Disc Review

Tokyo Munch / Yamagen (Universal Music Japan)

トーキョー・マンチ/山弦

7月7日。七夕という絶好のタイミングで、素敵な再会。

山弦。オグちゃんとサハシ。小倉博和と佐橋佳幸。日本を代表する二人のスーパー・ギタリストが、なんと17年ぶりにギター・デュオ“山弦”としてのコンビネーションを復活させ、新作アルバムをリリースしてくれた。織姫と彦星だって雨さえ降らなきゃ毎年再会するんだから、17年とは、こりゃまたずいぶんと久しぶり…(笑)。

山弦は過去、全編オリジナル曲によるアルバム(1998年の『JOY RIDE』、2000年の『High Life』、2004年の『Island Made』)と、全曲カヴァーで構成したアルバム(1999年の『INDIGO MUNCH』と2002年の『HAWAIIAN MUNCH』)とを交互に発表してきていて。長い長いブランクがあったとはいえ、順序で言うと今回は後者、いわゆる“マンチ・シリーズ”、カヴァー・アルバムの順番だ。

ということで、完成したのが本作『Tokyo Munch』。ひとつ前のカヴァー・アルバム、2002年の『HAWAIIAN MUNCH』に続いて、今回も光栄なことにライナーノーツを書かせてもらったので、制作の経緯や収録曲に関する詳細についてはそちらをぜひ参照していただきたいのだけれど。

久々のアルバム制作の直接のきっかけとなったピート・シーガー作のモダン・フォーク・ナンバー「花はどこへ行った(Where Have All The Flowers Gone?)」をラストに収めて、その他、キース・ジャレットの「カントリー」、サイモン&ガーファンクルの「ミセス・ロビンソン」、フランク・シナトラなどの名唱で知られる「ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームズ」、フォー・ラッズやルイ・アームストロング、江利チエミ、ムーンライダーズ、大滝詠一など幅広い顔ぶれが取り上げてきた「イスタンブール・マンボ」、ジョン・リンド&ジョン・ベティス作、マドンナの「クレイジー・フォー・ユー」などをカヴァーしまくり。アナーキーな振れ幅の選曲センスがなんとも山弦らしい。

これまで、はっぴいえんどの「夏なんです」、シュガーベイブの「蜃気楼の街」を取り上げてきた恒例の日本のポップス・カヴァーとしては、オグちゃんとサハシがメンバーとして参加し、山弦結成のきっかけともなった桑田佳祐のプロジェクト“スーパー・チンパンジー”の「クリといつまでも」をセレクト。この、ある種のセルフ・カヴァーも魅力的だ。

セルフ・カヴァーといえば、今回、小倉博和の「木と音」と佐橋佳幸の「リトル・クライムズ」というソロ作品を山弦として演奏しているのも新味。で、新味といえば、これまで山弦のアルバムでは演奏されることがなかったリゾネイター・ギターとか、ハープ・ウクレレとか、マンドリンとかの音が今回は盛り込まれているところもファンには思いきりうれしい新味だ。奏法的にも楽曲解釈的にも、二人はますます進化/深化していて。いろいろと聞き逃せないポイント多し。楽しい。

新型コロナウイルス禍にあって、すべてのレコーディングをリモート環境でデータをやりとりしながら行なったとのこと。でも、ライナーにも書いたことの繰り返しになるのだけれど、実際には一度も顔を合わせていない、リモートでの音のやりとりだったにもかかわらず、しかしまったくそうとは思えない、実に息の合った、ひたすらナチュラルで、スリリングな、山弦ならではの豊かなアンサンブルが生まれていることに、まじ、驚かされる。

うれしさもひとしお。すごいギタリスト二人だな、と。改めて思い知るばかりです。

ぼくのラジオ番組の宣伝になりますが。山弦の二人は現在、2週にわたって、ぼくが進行役をつとめるJFN系『Music Stories~ライブハウスからのそれぞれの物語~』に出演中。すでに放送ずみの第1週分はまだradikoで聞けると思います。トーク部分のみであれば番組のページからAuDeeでお楽しみいただけます。こちらは期限なしかな。次回も山弦が登場しますので、そちらもぜひチェックを。二人とも話、面白すぎ(笑)。地方によって放送時間などが違うので、お近くの放送局のWebページなどで確認してみてください。

あと、佐橋佳幸くんのほうは今週の土曜日、7月10日のオンラインCRT『〈新宿シティポップ井戸端会議 #03〉1982年を弾いて語って考える〜ナガシのサハシが帰ってきた!』にもギター抱えて登場します。こっちもそうとう盛り上がる予感。終演時間オーバー、間違いなしか? お楽しみに!

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