Disc Review

The World Is a Ghetto: 50th Anniversary Collector’s Edition (The Complete Sessions) / War (Rhino/Avenue)

世界はゲットーだ:50周年記念コレクターズ・エディション/ウォー

去年秋、ブラック・フライデーのレコード・ストア・デイに合わせて米ライノ・レコードがアナログLPで再発したウォーの出世作『世界はゲットーだ(The World Is a Ghetto)』の拡張エディション。

オリジナル・リリースは1972年11月だけれど、「シスコ・キッド」「世界はゲットーだ」という2枚のシングル・ヒットの後押しを受けてアルバムが売れまくったのは1973年だったこともあり、1年遅れの去年、発売50周年を祝して最新リマスタリングをほどこした重量盤5枚組LPボックス・セットが限定リリースされたわけですが。

レコード・ストア・デイものの常で、入手が大変なうえ値段も…。二の足を踏んでいたファンも多いことでしょう。ぼくもそのひとり。けど、うれしいことにようやくCDエディション、出ました。デジタル配信もスタート。ありがたい。

LP5枚組の内容をそのままCD4枚へと移し換えていて。CD1がLP1と同じく、オリジナル・アルバムの最新リマスター。CD2がLP2と同じ、アルバム未収録だったジャム音源6トラックを収めたボーナス盤。で、CD3と4がLPで言うと3枚目、4枚目、5枚目にそれぞれ片面1曲ずつ入っていたメイキング音源集。アルバム収録曲がそれぞれどのような形で完成へと至ったかを克明にドキュメントした実に興味深いものだ。オリジナルLPのプロデュースを手がけたジェリー・ゴールドスミスとウォーの創設メンバーのひとりでもあるロニー・ジョーダンが再発に関しても指揮を執ったみたい。

ウォーというバンドはいろいろ分派しつつではあるものの、現在まで息の長い活動を続けているわけだけれど。やはり最高にかっこよかったのは1970年代前半で。ぼくも高校生時代、「シスコ・キッド」を聞いて一発でハマった。なんだかソリッドでかっこよくて、でも、ものすごくワルそうで(笑)。で、本作を手に入れてから前作、前々作、つまり1971年、創始者のエリック・バードンのもとから独立してリリースした単独デビュー盤『ウォー』、同じく1971年に初のミリオン・セラーを記録した『オール・デイ・ミュージック』にまでさかのぼって。

で、1972年の本作を経て、ぐっとジャズ/ファンク寄りになった1973年の『デリヴァー・ザ・ワード』、同じく1973年に出た『狂熱のライブ(War Live)』、より多彩なリズムを意識的に取り入れてポップな展開を見せた1975年の大ヒット盤『仲間よ目をさませ!(Why Can't We Be Friends?)』と聞き続け…。

重さも、甘さも、鋭さも、切なさも、熱さも、クールさも、全部あるその雄大な持ち味にノックアウトされた。ブラック、ラティーノ入り乱れるメンバー編成でジャンルの壁も軽々と超えてみせた。ラテンとファンクが絶妙に交錯する彼らのサウンドは、まじ、独自だった。重くファンキーなだけでない、リー・オスカーのハーモニカをフィーチャーしたブリージーな味もあったりして。本作の長尺インスト「シティ・カントリー・シティ」とか聞きながら、いろいろな音楽ジャンルの交錯具合に胸ときめかせたものだ。

思えば、イーストLAという地域の個性とか、ロー・ライダーという文化とか、そういうのを学ぶきっかけをもたらしてくれたのもこの人たちだったような…。

と、そんなウォーの代表作の拡張エディション。長尺曲ばかりではありますが、これから長く続きそうな酷暑を乗り切るにあたって、暑いときには熱いお茶的なアプローチでウォー最盛期のアツアツサウンドをどっぷり浴びてみるのも悪くないかも。

噂によると、実はこれこそぼくがいちばん聞いたウォーのアルバムじゃないかと思われる1976年に出たベスト盤『グレイテスト・ヒッツ』の再発も予定されているのだとか。今年に入って45回転12インチLP2枚組で再発されていたけれど、今回は普通に1枚もののCDとLPでの再発らしく。音質がよくなっているのだとしたら、ちょっとうれしいかも。

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