Disc Review

Dreams Do Come True: When George Benson Meets Robert Farnon / George Benson (Rhino/Warner)

ドリームズ・ドゥ・カム・トゥルー:フィーチャリング・ザ・ロバート・ファーノン・オーケストラ/ジョージ・ベンソン

なーんと、ジョージ・ベンソンの発掘音源! といっても、ギタリストとしての1枚ではなく、どちらかというとヴォーカリストとしての1枚が出ました。

1989年に、クインシー・ジョーンズやアンドレ・プレヴィンなども敬愛する偉大な作曲家/編曲家/指揮者/トランペット奏者、ロバート・ファーノン率いるフル・オーケストラを従えてレコーディングしたヴォーカル・アルバムだ。

時期的に言うと、トミー・リピューマのプロデュースの下、ジャズ・スタンダードを歌ったり弾いたりしまくったアルバム『テンダリー』のころ。あちらはマッコイ・タイナー、ロン・カーター、ルイ・ヘイズらによるピアノ・トリオを基調に、マーティ・ペイチ編曲による管弦がほどよくサポートする感じの1枚だったけれど。その姉妹編とも言うべき本作のバッキングは思いきりオーケストラ・メイン寄り。

選曲的には『テンダリー』同様、ジャズ・スタンダードを中心に、ビートルズ・ナンバーとかポピュラー・ヒットなども交えつつ…というセレクションだ。ビートルズものは真っ向から「イエスタデイ」。さらにポール・モーリアの「恋はみずいろ(Love is Blue)」とかまで、なんだかやけに軽快なオーケストラ・アレンジで歌っていて。いやー、この人らしくめいっぱい芸能しているなー、いいなー、と(笑)。

レオン・ラッセル作の「マスカレード(This Masquerade)」のカヴァーをポップ・チャートで大ヒットさせて一躍スターダムを手にしたベンソンさんらしく、ここでもラッセル作の「ア・ソング・フォー・ユー」を取り上げているのもおいしい。レコーディングを手がけたのは名匠アル・シュミット。

が、録音はしたものの、当時はなぜかお蔵入り。ちょっと後でリリースしようと思っているうちに、レーベル移籍とかいろいろあって、このアルバムの存在そのものを忘れてしまっていたらしい。その音源が35年ぶりにアーカイヴから発見されて。盟友のピアニスト/編曲家/作曲家、ランディ・ウォルドマンとの共同プロデュースの下、新たなオーヴァーダビングとかコーラスとかを加えて現代に甦らせた、と。そういうことみたいです。

以前、2013年のアルバム『キング・コールを歌う(Inspiration: A Tribute to Nat King Cole)』のデラックス・エディションがデジタル・リリースされたとき、1977年の来日公演で受けた衝撃について書いたことがある。その一部だけ引用すると——

その来日公演でも、すでに大ヒット中だった「マスカレード」など歌ものも何曲か披露された。ご存じの通りベンソンは歌うときギターを弾くのをやめて、ギターを抱えたまま、しかし両手をギターから放して三波春夫っぽく大きく拡げて、気持ちよさそうに歌唱する。ギター・ソロとスキャットをユニゾらせたり、ハモったりするときはもちろんギターを弾きながら歌うのだけれど、がっつり歌うときは基本的にその三波春夫スタイル。その様子がなんだかものすごくエンターテイナー然としていて、感服したものだ。この人はジャズという音楽をけっして小難しいものとしてではなく、あくまでもポピュラー・カルチャーとして、芸能としてとらえながらパフォーマンスしているのだなという思いが伝わってきて、痛快だった。

そんな彼の“三波春夫でございます”的な側面がすごくいい形で出た発掘音源。もちろん絶品ギターもそこそこ聞かせてくれてます。

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