Disc Review

Riding with the King: 20th Anniversary Expanded Edition / Eric Clapton & B.B. King (Warner/Rhino)

ライディング・ウィズ・ザ・キング(20周年記念エディション)/エリック・クラプトン&B.B.キング

しょっちゅういろいろなところで書いたり発言したりしてきたことなので、またその話かよ、と呆れられるかもしれないけど。すみません。またその話です(笑)。

エリック・クラプトンに関してぼくが印象的に思い出すのは、1990年代半ば、当時超売れっ子プロデューサー/ソングライターとして大活躍していた黒人アーティスト、ベイビーフェイスがソロ・アルバムをリリースしたときのエピソードだ。そのアルバムにゲスト・ギタリストとしてクラプトンが参加していて。彼をゲストに迎えた理由を訊かれ、ベイビーフェイスはこう答えていた。

「ブルージーな要素を引き出すためさ」

米国の黒人ミュージシャンのアルバムにブルージーな要素を加えるため英国の白人ギタリストが迎えられる。なんだそりゃ、と思わず突っ込みたくなったものだけれど。

しかし、これをクラプトン側から眺めてみると感慨もひとしおだ。あんな白人のガキに本物のブルースができるわけない、猿真似だ猿真似、と揶揄されたのも遠い昔。1960年代の英国で、米国の黒人ブルースに憧れてギターを弾き始め、一所懸命コピーして、ひたすら練習して、ついにプロになって、ヤードバーズ、クリーム、ブラインド・フェイス、デレク&ザ・ドミノズなど、様々なバンドを渡り歩きながら自らのブルース・フィーリングに磨きをかけ続けて数十年。ついにクラプトンのギター・プレイは本場の黒人アーティストからも“ブルースである、ブルージーである”と認められるに至ったのだから。

そんな長い旅路の果て、ある種の到達点のひとつとして燦然と輝いているのが2000年にオリジナル・リリースされた本アルバムじゃないかと思う。クラプトンも大いに尊敬する偉大なるブルースの巨人、B.B.キングとの連名で制作された超名盤『ライディング・ウィズ・ザ・キング』。

二人の初共演は1967年のことだとか。クラプトンがクリームに在籍していたころ。でも、レコーディングを一緒にしたことはずっとなくて。その30年後の1997年、B.B.が多彩なゲストを迎えて制作したアルバム『デューシズ・ワイルド』にクラプトンがお呼ばれ。「ロック・ミー・ベイビー」で共演したのが初録音だった。

これがものすごく楽しかったらしく、この師弟コンビのコラボをより本格的な共演アルバムへと発展させる計画が持ち上がり、2000年に『ライディング・ウィズ・ザ・キング』が完成した、と。そういう流れだ。で、このほど、そのリリース20周年を寿いで、未発表音源2曲をボーナス追加したスペシャル・エディションが編まれたのでありました。

主役のB.B.とクラプトンをバックアップするのは、ドイル・ブラムホールⅡ世、ジム・ケルトナー、ジョー・サンプル、スティーヴ・ガッド、ネイサン・イースト、アンディ・フェアウェザー・ロウ、ジミー・ヴォーンら。

オリジナル収録曲12曲中、5曲(「テン・ロング・イヤーズ」「スリー・オ・クロック・ブルース」「ヘルプ・ザ・プア」「デイズ・オヴ・オールド」「ホエン・マイ・ハート・ビーツ・ライク・ア・ハンマー」)がB.B.の往年のレパートリー。クラプトンもデレク&ザ・ドミノズ時代にカヴァーしていたビッグ・ビル・ブルーンジー作の「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」や、ビッグ・メイシオの「ウォリード・ライフ・ブルース」のようなブルース・スタンダードもある。

サム&デイヴのR&B「ホールド・オン、アイム・カミン」やハロルド・アーレン&ジョニー・マーサー作のポピュラー・スタンダード「カム・レイン・オア・カム・シャイン」のような異ジャンルからのカヴァー曲も。

アルバム表題曲はジョン・ハイアット作。もともとハイアットがエルヴィス・プレスリーのことを思い描きながら自作自演していた曲だけれど、クラプトンとB.B.がカヴァーしてからは、まるでこの二人のために書き下ろされた曲みたいになってしまった。で、残る「マリー・ユー」と「アイ・ウォナ・ビー」がドイル・ブラムホールⅡ世を中心に書き下ろされた本作のためのオリジナル楽曲。

そこに今回、ボーナスとして、バディ・ガイのレパートリーとしてもおなじみ、ウィリー・ディクソン作の「レット・ミー・ラヴ・ユー・ベイビー」と、ご存じデルタ・ブルースのスタンダード「ローリン・アンド・タンブリン」が追加されている。「レット・ミー・ラヴ・ユー・ベイビー」のほうはシングルのカップリング曲などとして日本独自に発表ずみの音源ではあるけれど、今回は本作の共同プロデューサーでもあるクラプトンの盟友、サイモン・クライミーが20周年記念エディションのために手がけたニュー・ミックスでのお目見えだ。

やっぱ、かっこいいです。こいつら、魂の師弟。

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