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Disc Review

Catspaw / Matthew Sweet (Omnivore Recordings)

キャッツポウ/マシュー・スウィート

ソロ・アーティストとしてだけでなく、マイケル・スタイプの妹さんたちと組んでいたオー・OKの一員としてとか、そこのドラマーだったデヴィッド・ピアスと組んだザ・バズ・オヴ・ディライトとしてとか、ピート・ドロージやショーン・マリンズと組んだザ・ソーンズとしてとか、スザンナ・ホフスとのカヴァー・プロジェクトでとか、いろいろな形でアルバム・リリースを続けているマシュー・スウィート。

なもんで。これ、この人の何作目と数えればいいのやら…。発売元のオムニヴォア・レコーディングスのサイトにはソロ11作目と書いてあった。ぼくは14作目かなと思うのだけれど。Wikiを見ると15作目のオリジナル・アルバムということになる。よくわからない。まあ、とにかく、そのくらいたくさん出している、もはやベテラン・パワー・ポッパー、ほぼ3年ぶりの新作アルバムです。

今回は、真っ向からのソロ・アルバムだ。ここ数作同様、クラウドファンディングのキックスターターで資金調達し、ネブラスカの自宅の“ハニーカム・ハイドアウト・スタジオ”でレコーディング。ソングライティング、プロデュース、録音、ミックス、すべてマシュー・スウィートの手による1枚で。演奏のほうも、長年の盟友、ヴェルヴェット・クラッシュのリック・メンクにドラムを頼んだ以外、ベース(ヘフナー!)もギター(ノヴォ!)もキーボードも、すべて本人がプレイしている。

これまでもけっこう一人であれもこれも楽器をこなしつつアルバム作りしてきたマシューくんではありますが。リード・ギターに関してだけは、リチャード・ロイドとかイヴァン・ジュリアンとかロバート・クインとか、信頼できる仲間にまかせていたものだ。けど今回はなんと、全曲のリード・ギターまで自分で手がけたようで。それは初めてのことらしい。

本人は、リード・ギターというものをどう弾けばいいのか、子供のころからよくわからなかったとコメントしていて。確かに、曲によってはピッチがあやふやだったり、フレージングが唐突だったり、トーンが微妙だったり…。でも、そのつたなさというか、“座りの悪い”感触というか、そういうものがいい意味でロックンロールっぽいような、アマチュアっぽいような。逆にキュンとしちゃったり。少なくともぼくは大いに気に入りました。

ほぼ自宅で完結した1枚ということで、あ、パンデミック期間だからね…とか、思ってしまうものの、実は曲作りも、ベーシックのレコーディングも、パンデミックのロックダウン期に本格突入する以前から行なわれていたものらしい。もともと自宅にこもりがちな、ステイ・ホーム派のマシューくんだけに、その部分では特別な思いも、違和感もなく、すんなり制作を続けられたようだ。

アーティストは究極、孤独なもの…というのが彼の信条だそう。でも、そんな孤独な環境下でこういう痛快パワー・ポップ的な音像を編み上げてしまうミスマッチング感というか、アンビバレンスというか、そういうところが相変わらずなんとも魅力的ではあります。

ちなみに“キャッツポウ〜Catspaw”というタイトルは、要するに“Cat’s Paw”。猫の手? 猫の足? 何かの思うままに操られる、みたいな、そういう状況を表わす際に使われる成句だ。1967年に放送された『宇宙大作戦』、つまり『スター・トレック』に、このタイトルを冠したエピソードがあって(日本でのタイトルは“惑星パイラスセブンの怪”)。なんか、巨大な黒猫が出現してカーク船長とミスター・スポックを恐怖に突き落とす…みたいな? ぼくは『スター・トレック』にまったく詳しくないので、すみません、なんともあやふやですが(笑)。

で、その猫を巨大に見せるための撮影のセッティングがものすごくチープに感じられて、マシュー・スウィートの記憶に印象的に刻み込まれていたらしく。で、人生というのは常に、象徴としての“キャッツポウ”に直面しているものなのだ、と。そんな思いをこめてこのアルバム・タイトルとジャケット写真が生まれたとのこと。昔から猫好きだもんね、この人。

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