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Disc Review

Chapter Two (50th Anniversary Digital Expanded) + Quiet Fire (50th Anniversary Digital Expanded) / Roberta Flack (Rhino/Atlantic)

第2章+クワイエット・ファイア(50周年デジタル・エクスパンデッド)/ロバータ・フラック

今年の春、こちらで紹介したロバータ・フラック、1969年のデビュー・アルバム『ファースト・テイク』に続く“50周年(前後)記念”シリーズ。またまたデジタル・オンリーの形でリリースされた。サブスクのストリーミングおよびハイレゾのダウンロード販売。しかも、2作まとめて!

最近、米ライノ・レコードはこのパターンの再発をよくやる。本ブログで取り上げてきたものとしては、グレイトフル・デッドのこれとかこれとか。あるいは、こちらのページでつい先日紹介したジョニ・ミッチェルのデジタルEP『ブルー50(デモズ&アウトテイクス)』とか。油断ならない。

今回のロバータ・フラックも、今のところデジタル・オンリー。1970年リリースのセカンド・アルバム『第2章(Chapter Two)』と1971年の『クワイエット・ファイア』。どちらも最新リマスタリングがほどこされ、ボーナス・トラックも追加。特に『クワイエット・ファイア』のほうは7曲も増えている。まじ、フィジカルがほしいところだけれど、まあ、ハイレゾでゲットできるから、まあ、いいかと思って、とりあえずそれ買いました。

ロバータ・フラックのファースト・アルバムがリリースされたのは1969年。でも、以前も書いたことの繰り返しになるけれど、当初はあまり売れず。1971年になってからクリント・イーストウッドの初監督映画『恐怖のメロディ(Play Misty for Me)』にロバータの「愛は面影の中に(The First Time Ever I Saw Your Face)」を起用したのをきっかけに少しずつ注目が集まり、やがて1972年の全米年間チャートで1位を獲得する特大ヒットに。とともにその曲を含むアルバム『ファースト・テイク』もベストセラーを記録した、と。

でも、この段階で、実は今回デジタル再発された2作、『第2章』も『クワイエット・ファイア』もすでにリリースずみ。で、ファースト同様、特に世間の大きな注目を集めることなく終わっていて。ぼくも当然、1972年以降、「愛は面影の中に」のヒットでロバータ・フラックの存在を知ってから遡って接した作品群だ。で、後追いで接して。いや、すごいな、と。感動したものだ。

といっても、聞いていきなりガツーンときたわけではなく。ファースト・アルバム同様、その淡々とした手触りに、最初のうちはなんとなく物足りなさすら覚えたものだけれど。ひたすら静かな、でも確かな意志に貫かれた彼女の歌声が徐々に心にしみこんできて。すっかりやられた。離れがたくなった。中にはロバータのこと、あんまりソウルフルじゃないとか評する人もいるようだけれど、それは表層的に過ぎると思う。そういう人は特に初期の歌声をもっと聞き込むべき。内なるソウル、みたいな。しみますから。まじ。

『第2章』のほうは、ファーストから引き続きジョエル・ドーンがプロデュース。ダニー・ハザウェイ、キング・カーティス、エリック・ゲイル、チャック・レイニー、ヒューバート・ロウズ、エミール・デオダートら腕ききがバックアップ。

のちにロバータの代表作となる「愛のためいき(Feel Like A Makin' Love)」の作者でもあるジーン・マクダニエルズの「僧侶リー(Reverend Lee)」でスタートして、以降、アル・ウィルソンやニーナ・シモンのヴァージョンがおなじみのジミー・ウェッブ作品「愛を信じて(Do What You Gotta Do)」、ボブ・ディランの「女の如く(Just Like a Woman)」、ジルベール・ベコーの…というか、エヴァリー・ブラザーズのというか、ベティ・エヴェレット&ジェリー・バトラーのというか、ご存じ「レット・イット・ビー・ミー」。ここまでがオリジナルLPのA面。

