Disc Review

Combat Rock + The People’s Hall (Special Edition) / The Clash (Sony Music)

コンバット・ロック+ザ・ピープルズ・ホール(40周年記念盤)/ザ・クラッシュ

始まりますねー、『ストレンジャー・シングス』のシーズン4。やばい。パート1の5話の配信が今週の金曜日、5月27日で。パート2の4話が7月1日。冒頭8分間の映像というのも先行公開されちゃって。もう楽しみで、楽しみで。

2019年のシーズン3のときは早々とサウンドトラック・アルバムを本ブログでも紹介したり、ロビン役で出ていたマヤ・ホークが翌年リリースしたアルバム『ブラッシュ』(むちゃくちゃいいアルバムだったなぁ…)も取り上げたり。

ご存じの通り、『ストレンジャー・シングス』の時代設定は1980年代。舞台は米インディアナ州の架空の町ホーキンス。てことで、劇中、これでもかとエイティーズの文化が登場してくる。もちろん音楽もふんだん。ジョイ・ディヴィジョン、TOTO、ニュー・オーダー、バングルス、ハワード・ジョーンズ、マドンナなどなど。

でも、そんな中でもっとも印象深く使われていたのが、シーズン1と2で重要な役割を果たしていたザ・クラッシュの「ステイ・オア・ゴー(Should I Stay or Should I Go)」。この曲のイメージが個人的にはものすごく強い。『ストレンジャー・シングス』と言えばクラッシュ、みたいな。というわけで、『ストレンジャー・シングス』の新シーズンが到着する、まさに絶妙のタイミングで「ステイ・オア・ゴー」が収録されていたクラッシュのアルバム『コンバット・ロック』のエクスパンデッド・エディションが出るという、これもまた神の采配なのでありましょうか。

いや、まあ、そんな大げさなことではなく。このアルバム、オリジナル・リリースが1982年なので。まさに発売40周年。『ストレンジャー・シングス』公開に合わせてではなく、40周年のほうを祝う拡張エディションだ。当たり前だけど(笑)。さらに言えばクラッシュも今年でデビューして45年。初来日から40年。ジョー・ストラマー没後20年。周年まみれ。記念盤、出さないとね。

てことで、『コンバット・ロック+ザ・ピープルズ・ホール(40周年記念盤)』。クラッシュはこの時期の前後、ジョー・ストラマーが謎の失踪劇を演じてみたり、トッパー・ヒードンがドラッグ問題でクビになったり、ミック・ジョーンズが脱退したり…。ゴタゴタしまくり。モメまくり。いちおうこの後、1985年にクラッシュ名義でアルバム『カット・ザ・クラップ』をリリースしてはいるものの、実質的ラスト・アルバムは『コンバット・ロック』だった。

というわけで、『コンバット・ロック』。1979年の『ロンドン・コーリング』、1980年の『サンディニスタ!』と強力なアルバムのリリースを重ね、ありがちなパンク・ロック・バンドとはひと味違う幅広さ・多彩さをシーンに思い知らせてきたクラッシュが、そうした持ち味をさらにキャッチーな形で盤面に刻み込んだ1枚だったという感じ。ニューヨーク・パンクは好きだったけどロンドン・パンクには今ひとつ入り込めずにいたぼくのような者ですら、まじ、クラッシュはいけた。クラッシュとジャムには思いきりハマった。

前述「ステイ・オア・ゴー」をはじめ、当時日本のFMでもよくかかっていた超キャッチーな「ロック・ザ・カスバ」、クラッシュなりのメロウ感をたたえた「ストレイト・トゥ・ヘル」、微妙にエキゾチックな音像の下、ベトナム戦争で消息不明になっていた元ハリウッド俳優の戦場カメラマンを描く「ショーン・フリン」、突っかかるような2ビートがたまらない「権利主張(Know Your Rights)」…。ファンキーさ、ヒップホップ要素、エスニック色など多彩な音楽性に乱雑に手を伸ばしつつの大暴れ。

ご存じの通り、『コンバット・ロック』というアルバムはもともとミック・ジョーンズ主導の下、『ラット・パトロール・フロム・フォート・ブラッグ』なるタイトルの2枚組LPとしてリリースされる予定で制作が進められていたのだけれど。あれこれバンド内でもめまくり、最終的には外部からグリン・ジョンズをプロデューサーとして招き入れて1枚ものへと再構築された。

なもんで、今回の周年記念エディション、2枚組で出るというニュースを目にしたときは、この『ラット・パトロール…』がついにオフィシャル・リリースされるのかと思いきや。さすがにそんなことはなく。そっちはブートで聞け、と(笑)。今回の2枚組の内訳としては、まずディスク1がそのオリジナル・アルバム全12曲の最新リマスター・ヴァージョンだ。

とはいえ、そうした経緯で1枚組ものへとキュッと凝縮されたものの、この時期のクラッシュはかなりの量の音源を録音していたわけで。今回、オリジナル・アルバムと抱き合わせにされたディスク2の『ザ・ピープルズ・ホール』のほうには、レア・トラックスがさらに12曲収められている。アルバム・レコーディングの拠点をニューヨークのエレクトリック・レディランド・スタジオへと移す前、ロンドンのザ・ピープルズ・ホールで録音された初期ヴァージョンやアウトテイク、インストゥルメンタルの未発表トラック、フューチュラ2000やマイキー・ドレッドとの共演曲それぞれの別ミックスなど、聞きものがふんだん。

CD2枚組の他に、LP3枚組(Amazon / Tower)というフォーマットもあり。オリジナル・アルバムのみのグリーン・ヴァイナル仕様(Amazon / Tower)、さらには日本盤LPのみ透明のクリア・ヴァイナル仕様(Amazon / Tower)ってのも。

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