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Disc Review

Collected: The Best of John Howard / John Howard (Kool Kat Musik/John Howard)

コレクテッド:ザ・ベスト・オヴ・ジョン・ハワード/ジョン・ハワード

英国のシンガー・ソングライター、ジョン・ハワード。この人が1975年に残したファースト・アルバム『キッド・イン・ア・ビッグ・ワールド』(Amazon / Tower)がRPMから突然再発リリースされたときは驚いた。2003年のことだ。ぼくはその存在すら、まるっきり、名前も声も、何ひとつ知らなかったのだけれど。聞いてみたら、これがものすごくよくて。びっくり。まだまだ世の中には自分の知らないところに素敵な音楽がいっぱいあるんだなぁ…と、改めて思い知ったものです。

再発盤を聞きながらあれこれ情報を集めてみたら、1953年、英国ランカシャー生まれで。活動開始は1960年代後半。いろいろなバンドを渡り歩きながらキャリアを積んで。やがて1970年代になったころ、フォーク・クラブにソロで出演していたハワードを、ぼくも大好きな、あのハリケーン・スミスのマネージメントを手がけていたステュアート・リードがたまたま目撃。その才能に惚れ込んで英CBSレコードとの契約を取り付け、念願のファースト・アルバム制作がスタートした、と。

で、1974年にデビュー・シングル「グッドバイ・スージー」が出て。翌年、それを含むアルバム『キッド・イン・ア・ビッグ・ワールド』が出た。トニー・ミーハンとポール・フィリップスがプロデュース。ロッド・アージェント、ボブ・ヘンリットらもゲスト参加。全曲、ジョン・ハワードの自作曲なのだけれど、どれも繊細かつちょっぴりノスタルジックなコード進行をともなったいい曲ばっかりで。

エルトン・ジョン、ポール・マッカートニー、エミット・ローズ、ギルバート・オサリヴァン、コリン・ブランストーン、ティム・ムーア、レオ・セイヤー、初期のデヴィッド・ボウイあたりを好きな人だったら絶対に好きになるはず。なもんで、はい、2003年、超遅ればせながら再発盤を聞いてぼくも一発でハマりました。

ただ、調べてみると、オリジナル・リリース当時、「グッドバイ・スージー」がなぜかBBCから“憂鬱すぎる”と酷評されてオンエアしてもらえずじまい。どんな耳してるんだ、BBC。さらにアルバムから次にカットされたシングル曲「ファミリー・マン」も“反女性的だ”としてオンエア拒否。当時のスタッフによれば、ハワードはゲイだったため、まだまだジェンダーに関する根拠なき誤解が強かったあの時代、あえなく黙殺されてしまったのではないか、とのこと。いずれにせよセールスは惨敗。すでにハワードはセカンド・アルバムの制作にとりかかろうとしていたのに、その計画はデモ・レコーディング段階でストップしてしまった。

持ち前の淡々とメロウなシンガー・ソングライター路線に疑念を抱いたCBSはユーロ・ディスコ系のヒット・プロデューサー、ビドゥと組ませて次なるアルバムの制作にとりかかったけれど、そのセッションからはシングル「アイ・ガット・マイ・レディ」が世に出ただけでアルバム本体はまたもお蔵入り。

以降、レコード会社を転々としながら、若き日のトレヴァー・ホーンのプロデュースで何枚かシングルを出したり、まだカルチャー・クラブのプロデュースで大当たりをとる前のスティーヴ・レヴィンと組んでみたり…。いろいろトライしながらもセールス的な成功をつかむことはできず、やがて1985年、パフォーマーとしての活動に見切りをつけてレコード会社のA&Rへと転身。第二の音楽人生をスタートさせた。この期間、1990年代に1枚アルバムを作ったりしたものの、これも未発表のままに終わった。

けど、前述した通り、2003年の再発が話題に。どうも2001年に松井巧さんが手がけた『失われたレコードを求めて〜英国盤ジャケット・アートの世界』の出版がきっかけになった再発劇だったらしい。素晴らしい。それを受けてジョン・ハワードは再び自らパフォーマーとしての活動を本格的に再開。未発表に終わっていた音源や往年のデモを発掘リリースしたり、ソロで、あるいは様々なユニットを組んで新作アルバムをリリースしたり…。

長らく活動を休止していた反動からか、復活後はやたら頻繁に新作が出るものだから、とても全部を追いきれておらず、正確なところはよくわからないのだけれど。もう15作くらい? 20作近く? そのくらいたくさんのアルバムが出ている。で、それらたくさんの新旧アルバム群からのベスト・セレクションとして編まれたのが今朝とりあげた2枚組CD『コレクテッド:ザ・ベスト・オヴ・ジョン・ハワード』なのでした。

とりあえずデビュー・シングルの「グッドバイ・スージー」からスタートするけれど、特にクロノロジカルに編まれているわけでもなく。2020年のシングル「イン・ザ・スティルビート・オヴ・ア・サイレント・デイ」あたりまで、いろいろな時代の音源があっちゃこっちゃ交錯する。にもかかわらず、まったく違和感はなし。

まあ、確かに1978年にトレヴァー・ホーンがプロデュースしたシングル曲「アイ・キャン・ブリーズ・アゲイン」のように、当時流行していたディスコ・ビートに乗せてファルセットで歌った、もう、まさにレオ・セイヤーの「恋の魔法使い(You Make Me Feel Like Dancing)」じゃねーか…みたいな世界観だったりして、頬が緩んだりもする(笑)。そういう、ジョン・ハワードなりに時代に思いきりすり寄った感じの曲も含めて、全然違和感なし。ポップでキュートな美メロと、キーボード中心に紡ぎ上げられたメロウなMORサウンドの雨アラレ。そこにちょっぴりひねくれ気味な内省的な歌詞が乗っかって。

素敵なコレクションです。ライヴ音源やデモ音源、未発表ものもあり。復活前も復活後も含めて、ジョン・ハワードの色褪せぬポップ感覚をざっくりと再評価するには絶好か、と。初フィジカル化音源も含まれているのだけれど、5月に出たフィジカルCDは今のところ海外のAmazonとか本人のWebショップとかでしか買えなくて。日本のオンラインストアとかでは見かけない。めんどくさい。けど、7月9日からストリーミングやダウンロード販売も始まったので、まずは気楽に、ぜひ。

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