Disc Review

Featherweight / Rosie Frater-Taylor (Cooking Vinyl)

フェザーウェイト/ロージー・フレイター=テイラー

女性ギタリストにノックアウトされた記憶というのが何回かあって。アコースティック・ギターだったらジョニ・ミッチェルとかサラ・ジャローズとかモリー・タトルとか。エレクトリック・ギターだったらボニー・レイット姐さんとかスーザン・テデスキとかキリンジで弾いてた弓木さんとか、あとスティール・ギターだけどラーキン・ポーのメーガンさんとか…。

でも、いろいろいる中、カッティングのトーンいっぱつでハマったのが、この人。英国のシンガー・ソングライターというか、ジャズ・ギタリストというか。ロージー・フレイター=テイラー。初めて彼女の音を耳にしたのは3〜4年前のことだったと思うけど。そのあと、いろいろ動画とかチェックして。さらにぶっとんで。あわてて2018年、19歳のときにリリースしたファースト・アルバム『オン・マイ・マインド』ってのを後追いで聞いて。

エレクトリック、アコースティック取り混ぜつつ、指弾きも交えて聞かせる巧みなコード・ワークも、ジョージ・ベンソンみたいなスキャットとのユニゾンでジョン・スコフィールドみたいなフレーズを繰り出すソロも、ちょっとジョニ・ミッチェルとかジュディ・シルを想起させるヴォーカルも、浮遊感に満ちたソングライティング感覚も、なんだか若いのにすごいな…と打ちのめされたものです。

その後、さらにエッジを効かせた感じのセカンド・アルバム『ブルーム』を2021年に出して。このとき紹介しようかなとも思ったのだけれど、うまくタイミングが合わず。ずるずるしているうちに、数年。サード・アルバムにあたる本作『フェザーウェイト』が出ちゃいました。

なんでも前作『ブルーム』は300万ストリーミングを超えるほどの注目を集めたそうで。ベースとドラムを引き連れてトリオで行なったヨーロッパ・ツアーも大好評。そのツアー後、勢いを止めることなくスタジオ入りして作り上げたのが本作だとか。

デビュー間もないころはジャズのフィールドで語られることが多かったロージーさんですが。徐々にボップ・フィールド、ロック・フィールドも巻き込みつつ注目度をアップさせ続けて。今回もジャズ的な要素はもちろん、オルタナ・ポップ、ネオ・ソウル、インディ・フォークなど幅広い音楽性の境界ぎりぎりをあちこちスリリングに行き来する感じの音作りを聞かせてくれている。トリオでのツアー以降は本格的にエレクトリック方面へと向かっているようで、レスポール・スタンダードとかレスポール・スタジオとかレスポール・カスタムとかいろんなタイプのギブソン/レスポールを抱えてかっこよくキメてます。レスポールが似合うし。曲によってはスプロ・ウェストベリーも使ってるみたい。ちなみにアンプはフェンダー・デラックス・リヴァーブだとか。このチョイスもナイス!

曲作りのほうでも、前出ジョニやジュディの他、PJハーヴェイとかセント・ヴィンセントとかマディソン・カニンガムとか、そのあたりのテイストも自分なりに昇華している感じで。自身への疑念を抱いたり、弱さをクールに見つめたり、重荷に耐えかねたり、怒りを覚えたり…。心象の切り取り方、描き方が青くてよいです。

もちろん今回も共作曲も含めてほとんどが自作曲。前作ではフリートウッド・マックの「ドリームズ」とか、シールの「クレイジー」とかをカヴァーしていたけど、今回はTLCの「ノー・スクラブズ」に挑戦している。選曲がおいしいね。

まあ、旧世代のリスナーとしてはもうちょい往年の“いいメロディ”みたいなやつの分量が多いとうれしい気もするのだけれど、もう時代が違うんだろうな。その辺は基本あきらめているので、お気になさらず。もちろんこのままで十分です。

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