Disc Review

Various Reviews: 1/10/1999 / Hot Club Of Cowtown, Ani DiFranco, New Radicals, Remy Zero, Flat Duo Jets

Swingin' Stampede / Hot Club of Cowtown (HighTone)

ギター、アップライト・ベース、ヴァイオリンという編成によるウェスタン・スウィング~ジャズ系のグッド・タイム・ミュージック・バンド。スクァーレル・ナット・ジッパーズほどパンク精神があるわけじゃなく、もっとストレートにその種の音楽めがけてリラックスしたアプローチを仕掛けている人たちって感じだ。

だから、ブライアン・セッツァーを筆頭とする近ごろの戦後ジャンプ・スウィング・リヴァイヴァルみたいなのともちょっと違う。ホールを熱狂させることはできないだろうけれど、小さなフォーク・クラブみたいなところを思い切り気持ちよくさせてくれそうな音楽。往年のパイド・パイパー・ハウスのエサ箱なら、間違いなくいっちゃん奥の“趣味趣味音楽コーナー”に収められたはず。

ジャズ・スタンダードから、往年のノヴェルティもの、ボブ・ウィルス作品まで、確かなテクとともに気楽にカヴァーしまくってます。バンド名からも想像つく通り、ジャンゴ・ラインハルトへの敬愛もたっぷり。つまり、このジャケ裏の写真そのままの感じっす(笑)。

Up Up Up Up Up Up / Ani DiFranco (Righteous Babe)

前作がビルボードでもけっこう上のほうまで行ったり、グラミーにもノミネートされたりしているので、注目度をぐっと上昇させての新作ってことになる。

前作同様テキサス州オースティンで録った曲と、新たにダニエル・ラノワ所有のニューオリンズのキングズウェイ・スタジオで録音された曲と。なんでもA-DATとかを使って、シンプルに録音されたらしく、そのぶんメンバーどうしの、言葉少なながら緊密な音のやりとりがじわじわと伝わってくる。

そう。今回はキーボードも加わったツアー・バンドを従え、よりバンドとしての一体感を強調した仕上がり。といっても、全体的にバンドでどひゃーっとぶちかますというより、むしろ抑制をきかせて、クールに“歌”を伝えようとしている曲が多くて。妙にしみました。作品的な押し出しの強さとかは前作のほうが断然上だと思うけど、やっぱりただ者じゃないです。今回もアルバムのラストにはグルーヴィな長時間ジャムもの、あり(日本盤はその後にボーナス・トラック1曲入っちゃってるけど)。

Maybe You've Been Brainwashed Too / New Radicals (MCA)

トッド・ラングレンあたりにも通じるブルー・アイド・ソウル風味をまぶした「ホワット・ユー・ギヴ」が去年の暮れから全米チャートにランクイン。この曲、歌詞ではダスト・ブラザーズとかベックとかマリリン・マンソンとかを持ち出し、けっこう辛辣に今の音楽シーンを非難していて。ぼくもそれでニュー・ラディカルズの存在を知ったのだけれど。

バンドなのやら、コーネリアス方式のソロ・プロジェクトなのやら。よくわからないものの、とにかく中心人物のグレッグくんは27歳。ミシガン州生まれらしいが、その後、LA、ニューヨーク、ロンドンなどをふらふらしていたそうで。メンタリティとしてはイギリスのアーティストに近い感触も。

全編、ブルー・アイド・ソウル寄りのわりかしいいメロディ多し。でも同時に近ごろのこのテのアーティスト――たとえばジャミロクワイとかにも漂う“根っこが甘い感”は拭い切れず。ミック・ジャガーっぽい歌い口を聞かせる局面もあって一瞬驚きはしたものの、基本的には歌も今いち弱いし。ただ、近ごろの若者さんたちはこのくらい薄味のほうがいいらしいから。ね(って、何が“ね”だ)。

Villa Elaine / Remy Zero (DGC/Geffen)

2年以上ぶりのセカンド。

この人たちのバイオに関して、ぼくは詳しくないんだけど。確か南部の人たちだよね。で、LAベース。でも底辺にはビートルズっぽかったりキンクスっぽかったりするポップ・センスが流れていて。まあ、わりと近ごろフツーのチャート系アメリカン・ロックっぽい瞬間も多いとはいえ、聞いているうちに情がわくタイプの音楽かな(笑)。

アラン・モールダーがミックスを手がけているせいか、U2とかスマパンに通じる味も。と思ったら、基本的にはロサンゼルスでレコーディングされたこのアルバム、何曲かはロンドンで録音/ミックスされているようだ。ストーン・テンプル・パイロッツとかになぜか抗えないワタシにしてみると、この人たちにもなぜか抗えません。

Lucky Eye / Flat Duo Jets (Outpost)

チャペル・ヒルを拠点にするロカビリー・デュオの新作。ソングライター/ギタリスト/ヴォーカリストとドラマーだけという、何とも妙な組み合わせなのだけれど、近ごろは日本でも“ユニット”とか称して妙な取り合わせの2人組とかいるから、誰も驚かないか。

インディーズ盤をけっこうたくさん出しているのだけれど、本盤は待望のメジャー・デビュー作。スコッティ・リットとクリス・ステイミーのプロデュースで、ロカビリー、カントリー、スウィングなどをごっちゃにしつつ、若干、なんつーか、『ツイン・ピークス』的なやばさもまぶした仕上がり。

十分シンプルながら、7、8年前にこいつらが出した傑作アルバム『ゴー・ゴー・ハーレム・ボーイ』に比べると、これでもだいぶゴージャスになってきていて。ゲスト・プレイヤーも多数。ストリングス入りの曲まである。でも、やはり最大の魅力は相変わらずのチンピラっぽさかな。生ギターでぐりぐりロカビリーしちゃう様子とか、下品なクリス・アイザックといった佇まいのロカバラードの歌い方とか、リンク・レイっぽいインストのデモ・テープをガレージで録ったみたいな手触りの曲を入れていたりする感じは、なんだかうれしい。

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