Disc Review

What’s Going On: Deluxe Edition 50th Anniversary, The Detroit Mix, Funky Nation: The Detroit Instrumentals / Marvin Gaye (Motown/UMG)

ホワッツ・ゴーイン・オン:デラックス・エディション50周年記念盤ほか/マーヴィン・ゲイ

今年、2021年は、まあ、当たり前だけど、1971年からちょうど半世紀。50年目。

1971年というと、キャロル・キングの『タペストリー』を筆頭に、レッド・ツェッペリン『Ⅳ』、ザ・フー『フーズ・ネクスト』、ジョニ・ミッチェル『ブルー』、スライ&ザ・ファミリー・ストーン『暴動(There's A Riot Goin' On)』、ローリング・ストーンズ『スティッキー・フィンガーズ』、ドアーズ『LAウーマン』、オールマン・ブラザーズ・バンド『アット・フィルモア・イースト』、ジョン・レノン『イマジン』、ポール&リンダ・マッカートニー『ラム』、イエス『こわれもの(Fragile)』、Tレックス『電気の武者(Electric Warrior)』、ジャニス・ジョプリン『パール』、ロッド・スチュワート『エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー』など、ロック・シーン、ソウル・シーン、ポップ・シーンで永遠の名盤が続々誕生した年。

なもんで、今年も絶対にとんでもない数の50周年記念盤が次々と編纂されること必至なわけだけれど。

そんなうちのひとつ、マーヴィン・ゲイが1971年に発表した傑作アルバム『ホワッツ・ゴーイン・オン(What’s Going On)』、およびシングルとしても先行リリースされ大ヒットしたその表題曲も、今年でオリジナル・リリースから50年目を迎えた。先日、それを祝してミシガン州のグレッチェン・ホイットマー知事は、1月20日を“「ホワッツ・ゴーイン・オン」の日”に制定。マーヴィン・ゲイが在籍していたモータウン・レコードの当時の拠点、デトロイト周辺は大いに盛り上がっているみたい。

まあ、あの偉大な楽曲の何たるかについては、もう音楽ファンならば耳タコだろうし、本ブログでも、一昨年、こちらのエントリーでざっくり書かせていただいているのでここでは繰り返しませんが。今回、50周年ということもあって、またまた周年エディションが出ましたよ。今回はデジタル・オンリーながら、3種類。まあ、『ホワッツ・ゴーイン・オン』のスペシャル・エディションは周年のたびにあれこれ編まれているので、特に超珍しい音源が発掘されたというわけでもなく。これまでのものを持っている人にとっては特に必要のないリリースではあるのだけれど。そうは言っても、やっぱりめでたい50周年ですから(笑)。いちおうチェックしておきましょう。

まずひとつめ。『ホワッツ・ゴーイン・オン:デラックス・エディション/50周年記念盤(What’s Going On: Deluxe Edition/50th Anniversary)』ってのは、オリジナル・アルバムの全収録曲9曲に加えて、ボーナス・トラックを12曲併録したものだ。

ボーナスの内訳は、2011年の40周年スーパー・デラックス・エディションとか、そのあたりに収められていたのと同じ、アルバムからカットされた「ホワッツ・ゴーイン・オン c/w ゴッド・イズ・ラヴ」「マーシー・マーシー・ミー c/w サッド・トゥモロウズ」「インナー・シティ・ブルース c/w ホーリー・ホリー」というシングル3作の各々AB面計6曲のモノラル・シングル・ヴァージョン。このうち「ゴッド・イズ・ラヴ」は別テイク。「サッド・トゥモロウズ」はアルバム未収録曲。

さらに表題曲に関しては、ホーンとストリングがダビングされる前にモータウンの社内品質管理部門のリファレンスとして作成された表題曲の超レア初期シングル・ミックスとか、リズム&ストリングス・ミックスなど、30周年記念2CDデラックス・エディションや40周年スーパー・デラックスに入っていた音源に加えて、45周年にあたる2016年のレコード・ストア・デイに限定リリースされた10インチEPに収められていたアンプラグドっぽい“コーヒーハウス・ミックス”と、B.J.ザ・シカゴ・キッドとのゴースト・デュエット版も。

で、さらにマーヴィンがスモーキー・ロビンソンと共作した「シンフォニー」の未発表初期ワーキング・ヴァージョン。この中でマーヴィンは何度も“what’s going on?”と繰り返し歌っていたりして興味深い。あと、同時期に録音されたインストゥルメンタル「アイ・ラヴ・ザ・グラウンド・ユー・ウォーク・オン」も。このあたりも40周年スーパー・デラックスで既発ではある。

続いて、『ホワッツ・ゴーイン・オン:ザ・デトロイト・ミックス(What’s Going On: The Detroit Mix)』ってやつは、30周年デラックスで初お目見えした初期ミックス。発売ぎりぎりにロサンゼルスでミックスし直される前、1971年にデトロイトでミックスされながらマーヴィンにあえなく却下された初期オリジナル・ミックス9曲をまとめたものだ。よりパーカッシヴで、生っぽく、タイトな音像が楽しめる。ガヤの入っている個所とかも違う。曲つなぎの感じも違う。歌詞もちょっと違う。最初に聞いたときは世界観の違いに興味をかき立てられて、けっこう盛り上がったものだ。

で、もうひとつが、『ファンキー・ネイション:ザ・デトロイト・インストゥルメンタルズ(Funky Nation: The Detroit Instrumentals)』。『ホワッツ・ゴーイン・オン』のリリース後、当時のツアー・ドラマーだったハルトン・ボハノンが招集したフレッシュな腕ききミュージシャンたちとともにマーヴィンが1971年の夏の終わりから秋にかけて録音した14曲のインスト・ジャム集だ。当時17歳だったレイ・パーカー・ジュニアとか、20歳だったワー・ワー・ワトソンとか、マイケル・ヘンダーソンとかも参加している。マーヴィンもキーボードとパーカッションをプレイ。これも40周年スーパー・デラックスで世にお目見えした楽曲群だった。

というわけで、既出音源ばかり。過去のデラックス・エディション群もそこそこストリーミングされたりしていて。なんとなく今さらっぽい感触もなくはないけれど。それでもやっぱり50周年。これを機会に、オリジナル・リリースから半世紀を超えてもまったく輝きを失わないマーヴィンの傑作を、わかりやすい形で新たに整理し直されたデジタル・コレクション群で、気軽に、立体的に、満喫しましょう。便利な世の中になったものです。

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