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Disc Review

On Sunset / Paul Weller (Polydor)

オン・サンセット/ポール・ウェラー

近年はジャズに接近してみたり、タンゴに寄ってみたり、エレクトロニック方面に足を踏み入れたり、クラウトロックっぽい音像に挑んでみたり、壮麗かつ伝統的なオーケストレーションのただ中に身を置いてみたり…。あれこれくるくると挑みまくってきたポール・ウェラーですが。

ただ、本人の意向には背いちゃうことになるのかもしれないけれど、この人がいちばん輝くのは、やはり鉄壁のブルー・アイド・ソウル・アーティストとしての持ち味を全開にしたときだとぼくは感じていて。

今回出た15作目のソロ・スタジオ・アルバムではいつになくそうした魅力をわりとストレートに味わえた気がして、なんだかうれしい。様々なレーベルを渡り歩いた後、今回、かつてザ・ジャムやスタイル・カウンシル時代に在籍していたポリドールに戻ってきたから…とか。そういうことも背景にあるのかもしれない。なんとジャムのスティーヴ・ブルックスやスタカンのミック・タルボットが参加した曲まであるし…!

もちろん、今回もオープニング・チューン「ミラー・ボール」では、中盤、突如ミュージック・コンクレートみたいな、サウンド・コラージュ的な展開に突入してみたり。デラックス・エディションに収録されたボーナス曲でエレクトロニックなアプローチを盛り込んだエスニック・ポップっぽいやつを聞かせていたり。相変わらず気の多いところを見せてはいるけれど。

でも、ファンキーにハネるソウル・グルーヴのもと、持ち前のメロウなメロディ・センスを解き放つ「バプティスト」とか、ワウ・ギターとムーグがやばい「オールド・ファーザー・タイム」とか、ミック・タルボット参加のキャッチーな「ヴィレッジ」とか、フランスのル・シュペールオマールのジュリー・グロをゲスト・ヴォーカルに迎え往年のカーティス・メイフィールドっぽいニュー・ソウル系アンサンブルを聞かせる「モア」とか、60年代英国サンシャイン・ポップ・ソウルふうのニュアンスをたたえた「イークワニミティ」とか「ウォーキン」とか、なんとザ・ステイヴスや娘さんの彼氏だというコールトレーンを起用したソウルフルなシャッフル・チューン「アース・ビート」とか…。古くからのファンにとってぐっとくるタイプの曲がずらり。

プロデューサー/エンジニアとして近ごろポール・ウェラー作品に関わり続けているジャン“スタン”カイバートとの共同プロデュース。アルバム表題曲「オン・サンセット」をはじめ、多くの曲でふくよかなストリングス・アレンジを聞かせるのは、2018年の『トゥルー・ミーニングス』以来よくタッグを組んでいるアイルランドの作曲家、ハンナ・ピール。

この表題曲「オン・サンセット」は40年くらい前、ザ・ジャム時代に初めて訪米してロサンゼルスのサンセット・ブルヴァードで過ごしたときの思い出をもとに書かれたものだとか。最近また、長男が住むロサンゼルスを訪ねたらしく。昔と大きく様変わりして、かつての面影が何もなくなってしまった様子にいろいろな思いを重ねている。タイトルは“サンセット通り”と“日没”との皮肉なダブル・ミーニングって感じ?

ポール・ウェラーもすでに60歳代ということもあってか、アルバム全体に、この、日没感というか、終末を意識した感触というか、そういうものが漂っているのだけれど。かといって、必要以上に悲観的になることなく、もちろん必要以上にノスタルジックになることもなく、淡々と受け止めて、でも言いたいことはきっちり主張しながら今をしっかり生きる、みたいな。そういうポール・ウェラーの毅然とした姿が記録されていて。同世代の者として、いろいろ感じるところは大きいです。

“もし何か変えることができたとしても何ひとつ変えはしない/ぼくは今ここで幸せだ…”という「ヴィレッジ」の歌詞。しみます。

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