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Disc Review

FEEL FLOWS: The Sunflower & Surf’s Up Sessions 1969-1971 / The Beach Boys (Capitol/Universal)

フィール・フロウズ:サンフラワー&サーフズ・アップ・セッションズ1969〜1971/ザ・ビーチ・ボーイズ

本来ならば7月発売予定だった『フィール・フロウズ:サンフラワー&サーフズ・アップ・セッションズ1969〜1971』。ビーチ・ボーイズの人気低迷期、古巣のキャピトル・レコードから新天地ワーナー/リプリーズ・レコードに移籍して制作した2枚の“隠れ傑作”アルバム『サンフラワー』と『サーフズ・アップ』の時期の試行錯誤を集大成したものだ。ようやく出ました。

『サンフラワー』は米国では1970年リリースだったので、去年、何か50周年企画があるかなと期待していたのだけれど、特に何もなく。ちょっと脱力していたら、翌1971年リリースの『サーフズ・アップ』との抱き合わせで50周年企画が実現。なるほど、この手があったか。よかった。うれしい。

繰り返しになるけれど、この時期、1969〜71年のビーチ・ボーイズ人気は最悪だった。底だった。1967年に『SMiLE』の伝説的な発売中止事件があって以来、中心メンバー、ブライアン・ウィルソンの体調は思いきり不安定に。とはいえ、他のメンバーの成長ぶりなどもあって、クリエイティヴィティ面に関してはまず問題なしだった。いい曲は次々生まれていた。

にもかかわらずレコード・セールスは低迷。シングルを出してもほとんどトップ40入りを果たせずじまい。ライヴ・シーンではそれなりに人気を維持し続けてはいたものの、ビーチ・ボーイズの活気と創造性は衰えていないと世の中に向かってなんとかアピールできる新しいアルバムを作ることが急務だった。

そんな時期のオリジナル・アルバムが『サンフラワー』と『サーフズ・アップ』だった。新レコード会社からの厳しい要求を受けて幾度となく内容を見直したり、アルバム・タイトルを何度も変えたり…。迷いに迷いながらのレコーディングが続けられた。そのせいで、この時期のビーチ・ボーイズは本当にたくさんの未発表トラックを生み出した。

そんなふうにして生まれたレア音源群は事あるごとに、たとえば1993年の『グッド・ヴァイブレーションズ・ボックス』や、1998年の『エンドレス・ハーモニー』、2013年の『メイド・イン・カリフォルニア』など、マニアックなコンピレーションに収められて小出しにされてきたのだけれど。それらを一気に集大成し、さらなる初出音源なども加えて編纂されたのが、今回出た『フィール・フロウズ』というわけだ。

『サンフラワー』の国内盤が日本で出たのは確か1971年のアタマだったと思う。そういう意味では、日本のビーチ・ボーイズ・ファンにとっては今年が50周年でOK。問題なし。中学生時代、1969年に初めてビーチ・ボーイズの魅力のとりこになった、ちょっと遅れてきたファンであるぼくにとって、このアルバムこそがリリースを心待ちにして、発売と同時に入手した初めてビーチ・ボーイズの新譜でもあった。そういう意味でもとてつもなく思い入れの深い1枚だ。

もちろん、米国同様、日本でもビーチ・ボーイズ人気はどん底だった。学校に行っても誰ひとりビーチ・ボーイズのことなんか気にしておらず、仕方なく帰宅後、ひとり寂しく部屋で彼らの豊かなハーモニーに身をまかせるしかなかった、みたいな。なんとも孤独なシチュエーションがまたぼくのビーチ・ボーイズ愛をいっそう深めてくれた。鍛え上げてくれた。増幅させてくれた。

