:ザ・カントリー・ロック・セッションズ1966〜1968』。最近いいアンソロジーを次々とリリースして、本ブログでもちょくちょく取り上げているチェリー・レッド・レコードが編纂したものだ。

グレン・キャンベル、ラリー・ネクテル、レイ・ポールマン、ハル・ブレインらレッキング・クルーの面々をバックに従えてロックンロールや当時のポップ・ヒットをカヴァーしまくった1967年2月リリースの『ザ・ヒット・サウンド・オヴ・ジ・エヴァリー・ブラザーズ』がディスク1。1967年7月、ボー・ブラメルズ、エレクトリック・プルーンズ、ジミ・ヘンドリックスら新興アーティストたちのアルバム群とともに世に出た『ジ・エヴァリー・ブラザーズ・シング』(ワーナー時代最後のシングル・ヒット「ボウリング・グリーン」を中心とする新曲群と「青い影(The Whiter Shade Of Pale)」とか「マーシー・マーシー・マーシー」とか興味深いカヴァーが混在)がディスク2。で、ディスク3が1968年12月リリースの『ルーツ』。

それぞれのディスクに、オリジナル・アルバム関連の別ミックスや聞き逃せない未発表音源群がたっぷりボーナス収録されている。ジャック・ニッチのプロデュースのもとカヴァーしたバッファロー・スプリングフィールドの「ミスター・ソウル」とか、ドリー・パートンの「イン・ザ・グッド・オールド・デイズ」とか、長年未発表のままだった貴重な音源を一気にまとめあげた感じ。

この3枚組からは、まだまだ駆け出しだった若き日のレニー・ワロンカー、ヴァン・ダイク・パークス、ロン・エリオットらが、与えられたチャンスを活かそうと一所懸命自分たちの個性を主張している感じも伝わってきて。フレッシュな気分になる。1960年代バーバンク・サウンド・ファンならば必携です。

まあ、考えてみりゃ、カントリー・ロックの元祖のひとりとして先述したグラム・パーソンズもエヴァリーズのカヴァーをやったり、クリス・ヒルマンとともに彼らのハーモニーを再現しようとしていたり。ビートルズも、ディランも、少なからぬ影響をエヴァリーズから受けているわけだし。

なんだよ、やっぱりアメリカン・カントリー・ロックの元祖はこの人たちで決まり?

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© 2020 Kenta Hagiwara