Disc Review

MTV / Mo Troper (Lame-O Records)

MTV/モー・トローパー

一昨年、ソロ名義でのサード・アルバム『ナチュラル・ビューティ』を本ブログでも紹介したオレゴン州ポートランドを本拠に活動するパワー・ポッパー、モー・トローパー。去年も『ディレッタント』というオリジナル・アルバムをリリースしていて。これが全長50分に28曲をぶちこんだ作品で。何日か前、ピックアップしたトニー・モリーナとかと同趣向の方向性というか。で、変なやつだなぁ…と感心していたら。

出ました、新作。フィリー・パンクの名門、フィラデルフィアのインディ・レーベル、Lame-Oレコードへ移籍しての第一弾だ。前作の方向性を受け継ぎつつ、トニー・モリーナほどではないものの、よりコンパクトに展開した1枚で。タイトルは『MTV』。あのMTVのことではなく、“Mo Troper 5”、つまりモー・トローパーのフル・アルバム5作目という意味だとか。

去年の春に、パンデミック・プロジェクトって感じで、ビートルズの『リヴォルヴァー』の全曲まるごとカヴァー・アルバムみたいなやつもリリースしていたけど、さすがにあれは枚数には数えていないのね(笑)。

今回は全15曲、全長31分。ニュー・メタルからアコースティックものまで大きな振り幅で奔放に行き来していた『ディレッタント』ほどではないものの、今回もまた多彩な音楽性を盤上に無邪気にぶちまけた感じの仕上がりになっている。

60年代サイケ・ポップ的なテイストから、70年代パワー・ポップ、90年代のローファイ系、近年のベッドルーム・ポップっぽいアプローチまで、今回もめくるめく振り幅。サイモン&ガーファンクルの名曲のタイトルをもじったような「ジ・オンリー・リヴィング・ゴイ・イン・ニューヨーク」とか、もろ初期ビートルズって感じの「アイ・フォール・イントゥ・ハー・アームズ」とか、コーラスワークにビーチ・ボーイズ以降の西海岸の伝統を感じさせる「アクロス・ザ・USA」とか、ベートーヴェンのメロディをそのまままるごとパックリいただいた「コーク・ゼロ」とか、楽しい楽しい。

もともと高めの歌声を曲によってはさらに思いきりピッチアップして、まるで女の子のような…というか、ヘリウムガスで声を変えたみたいな感じにあえてシフトしちゃっているところは、なんとも今どきっぽいかな。

なんだろう、この憎めない感じ(笑)。フィジカルはどうやらヴァイナルのみ。そこもいいっすね。

MTV
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