Disc Review

The Complete Liberty Singles / Gary Lewis & The Playboys (Collectors' Choice/EMI)

ザ・コンプリート・リバティ・シングルズ/ゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズ

世襲ってのがいろいろ話題になってますが。

ポップ・ミュージックの世界にもたくさんの二世がいる。イナラ・ジョージ、マイリー・サイラス、ルーファス・ウェインライト、ジェイコブ・ディラン、ロザンナ・キャッシュ、ムーン・ザッパ、ドウィージル・ザッパ、デビー・ブーン、ダラ・セダカ、クリス・スティルス、ベック、ウィルソン・フィリップス、ジュリアン・レノン、ジェフ・バックリー、リサ・マリー・プレスリー…。テキトーに思いだしただけで膨大な数の二世アーティストの名前が頭に浮かぶ。カントリーの祖、ハンク・ウィリアムスの息子のハンク・ウィリアムス・ジュニア、さらにその息子のハンク三世みたいに親子孫三代に及ぶ連中もいるくらいだ。ポップ・ミュージックの歴史も長いっすね。まじに。

二世シンガーのやり方というのは大きく二通りあって。リー・ヘイズルウッドやビリー・ストレンジといった有能なプロデューサー/アレンジャーを得て、ほんの数年間とはいえ父親とはひと味違う独自のポップ路線を切りひらいたナンシー・シナトラになるのか、父親とも親交の深いドン・コスタらをプロデューサーに、父親同様のスタンダード寄り路線で地味な歩みを続けたフランク・シナトラ・ジュニアになるのか。この辺、誰もが悩むところだろうけど。聞く側としては、まあ、どっちもがんばれ、と。親戚の子のピアノ発表会を見るような気分で応援してしまう。

で、そんな二世アーティストの中でも、ぼくが特に好きなのはこの人、ゲイリー・ルイスだ。ご存じ、ジェリー・ルイスの息子さん。基本的には俳優というかコメディアンというか、そういう人の息子なので、ちょっと畑違い気味だけど。お父さんもレコード出してるし、息子も俳優やってるし。いいんじゃないでしょうか。

1946年、ニューヨーク生まれ。その後、西海岸へと移り、64年にロサンゼルスで仲間とロック・バンドを結成。それがゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズだ。ディズニーランドへのレギュラー出演をきっかけにリバティ・レコードと契約したってエピソードもごきげん。ウソでもOK。名プロデューサー、スナッフ・ギャレットの後押しを得ながら65年以降、「恋のダイアモンドリング」「カウント・ミー・イン」「君のハートは僕のもの」「涙のクラウン」「あの娘のスタイル」など次々と大ヒットを連発した。

そんな彼らが1965~70年にリバティからリリースしたシングル盤のAB面、コンパクト盤音源、プロモ盤音源などを総まくりしたコンピレーションが今回のピック・アルバムだ。いい意味でおぼっちゃんっぽいゲイリーのイノセントなヴォーカルと、スナッフ・ギャレット、レオン・ラッセルら腕利きスタッフがレッキング・クルーの面々を駆使しながらその才能を余すところなくつぎ込んだ珠玉のポップ・サウンドとの素晴らしい合体。ゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズのオリジナル・アルバム群の再発もそれなりに実現してはいるけれど、やはりアルバムよりもシングルで楽しむべき人たちだけに、このコンピこそが必殺って感じ。

ギャレット/ラッセル/ルイス作の名曲の数々はもちろん、ゲルド&ユデル、スローン&バリ、クック&グリーナウェイ、アル・クーパーなど素敵なソングライターたちの“いい仕事”を満載。初夏に聞くには最適なんじゃないすかね。

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