Disc Review

Wine On Venus / Grace Bowers & The Hodge Podge (self-released)

ワイン・オン・ヴィーナス/グレイス・バワーズ&ザ・ホッジ・ポッジ

今年の初めにロージー・フレイター=テイラーのアルバムを本ブログで取り上げたときも書いたことだけれど。女性ギタリストって、まじかっこよくて。この子もそのひとりだな。

グレイス・バワーズ。

去年のニューポート・フォーク・フェスでのパフォーマンスが大いに話題を呼んで。ぼくもそれ以来、YouTubeとかRedditとかインスタとかでいろいろチェックしてきた女の子。1961年製のギブソンSGを指弾きする17歳だか18歳だかのカーリー・ブロンドです。

北カリフォルニア出身で、現在はナッシュヴィル在住。もともと9歳のころ、メタル系の音楽をきっかけにギターを手にしたらしいのだけれど。その後、お母さんが車でラジオ局をシャッフルしているとき、たまたまB.B.キングの「スウィート・リトル・エンジェル」を聞いて、いきなりブルースにどハマリ。ミシシッピ・ジョン・ハートとかT.ボーン・ウォーカーとかを聞くようになって。

で、そういう曲をベッドルームで練習している映像をSNSに投稿して人気爆発。14歳になるころにはギブソンとエンドース契約! とともに、クラブ・シーンでもライヴ・パフォーマンスが話題を集めるようになって。件のニューポート・フォーク・フェスとか、エリック・クラプトンのクロスロード・ギター・フェスとか、米CBSが大晦日に催しているナッシュヴィル・ビッグ・バッシュ・コンサートとか、コヴェナント・スクール銃乱射事件の犠牲者のためのベネフィット・コンサートとか、いろいろなところでフィーチャーされ始めて…。

まあ、前述の通り、ぼくが彼女のこと知ったのは去年のこと。当初は存在すらまったく知らずスルーしていたので、初期のベッドルーム映像とかはほとんど見ていないのだけれど。後追いでチェックしたところ、オールマン・ブラザーズ・バンドとかスティーヴィー・レイ・ヴォーンとかジミ・ヘンドリックスとかレッド・ツェッペリンとかドアーズとか、あれこれアコギやらエレキやらでのびのびカヴァーしてる映像に出くわして。

速弾きも披露するものの、まだけっこう粗いところもあって。そんな、驚愕の…! というほどではないかもしれないけれど。でも、なんだか好感度ばっちり。普段はフラットピックをてのひらで包んで、基本、指弾きしているピッキング・スタイルもうれしい。頼もしい子がいるもんだなぁ…と、遅ればせながら胸躍らせておりました。

そんなグレイスちゃんが自らのバンド、ザ・ホッジ・ポッジを率いてついにアルバム・デビュー。先行で公開されていたファンキーなシングル「テル・ミー・ホワイ・U・ドゥ・ザット」をフィーチャーした『ワイン・オン・ヴィーナス』をリリースしましたー。デジタル・リリースのほか、フィジカルはカラー・ヴァイナルLPのみかな? これまたアナログが似合う音楽なのでOK。

かっこいいです。若きスーパー・ギタリストのデビュー・アルバムという感じではなく、あくまでもバンドのアルバム、という感じに仕上げているのもいい。いちおうリード・ギターがグレイスで、もうひとりのツイン・リードっぽいギターがプリンス・パーカー、リード・ヴォーカルがエスター・オカイ=テッテー、キーボードがジョシュア・ブレイロック、ベースがエリック・フォータリーザ、ドラムがブランドン・コムズ。曲によってホーン・セクションも加わる。

全9曲中1曲がスライ&ザ・ファミリー・ストーン「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」の超ストレートなカヴァー。残る8曲がバンド・メンバーたち、あるいはベン・チャップマン、メグ・マクリー、マギー・ローズ、ルーシー・シルヴァズといったカントリー・ソウル系のシンガー・ソングライターたちとグレイスがタッグを組んだ共作オリジナルで。全編、ファンキーでグルーヴィーなブルース・ロックを聞かせてくれる。プロデュースもカントリー畑のブラザーズ・オズボーンのジョン・オズボーン。こうした人選がバンドとして目指す方向性を示唆している感じ。

ちなみに「テル・ミー・ホワイ・U・ドゥ・ザット」のビデオクリップでグレイスが弾いてる1960年製の335はジョン・オズボーンのものらしい。レスポールも弾いているけど、これはロビー・ロバートソンのものだとか。豪華だ。グレイスちゃん、ギタリストとしてはもちろんまだまだ未完成で。前述した通り粗っぽいフレージングも少なくないとはいえ、年齢的には伸びしろしかないとも言えるわけだから。ほんと今後が楽しみ。

11月には初来日も予定されてます。

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