Disc Review

Miracle of Science (1996, Reissue 2020) / Marshall Crenshaw (Shiny-Tone Records)

ミラクル・オヴ・サイエンス/マーシャル・クレンショウ

この10年ほど、EPを何枚か出したのみで、新作フル・アルバムからごぶさたしているマーシャル・クレンショウ。近年はスミザリーンズやジン・ブロッサムズあたりの旧友たちと組んでライヴ活動をしているらしきニュースを耳にはしていたのだけれど。どうしてるのかなぁ…と思っていたら。

なんと。今年、2020年はクレンショウの再発プロジェクトってのがあるらしい。1990年代半ばにレイザー&タイ・レコードに移籍して以降のスタジオ・アルバム3作(1996年の『ミラクル・オヴ・サイエンス』、1999年の『#447』、2003年の『ホワッツ・イン・ザ・バッグ?』を中心に、1994年のライヴ盤『マイ・トラック・イズ・マイ・ホーム』とか、デモ音源や宅録音源を集めた1998年のコンピ『ザ・9・ヴォルト・イヤーズ』とかをボーナス・トラック入りの拡張エディションとしてリイシューする、と。

新作じゃないのはちょっと残念だけれど、このプロジェクトで勢いつけてそっちへ向かってもらえるとうれしいかも。というわけで、その再発プロジェクトの初っ端を担ってリリースされたのが、本作、1996年のアルバム『ミラクル・オヴ・サイエンス』。ワーナー〜MCAを経てレイザー&タイへと移籍後、初めてリリースされたスタジオ・アルバムだった。今回の再発音源、ストリーミング配信は去年のうちにスタートしていた模様。今年に入ってCDやLPなど、フィジカルでのリリースも始まった。

当時、最新の機材だったADATとかを使って自分ですべて演奏した宅録ものが半分、ナッシュヴィルのアレックス・ザ・グレイト・スタジオに出向いてブラッド・ジョーンズやビル・ロイド、グレッグ・レイズら現地の才人たちと組んだ音源が半分。ラムゼイ・ルイス/ドビー・グレイの「ジ・“イン”・クラウド」やビリー・フューリーの「ア・ワンダラス・プレイス」のカヴァーなども交えつつ、相変わらず古今のポップ・イディオムの中からおいしいところをうまいことピックアップしつつ、でも、肝心なところでひょいと引く…みたいな、イキそでイかない独自の屈折ポップ・ワールドを作り上げていた。

眠っているその瞳の奥で君は何を夢見ているのかな、その秘密の世界を知ることができるなら何でもするよ…みたいなことをキャッチーなリフに乗せて歌うオープニング・チューン「ホワット・ドゥ・ユー・ドリーム・オヴ」とか、クレンショウならではの切ない美メロ炸裂のミディアム・チューン「スターレス・サマー・スカイ」とか、サイケなフォーク・ロック・サウンドが印象的だった「ラフター」とか、シャドウズみたいなノーブルなギター・インストゥルメンタル曲「シーム・フロム・フレアガン」とか、アーシーなスライド・ギターとファンキーなホーン・フレーズが交錯する先述「ジ・“イン”・クラウド」とか、好きだったなぁ。

曲順が一部、オリジナル・リリースとは入れ替えられていて。メランコリックな「オンリー・アン・アワー・アゴー」とかはリミックスもされているみたい。「セヴン・マイルズ・アン・アワー」は、んー、なんでも今回の再発にあたってクレンショウがアルバムを聞き直していたところ、この曲は逆再生させたほうが面白いぞと思い立っちゃったらしく、タイトルも“Seven Miles an Hour”を逆から綴った「Rouh Na Selim Neves」って逆再生ヴァージョンを並べて入れてあったり…。こうなってくると、もう意味不明ですが(笑)。

さらに新録のカヴァーものが2曲。カナダのミシェル・パグリアーロの「ホワット・ザ・ヘル・アイ・ガット」と、スコットランドのインディ・ポップ系、ダニエル・ワイリーの「ミスティ・ドリーマー」。これは、まあまあの出来とはいえ、とりあえずうれしい追加音源です。

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