Disc Review

Start It Over / Riley Downing (New West Records)

スタート・イット・オーヴァー/ライリー・ダウニング

1年ちょい前、本ブログでも紹介したサム・ドアーズとともに、ニューオーリンズを本拠とするクセ者バンド、ザ・デズロンズの一員として活躍するライリー・ダウニング。

初のソロ・アルバムが出ました。1年ほど先駆けてソロ作を出したサム・ドアーズのほうが、あえてデズロンズ周りではない人脈を取り込んでみせたのに対し、ダウニングさんのほうはわりとバンド周りの、慣れ親しんだ人脈にこだわりながらのソロ・レコーディングという感じ。

プロデューサー、およびほぼ全曲のソングライティング・パートナーとして、デズロンズでペダル・スティールやフィドルを担当するマルチ・インストゥルメンタリスト、ジョン・ジェイムズ・トゥアヴィルを起用。さらには、アラバマ・シェイクス、ハレイ・フォー・ザ・リフ・ラフ、ベンジャミン・ブッカーなどともにデズロンズのプロデュースも手がけているアンドリジャ・トキックも共同プロデューサーに迎えている。

じゃ、デズロンズとどう違うんだ、ということになるわけだけれど。こっちのソロ作のほうが断然レイドバックしているというか、シンプルというか、レイジーというか…。

もともとダウニングとトゥアヴィルの二人が、何か1枚7インチ・シングルを作ろう、ということでスタートさせたプロジェクトだったらしい。が、パンデミックの下、ミズーリ州在住のダウニングとノース・カロライナ州のトゥアヴィルがリモートで音のやりとりをしているうちに曲がどんどんできてしまい、それじゃ、ということでテネシー州のトキックも巻き込みながらアルバムへと発展したのだとか。そんな、各自のプライベートな環境での作業がいい意味でリラックしたムードを本作に提供しているのだろう。

やがてロックダウンが明けたところで、3人はナッシュヴィルのボム・シェルター・スタジオで合流。ロス・ストレイトジャケッツのジミー・レスター(ドラム)、ヨラのサポートも務めるメグ・コールマン(ドラム)、ラカンターズやデッド・ウェザーのメンバーでもあるジャック・ローレンス(ベース)、ヴィンス・ギルのタイム・ジャンパーズのデニス・クラウチ(ウッド・ベース)やジェフ・テイラー(キーボード)、ジェイソン・イズベル&ザ・400ユニットのデリー・デボルジャ(キーボード)といった名手を交えてアルバムを完成させた。

ダウニングの、ちょっとやばさをたたえたバリトン・ヴォイスは、時にトニー・ジョー・ホワイトのようでもあり、ジョニー・キャッシュのようでもあり、J.J.ケイルのようでもあり、ジョン・プラインのようでもあり、トム・ウェイツのようでもあり、レナード・コーエンのようでもあり。このアルバムを部屋でぼんやり流していたとき、一緒に聞いていた能地祐子が“なんか、細野さんみたい”とか言っていたっけ。うん。そう。まさに。そんな感じ。

いつのころからか、“歌うま”というと、なんだか高音ヴォーカルの人ばっかりになってきちゃった気がする。確かにそっちのほうがわかりやすいというか、派手には見えるけれど。でも、ぼくは昔から低めの声域のシンガーのほうに断然惹かれるもんで。この人とか、ある意味、ばっちり。

2曲目に入っている「ディープ・ブレス」って曲では、“なんかいつもうつむいて、どうでもいいことばっかり考えて、何もかもいやになっちゃってるけど、まあ、頭のネジを締め直し、深呼吸して、スーッ、ハーッ、そうすればイッツ・ゴナ・ビー・オールライト”みたいなことをルーズなグルーヴに乗せて低い声でぼそぼそ歌っていて。なんか、ごきげん。とにかく、そういうアルバムです(笑)。

ブルース、カントリー、スワンプ、R&B、ロックンロールなど、ルーツ・ミュージックの混在させ具合も面白い。3曲目の「コールマン・ローズ」とか、ちょっとオリエンタルなバック・リフとラウドなドラム・ビートの背後で、ジョニー・キャッシュ&テネシー・ツーっぽいエレクトリック・ギターのトゥワンギーな2ビート・ピッキングが聞こえていたり。なかなかに刺激的。続く「グッド・トゥ・シー・ヤ」の、マイナー・キーながらどこか楽観的なグルーヴもかっこいい。センチメンタルなカントリー・ワルツ系の「ルッキング・フォワード」にも同様の前向きなテイストが、けっしてこれ見よがしにではなく、そこはかとなく、やさぐれ気味に漂っていて。泣ける。

でもって、アルバム・タイトル・チューンの「スタート・イット・オーヴァー」。これがいい。どうやらダウニングさん、自身けっこうなシングル盤コレクターらしく、そのあたりの思いが託された曲。どこかとぼけた、でも、さりげなくソウルフルなミディアム・ビートに乗せて、“2、3枚のレコードがあればOK、街で会おう、踊り明かそう、あっという間にあの場所に戻れるぜ、ロックンロールが生き続けているあの場所に…”みたいなことを歌っていて。これまた泣けます。

明日、5月19日に国内流通盤も出るそうです(Amazon / Tower)。デズロンズは現在ほぼ活動停止状態らしいけれど、新作の噂もないわけじゃなく。今後の動きに期待しております。

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