Disc Review

Gypsy Bells: Columbia Recordings 1967 / Lou Christie (ACE Records)

ジプシー・ベルズ:コロムビア・レコーディングズ1967/ルー・クリスティ

もともと地元、米ピッツバーグのレーベルからローカル・デビューした後、その音源がルーレット・レコードに買い上げられたのを皮切りに、コルピックス、MGM、Co & Ce、コロムビア、ブッダなど様々なレコード・レーベルをちょこちょこ渡り歩きつつ、「悲しきジプシー占い(The Gypsy Cried)」(1962年、全米24位)、「悲しき笑顔(Two Faces Have I)」(1963年、全米6位)、「恋のひらめき(Lightnin' Strikes)」(1965年、全米1位)、「雨のラプソディー(Rhapsody in the Rain)」(1966年、全米16位)など、特徴あるファルセットを活かしたヒット・シングルを次々放ったルー・クリスティ。

日本では1969年の「魔法(She Sold Me Magic)」のヒットでおなじみかな。この曲、アメリカでは未シングル化だったものの、日本やイギリスで独自にシングル・カット。特に日本で特大ヒットを記録した。というわけで、日本では“ジプシー”でもなく、“ライトニン”でもなく、“魔法”こそがこの人の代表曲ということになるのだけれど。

その時期のちょっと前、1967年、1年間だけルー・クリスティは米コロムビア・レコードに在籍。この期間の彼の目立った戦績としては、シングル「シェイク・ハンズ・アンド・ウォーク・アウェイ・クライン」が全米95位にちらっとランクしただけで。「(アイ・リメンバー)ジーナ」がいくつかの地域でローカル・ヒットを記録した程度。コルピックス〜MGM在籍期から引き続きあのチャーリー・カレロがプロデュース/アレンジを手がけていたにもかかわらず、あまり注目を集めることができずに終わってしまった。

この時期、ルー・クリスティがリリースしたシングルは4枚。B面は2曲を使い回していたので、A面4曲+B面2曲の計6曲がオフィシャルに世に出たのみ。確か日本では1曲も出なかったんじゃなかったかな。なので、各社が編むグレイテスト・ヒッツ集とかにもぎりぎり「シェイク・ハンズ…」が入っていればましな程度で。他の曲はほぼスルー状態。

その後、彼はブッダ・レコードに移籍して、「魔法」とか、全米10位にランクした「キミがほしい(I’m Gonna Make You Mine)」とか、またヒットチャートを賑わすことになるのだけど。その直前のコロムビア在籍期は、なんとなくエアポケットっぽい期間。アルバムが出ることもなく、ふと見逃されがちになっていた。「ジーナ」とか、個人的には大好きなんだけどなぁ。「ラヴァーズ・コンチェルト」の作者としておなじみ、デニー・ランデル&サンディ・リンザーの作品で。たまーにマニアックなベスト盤に入っていて、ぼくもそれで知ったのだけれど。当時のサンシャイン・ポップ系のテイストも取り入れつつ、自慢のファルセットも盛り込んだ素敵な1曲だった。

が、さすがはオールディーズ発掘の鬼、英ACEレコード。その時期にスポットを当てたマニアックなコレクションを出してくれました。2月ごろ出た盤ですが、出たの知らなくて(笑)。遅まきながらご紹介です。収録されているのは、オフィシャルに世に出たシングル音源6曲(「シェイク・ハンズ・アンド・ウォーク・アウェイ・クライン」をはじめ、「セルフ・エクスプレッション」「ジーナ」「ドント・ストップ・ミー」という4曲のシングルA面曲と、「エスケイプ」「バック・トゥ・ザ・デイズ・オヴ・ザ・ローマンズ」というシングルB面曲2曲)と、未発表曲13曲、およびシングル曲のステレオ・ヴァージョン5曲。

未発表の音源とか、まじ、今回初めて聞いた。それまでにも多くのポップな名曲を作り出してきたルー・クリスティ&トワイラ・ハーバートの共作曲が大半なのだけれど。そんな彼らがちょっと路線を変更して共作したジャジーなバラード「ブルー・シャンペーン」とか、アントニオ・カルロス・ジョビンの「メディテーション」やバカラック&デヴィッド作の「悲しみの日々(How Many Days Of Sadness)」、ビリー・ホリデイの名唱でもおなじみの「ユーヴ・チェンジド」などのカヴァーとか、ずいぶんとアダルトなポピュラー・ヴォーカルを聞かせていて。スウィンギーなシングルB面曲「エスケイプ」ともども、びっくりさせられた。

ポール・レカ作、「グリーン・タンバリン」みたいなエレキ・シタールばしばしのポップ・サイケもの「アイ・ニード・サムワン」とか、こういうタイプの曲も時代だなぁ…って感じで楽しい。

もちろん、「ザ・グレイテスト・ショー・オン・アース」とか、表題曲となっている「ジプシー・ベルズ」とか、フランシーヌ・マーナ・ニーマン&ゲイリー・ナイト作によるごきげんなコーラス・リフレイン満載の「ホールディング・オン・フォー・ディアー・ラヴ」とか、いやー、ルー・クリスティやねぇ…という感じのファルセットが炸裂する超キャッチーな曲もたくさん。面白い。

面白いといえば、コロムビアからのラスト・シングルとなった「ドント・ストップ・ミー」って曲はほどなく日本で特大ヒットを記録することになる「魔法」のプロトタイプみたいな楽曲。いろいろ興味深く、かつ貴重なアンソロジーです。

英ACEの常で、これもサブスクのストリーミングはなし。ブツをゲットしてお楽しみください。

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