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Disc Review

Carry Me Home / Mavis Staples & Levon Helm (Anti-)

キャリー・ミー・ホーム/メイヴィス・ステイプルズ&リヴォン・ヘルム

リヴォン・ヘルムとメイヴィス・ステイプルズ。

かつてザ・バンドのオリジナル・メンバーのひとりとしてアメリカン・ロックの屋台骨をがっちり支えたドラマー&ヴォーカリストと、ステイプル・シンガーズのリード・シンガーとしてゴスペル・ソウルの発展に大きく貢献したリジェンド。この二人といえば、どうしたって思い出すのは1978年に公開された映画『ラスト・ワルツ』における「ザ・ウェイト」での白熱の共演シーンなわけだけれど。

あのとき以来の良き友人どうしだという二人は、2011年6月、再び夢の共演を果たした。そのときのライヴ・セッション音源がついに公式リリースされた。それが本作『キャリー・ミー・ホーム』だ。中盤で歌われるステイプル・シンガーズのレパートリー「ジス・メイ・ビー・ザ・ラスト・タイム」。これが最後かも。と、そんな曲タイトルが妙に、くる。響く。残念なことに、これが二人にとって本当のラスト・タイム、最後の共演セッションとなってしまったのだから…。

ご存じの通り、リヴォンは1998年に咽頭癌を宣告され、以降、長い闘病生活に。一時は話すことすら困難だったようだけれど、少しずつ体調を回復。歌声も取り戻し、やがてグラミー賞を獲得するような傑作ソロ・アルバムも数作リリースできるまでになった。2004年からはリヴォンが米国ウッドストックの地に所有していたスタジオ“ザ・バーン”(かつてのベアズヴィル・スタジオ)に観客を迎えての定期的なジャム・セッション“ミッドナイト・ランブル”もスタート。ライヴ・シーンにも復帰した。

そんなセッションにメイヴィスと彼女のバンドを招いた2011年6月のライヴ音源が今回、世に出たわけだ。驚いた。なんでこんなすごいものが10年以上お蔵入りしていたのやら。リヴォンが闘病の末、71歳で亡くなったのは2012年4月だから。ある意味、最晩年の貴重なレコーディング・セッションのひとつということになる。

リヴォンのバンドの顔ぶれは、リヴォン(ドラム)、娘さんのエイミー・ヘルム(コーラス)、テレサ・ウィリアムス(コーラス)、音楽ディレクターもつとめるラリー・キャンベル(ギター、マンドリン)、バイロン・アイザックス(ベース)、現ウェイト・バンドのジム・ウィーダー(ギター)とブライアン・ミッチェル(キーボード)。そこに4管ホーン・セクションが加わる。メイヴィスのバンドのほうは、近年のメイヴィス・サウンドの要でもあるリック・ホームストロム(ギター)を筆頭に、ジェフ・タームズ(ベース)、スティーヴン・ホッジズ(ドラム)というギター・トリオに、この時点では健在だった姉のイヴォンヌ・ステイプルズ(コーラス)、ダニー・ジェラード(コーラス)、ヴィッキー・ランドル(コーラス)の3声コーラス。

この2バンドが合体しているのだから。これはすごい。レオン・ラッセル&ザ・シェルター・ピープルとか、デラニー&ボニー&フレンズとか、エルヴィス・プレスリーの1969年以降のライヴ・バンドとか、あの辺をも想起させるむちゃくちゃ魅力的なラージ・アンサンブルだ。まさに南部のゴスペル・レヴュー。コーラスもふんだんで、ザ・バーンがまるで教会になったかのよう。曲によってはホーン・セクションを従えてフィドルとエレクトリック・ギターとピアノがバトルを繰り広げていたりして。とんでもなく極上のカントリー・ソウル感覚。

選曲も泣ける。

カーティス・メイフィールドの「ジス・イズ・マイ・カントリー」から、ダイナ・ワシントンなどでおなじみの「トラブル・イン・マインド」、アカペラで歌われるゴスペル・スタンダード「ファーザー・アロング」、ニーナ・シモンの「自由になりたい(I Wish I Knew How it Would Feel to Be Free)」、リヴォンも2009年にカヴァーしていたステイプル・シンガーズの「ムーヴ・アロング・トレイン」、やはりステイプルズの曲ながらのちにローリング・ストーンズがパクったことでもおなじみの前出「ジス・メイ・ビー・ザ・ラスト・タイム」、ボブ・ディランのゴスペル期を代表する「ガッタ・サーヴ・サムバディ」、そして映画『ラスト・ワルツ』での共演パフォーマンスも素晴らしかったザ・バンドの「ザ・ウェイト」まで。さまざまな形で神とコネクトした楽曲がずらり並んでいる。

それらを無敵の大編成バンドを従え、メイヴィスが持ち前の深く豊かな歌心をもってぐいぐいドライヴする。このとき彼女は72歳だったはず。すごい。深すぎる。リヴォンはこのとき71歳で。病気のこともあり、もうほとんど歌えなくなっていたのはもちろん残念なのだけれど、ラストの「ザ・ウェイト」ではひと節、枯れまくりの歌声を絞り出してくれていて。これがまた泣ける。しみる。

もう昔のようには歌えなくなっていたかもしれないけれど、リヴォンがその場に確かに存在して、唯一無二のグルーヴを提供しているという事実が、メイヴィスを、そしてバックアップするすべてのミュージシャンを奮い立たせている。一聴すればわかる。リヴォンとメイヴィス。神々しすぎる。

今回のリリースに向けて、メイヴィスがコメントをしている。「リヴォンはあの週、とても元気だった。とてもハッピーだった。美しい心も、外見も、昔のままだった。私たちは何度もハグして、手を握って。あれが最後になるなんて。でも、私の心にはこれからもリヴォンがいる。どこへ行くにも彼を連れて行く。今も彼の姿が見える。そしていつか、私たちはまた出会うの…」。

この、宝のようなライヴ音源が発掘リリースされたことに、心から感謝します。

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