Disc Review

Come Away with Me: 20th Anniversary Deluxe Edition / Norah Jones (Blue Note)

カム・アウェイ・ウィズ・ミー:20周年スーパー・デラックス・エディション/ノラ・ジョーンズ

すごいアルバムだったな、と思う。改めて。ノラ・ジョーンズのデビュー作『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』。

2002年に名門ブルーノート・レコードからリリースされ、本国アメリカではもちろん、世界20カ国でチャート1位に輝いた名盤だ。かのローリング・ストーン紙も“史上最高のデビュー作”と絶賛。現在までにアメリカだけで1200万枚、全世界で3000万枚を売り上げているという。

そのオリジナル・リリースから20周年という節目を祝うスーパー・デラックス・エディションが去る4月29日、海外で出ました。日本盤は5月27日発売だけど、すでにストリーミングは国内でもスタート。存分に楽しんでいるファンも多いことでしょう。発売日、4月29日には YouTube と Facebook を使ってスペシャルな配信ライヴもあった。これがまた素晴らしかった。

『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』というアルバムの収録曲の大半は、名匠アリフ・マーディンのプロデュースの下、マンハッタンのソーホー地区にあるソーサラー・サウンド・スタジオで録音されているのだけれど。それ以前、実はクレイグ・ストリートをプロデューサーに、ニューヨーク郊外のウッドストックにあるアレアー・スタジオで初期セッションが行なわれていた。ここでレコーディングされた音源がブルーノートの思惑にそぐわないということで3曲以外がお蔵入り。アリフ・マーディンが後を引き継ぐ形でアルバムを完成に導いた、と。

で、ノラは今回、この20周年エディションの発売にあたって、改めて原点とも言うべきアレアー・スタジオへ。彼女自身のピアノに加えて、ビル・フリゼール(ギター)、トニー・シェール(ベース)、ブライアン・ブレイド(ドラム)という20年前のセッションにも参加していたメンバーを従えて、たっぷり80分近いライヴを聞かせてくれたのでした。YouTube に載っているので、未見の方はぜひ。

セットリストも興味深くて。なんと『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』の全収録曲を、ラストの「ニアネス・オブ・ユー」からオープニングの「ドント・ノウ・ホワイ」に向かって逆順で演奏。「シュート・ザ・ムーン」には盟友ジェシ・ハリスもアコースティック・ギターで参加した。途中、個所個所にオリジナル・アルバムには収録されなかった未発表曲(「ア・リトル・アット・ア・タイム」「フラジャイル」「ホワット・ウッド・アイ・ドゥ」)も織り込まれて。聞き応えたっぷり。けっしていい思い出ばかりではないであろう“始まりの地”にあえて立ち返り、時をさかのぼるように自らの原点を見つめ直すノラ姉さん…みたいな。

で、20周年スーパー・デラックス・エディションの話に戻ると。フォーマットはCD3枚組、あるいはLP4枚組。CDのほうで説明すると。ディスク1はオリジナルの『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』収録の全14曲をテッド・ジェンセンが最新リマスタリングした盤。

ディスク2は“デモ&ファースト・セッションズ”。ブルーノートとの契約の決め手になったというスタンダード・カヴァー中心のデモ音源3曲と、契約成立後、2000年10月に行なわれたお試しセッションからの14曲を詰め込んだ1枚。この2000年セッションから6曲抜粋した『ファースト・セッション』なるCDが2001年にノラのコンサートやインターネットで限定配布されたり、2017年に復刻リリースされたりしているけれど、その6曲もまるごと入っている。それ以外の8曲と先述したデモ3曲は完全未発表。いえい!

ディスク3は“アレアー・セッションズ”。前述したアレアー・スタジオでの初期セッションからの音源集全13曲だ。ボブ・ディランの「アイル・ビー・ユア・ベイビー・トゥナイト」のカヴァーのみシングルやCDボーナス・トラックとして既出。2012年のコンピ『カヴァーズ』に入っていたトム・ウェイツ作「ピクチャー・イン・ア・フレイム」も収められているけれど、ミックスが違うみたい。

自作曲も、音楽仲間の曲も、ハンク・ウィリアムスのカントリーも、ホーギー・カーマイケルのスタンダード曲も、すべてをシンガー・ソングライター的な視点から柔軟に融合し再構築してみせる得がたい歌姫。その初めの一歩をぼくたちもじっくり見つめ直そう。未発表テイクなどはいらないよという方には、最新リマスターがほどこされたオリジナル・アルバムのみの1CDエディションも出てます(Amazon / Tower)。1枚ものならばハイレゾ(e-onkyo)もあり。

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