B面は、ロバータのデュエット・パートナーとしてもおなじみのダニー・ハザウェイも作者のひとりに名を連ねるインプレッションズの「ゴーン・アウェイ」でスタート。“別れの時まで”という邦題でも知られるバフィ・セント・メリーの「まだ行かないで(Until It's Time for You to Go)」、こちらも“見果てぬ夢”という邦題のほうが断然おなじみのミュージカル『ラマンチャの男(Man of La Mancha)』挿入歌「叶わぬ夢(The Impossible Dream)」、そしてチャド・ミッチェル・トリオの「いつもの仕事(Business Goes on as Usual)」。と、ここまでがB面。

そのあとボーナス・トラックとして、ジョニ・ミッチェルが映画『真夜中のカーボーイ』のために書いたものの使用されずに終わった「ミッドナイト・カウボーイ」が入っている。この曲、1972年にロバータがプロデュースしたドナル・リースのアルバムでカヴァーさせたりしていたけれど。そのロバータ自らのヴァージョンだ。

『クワイエット・ファイア』のほうもジョエル・ドーンがプロデュース。グラディ・テイト、バーナード・パーディ、チャック・レイニー、ロン・カーター、リチャード・ティー、ヒュー・マクラッケン、シシー・ヒューストン、レス・マッキャンらがバックアップ。

オリジナルLPのA面は、まずロバータ自身も作者クレジットに名を連ねた「ゴー・アップ・モーゼズ」から。これ、今回のボーナス・トラックとしても収録されたマーヴィン・ゲイ「ホワッツ・ゴーイング・オン」の斬新なカヴァー・ヴァージョンがちょっと前にロバータのニュー・シングルとして公開されたときに初めてわかったことなのだけれど、この「ホワッツ・ゴーイング・オン」のオケをそのまま使って、新たな歌詞、新たなメロディを乗せた曲だった。あまりにもリアレンジが過激だったことから「ホワッツ・ゴーイング・オン」として収録できなかったのかも…。よくわからないけれど、この「ゴー・アップ・モーゼズ」と「ホワッツ・ゴーイング・オン」の関係を知ることができたのが、今回のデジタル・リリースでいちばんの発見だったかも。

で、そのあと、サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋(Bridge over Troubled Water)」、ジーン・マクダニエルズ作の「サンデイ・アンド・シスター・ジョーンズ」、レヴェレイションが歌っていたジミー・ウェッブ作品「シー・ユー・ゼン」までがA面。

B面はおなじみのジェリー・ゴフィン&キャロル・キング作品「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」、ビージーズの「トゥ・ラヴ・サムバディ」、オリジナルのリトル・ウィリー・ジョン以降多くのシンガーがカヴァーしてきた名バラード「レット・ゼム・トーク」、そしてアレサ・フランクリンが歌ったヴァン・マッコイ作品「スウィート・ビター・ラヴ」という4曲。

で、このあとに前述した「ゴー・アップ・モーゼズ」の原型となった「ホワッツ・ゴーイング・オン」をはじめ、マーティン・ルーサー・キングが“私には夢がある(I Have a Dream)”の演説で引用したことでも知られるスピリチュアル「フリー・アット・ラスト」、これはぼくの不勉強ゆえ出自がよくわからない「チェイシン・ザ・サンシャイン」、ビートルズの「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」、ファイヴ・ステアステップスの「ウー・チャイルド」、エディ・フィッシャーやシャーリー・バッシーでおなじみ「ウィズ・ジーズ・ハンズ」、そしてボニー・ブラムレット&レオン・ラッセル作の名曲「スーパースター」の15分におよぶジャムなど、7曲のボーナス・トラックが並ぶ。

どちらのアルバムにも特大ブレイク以前のロバータ・フラックの、まだ思いきりみずみずしい才気が充満していて。ジャズ、ゴスペル、ソウル、ロック、ポップ、カントリー、フォーク、ミュージカル、シャンソンなど、多彩な音楽の境界をイマジネイティヴに溶け合わせてしまう柔軟かつ知的な魅力が存分に味わえる。ジョニ・ミッチェルみたいに、そのうちまとめてフィジカル化とか、そういうの希望します。

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