Disc Review

A Bigger Bang: Live on Copacabana Beach / The Rolling Stones (Eagle Rock)

ア・ビガー・バン:ライヴ・オン・コパカバーナ・ビーチ/ザ・ローリング・ストーンズ

なーんかまた緊急事態だとか。先手先手とか言いながらの後手後手。五輪とやらのせいでむちゃくちゃだなー。またしばらく、ライヴとかDJイベントとか、みんなで同じ“場の空気”を共有しながら同じ音楽を楽しむことができる日が遠退いてしまった感じ。寂しい。むなしい。

偉い人たちがぐだぐだすぎてどうにもならないとなると、仕方ない、自分たちで気をつけながらまだまだまだふんばっていかないと。てことで、明日は午後イチの早稲田オープンカレッジの授業も、夜のCRT&レココレ・イベントも、どっちも相変わらずオンライン配信です。特にCRTのほうは、今まさにふんばりどき。配信だと権利関係がややこしくて気軽に曲もかけられないし、なかなかハードルは高いのだけれど。

しかし! 明晩はそんなハードルをクリアできる強力な準レギュラーが助っ人としてやってきてくれます。一昨日、新作アルバムを紹介したばかりのスーパー・ギター・デュオ“山弦”のひとり。ちっちゃいほうの人、佐橋佳幸! なんでも頼めばなんでも弾いてくれる心強い“ナガシのサハシ”を迎え、いつものMC3人とともに“1982年”という年を語り尽くす〈新宿シティ・ポップ井戸端会議〉シリーズの最新回です。

ほんとはみんなでお酒飲みながらどっかんどっかんいきたいのだけれど、そんな日を夢見ながら、配信を通じてヴァーチャルに盛り上がりましょう。今回もまた独自のプレイリストなども用意してお届け。こちらを参照のうえ、こぞってご参加ください。アンコール配信もありますが、リアルタイム視聴ならばチャットでいろいろメッセージを送っていただくこともできます。

しかし、この1982年という年。改めて振り返ると、なんか、いろいろな転換点的な1年だったなと思う。この年に出た洋楽の大ヒット・アルバムといえば、たとえばドナルド・フェイゲン『ナイトフライ』、ブルース・スプリングスティーン『ネブラスカ』、ポール・マッカートニー『タッグ・オブ・ウォー』、邦楽だと『ナイアガラ・トライアングルvol.2』、山下達郎『FOY YOU』、佐野元春『SOMEDAY』など。

1970年代のもろもろが収束したり発展したりしながら新たなディケイドに入った、その流れがかなり具体化した年だった感じ。CRTでもあれこれ思い出しながら語り倒したいと考えていますが。

そういえば、個人的にはこの年、ローリング・ストーンズの『スティル・ライフ』ってライヴ盤をよく聞いたっけ。1960年代、デビュー時に設定された不良っぽく、どこか暗いイメージを1970年代もまだ引きずったまま活動してきた感じのストーンズが、1980年代の到来とともに大きくイメチェン。野外で大規模かつエンタテインメント性に富んだコンサートを行ない、膨大な興業収益を上げる世界最強のポップ・アクトへと転身…みたいな。そうした変貌の様子を日本のファンにも思い知らせてくれたドキュメンタリー映画が『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』だったわけだけれど。その映画が撮影されたのと同じ、1981年の北米ツアーの様子を記録したライヴ盤が『スティル・ライフ』だった。

開幕のテーマがデューク・エリントンの「A列車で行こう(Take The A Train)」。エンディングはジミ・ヘンドリックスの独奏による「星条旗(Star Spangled Banner)」。開催地への気配りというよりも、ストーンズ自ら、もはや自分たちはイギリスという一国を代表するスーパースターではないのだという事実を世界に向けて高らかに宣言した、そんな気構えの表われだったのかも。この時期以降、ストーンズをアメリカのロック・バンドだと勘違いする音楽ファンも増え始めた気がする。

ちなみに、このライヴ盤からのシングル・カット曲はスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのカヴァー「ゴーイング・トゥ・ア・ゴー・ゴー」で。その7インチ・アナログ・シングルのB面に同じツアーで録音された「ビースト・オヴ・バーデン」のかっこいいライヴ・ヴァージョンが入っていた。なのに、これ、アナログLPには未収録。ところが、それをA面収録曲とB面収録曲の間に乱暴にぶちこんだCDが翌年くらいにどさくさっぽく出たり(笑)。

そう。1982年はCD市販元年でもあった。ビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』がCD第1号として生産されたのもこの年。ぼくにとって『スティル・ライフ』は、そういう混乱の“変わり目”を象徴する1枚でもあったのでした。

と、まあ、明晩のCRTでテーマする1982年にまつわる思い出をここまでつらつら、長々、書き散らかしてしまいました。すんません。今朝はそんなストーンズの新作ライヴ、紹介します。『ア・ビガー・バン:ライヴ・オン・コパカバーナ・ビーチ』。2006年2月18日、世界最大級のフリー・コンサートと言われる、リオデジャネイロでの伝説的パフォーマンスを記録したものだ。観客150万人。なんだ、それ(笑)。

前年にリリースしたアルバム『ア・ビガー・バン』を受けたワールドツアーの一環。2006年に日本にもやってきた、あのツアー。2007年にはこのツアーで収録された映像を集めた4枚組DVDボックス『ザ・ビッゲスト・バン』もリリースされて。そこには日本公演の模様もちらっと収められていたので、ゲットなさった方も少なくないと思う。で、そこにこの2006年2月18日のリオデジャネイロ公演から16曲のパフォーマンスを記録したディスクも入っていて。今回の『ア・ビガー・バン:ライヴ・オン・コパカバーナ・ビーチ』、基本的にはそれの出し直しみたいな感じなのだけれど。

でも、そのとき未収録だった「ダイスをころがせ(Tumbling Dice)」「オー・ノー・ノット・ユー・アゲイン」「虚しい気持ち(This Place Is Empty)」「悪魔を憐れむ歌(Sympathy for the Devil)」という新旧4曲も今回は収録。これが目玉か。

基本形はこのリオデジャネイロ公演の映像と音、両方をまるっと抱き合わせた1DVD+2CD、あるいは1ブルーレイ+2CD版。CDはいらないよという人のためには映像だけのパッケージもある。いや、むしろそれだけじゃ物足りないという方のためには、さらに同ツアーから2005年11月のソルトレイクシティ公演の映像を収めたDVD(あるいはブルーレイ)と、リオデジャネイロ・ドキュメンタリー映像のフル・ヴァージョンを収めたDVDを加えた豪華デラックス・エディションも。

逆に音だけでいいという人のためにはサブスクでのストリーミングやダウンロード販売もあり。ハイレゾもあります。ぼくはまたもやハイレゾでゲット!

というわけで、前述した話を蒸し返すと、40年近く前、1982年に『スティル・ライフ』で別のフェイズへと踏み出したことを高らかに宣言したストーンズの、その後のある種ピークを記録したのが、本作『ア・ビガー・バン:ライヴ・オン・コパカバーナ・ビーチ』なのかなとも思う。確かに圧倒されます。雑なところも含めて、ほんと強大。でっかいです。1960年代の彼らとはもう別バンドっぽいところは、まあ、ちょっと複雑な気分ではあるけれど…。

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