しかも、『サンフラワー』の国内盤LPのライナーノーツには、ビーチ・ボーイズのキャリアを詳細に記した年表と、シングル、アルバムそれぞれのディスコグラフィが付いていた。もちろん、今の時代に見返すと間違いや抜けが散見されるものではあったが、当時ここまで詳しくビーチ・ボーイズの足取りをたどった資料は日本にはなかったと思う。このライナーを常に参照しながら、ぼくのビーチ・ボーイズ再発見の旅が始まった。同じ体験をなさった同世代ファンの方も多いことと思う。日本のビーチ・ボーイズ・ファンにとって、『サンフラワー』はそういう意味でのスタート地点としても重要な1枚だった。

当時の最新録音技術を駆使して記録された絶妙のコーラス。そして、けっして衰えていなかった豊潤な曲作りのセンス。その時期、プロデューサーというよりオブザーヴァー的な立場をとることが多かったブライアンも、新レコード会社、ワーナー/リプリーズのモー・オースティンやレニー・ワロンカーの熱心な働きかけを受けて現場に復帰。新たなテクノロジーとの出会いにも触発され、充実した作品を提供していた。デニス・ウィルソン、アル・ジャーディン、ブルース・ジョンストンら他のメンバーたちのソングライターとしての成長ぶりも存分に発揮されていた。

そんな思い出深い『サンフラワー』と、その次作『サーフズ・アップ』の時期を振り返るアンソロジー・ボックス・セット。2CD版、5CD版など、いくつかのフォーマットで出て。その両者で1曲、「スージー・シンシナティ」だけそれぞれ別ミックスで収められていたり、油断ならないのだけれど。

とりあえず5CD版を基本に紹介しておくと。CDのディスク1が『サンフラワー』のオリジナル・アルバムの最新リマスターに当時のライヴやシングル曲、未発表曲などレア音源を加えたもの。

ディスク2も同様に『サーフズ・アップ』のオリジナル・アルバムのリマスター+ライヴ+レア音源。のちに3曲メドレーの組曲「カリフォルニア・サーガ」の1曲として、3拍子の新アレンジで再録音され、1973年のアルバム『オランダ』に収められることになるマイク・ラヴ作品「ビッグ・サー」の初期ヴァージョンとか、ドン・ゴールドバーグ作の「スウィート・アンド・ビター」とか、『SMiLE』色濃い「マイ・ソリューション」とか、ブート・マニアにはおなじみ「シーズン・イン・ザ・サン」とか、その辺が詰め込まれています。

ディスク3が『サンフラワー』の、ディスク4が『サーフズ・アップ』の、それぞれ未発表セッション・トラック集。デニスの「ベイビー・ベイビー」「イッツ・ア・ニュー・デイ」、スプリングのレパートにリーとしてもおなじみのフロイド・タッカー作「アウェイク」とかが聞ける。アカペラ・ミックスも多し。

で、ディスク5がこの時期のさらなる未発表音源集。「サーフズ・アップ」の1971年のリメイク・トラックにブライアン・ウィルソンのオリジナル歌唱を乗せたトラックとか、次作『カール&ザ・パッションズ』収録曲の初期ヴァージョンとか、実に興味深い。必殺の「カドル・アップ」の別タイトル初期ヴァージョンなどもあり。

全135トラック中、未発表音源が108。煩悩の数だけレア音源がある、と。なんか、深いね。2CD版はそのハイライトなのだけれど、前述の通りミックス違いが1曲だけあったりして。もう…。正直、ずいぶんととっちらかった仕上がりではあるものの、いやいや、出ただけありがたい。輸入盤は2CDも5CDも本日発売。国内盤は2CD(Amazon / Tower)が今日、輸入盤国内仕様の5CD (Amazon / Tower)が9月1日発売。光栄にも国内盤のライナーを書かせていただいてますが、今回は字数の制限がけっこうきつくて、あまり詳細なところまで突っ込めませんでした。とても心残りです。

その他、ユニバーサルのWEBストア限定のカラー・ヴァイナ4枚組もあって、ぼくはこれも注文しているのだけれど、こちらはさらに遅れて9月10日発売だとか。早く届かないかな。ブラック・ヴァイナルでよければ、LP4枚組(Amazon / Tower)、LP2枚組(Amazon / Tower)があり。こちらは輸入盤のみで、今日発売になったみたい。

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