Disc Review

Blues in the Mississippi Night / Memphis Slim, Big Bill Broonzy, Sonny Boy Williamson (Lomax Archives)

BAQ35QTNSPPGN43WTZLE6SJVS4

ブルース・イン・ザ・ミシシッピ・ナイト/メンフィス・スリム、ビッグ・ビル・ブルーンジー、サニー・ボーイ・ウィリアムソン

伝説のブルース・コンピ、再発されましたよ。

1947年、生涯をかけてルーツ・ミュージックの記録と研究に邁進した民俗学者、アラン・ローマックスがニューヨークのタウン・ホールで“ミッドナイト・スペシャル”なるコンサート・シリーズを催して。そこに出演したビッグ・ビル・ブルーンジー、メンフィス・スリム、サニー・ボーイ・ウィリアムソンという3人のブルースマンを、コンサート翌日、デッカ・レコードのスタジオへと連れて行ってレコーディングを行った。

ローマックスは3人に、歌うだけでなく、ブルースについて語り、アメリカにおける黒人をめぐる不平等について率直に話すよう促した。その結果、生まれたのが本コンピ『ブルース・イン・ザ・ミシシッピ・ナイト』。そこで彼らは、ジム・クロウ法による激しい差別や搾取、暴行が横行するミシシッピ・デルタ地域での暮らし、家賃のこと、食費のこと、ギャンブルのこと、酒のこと、女性とのトラブルのこと、教会のこと、徴用労働キャンプや臨時作業班、道路建設現場、採石場、刑務所農場での実態などを率直に語り、ブルースという音楽の起源はそうした地域に根ざすアフリカ系アメリカ人たちの血と汗と涙の中にこそあるのだということを明確に示してみせた。

“ブルースってのは一種の復讐なんだ。言いたいことがあるとき、それをぶちまけたいという思いなんだ”とか、“白人は黒人を「悪の種」と呼ぶんだ”とか、“同胞と争う黒人は「バッド」と言われるが、白人と闘う黒人は「クレイジー」と呼ばれる”とか…。このインタビューに関しては翌年、雑誌『コモン・グラウンド』に、あくまでもフィクションという体で掲載されたりもしたようだけれど、まだ時代が時代だっただけに大いに物議を醸したらしい。ということで、結局、音源自体の発売はあえなく見送り。音盤化が初めて実現したのは1957年、イギリスのパイ・レコードを通じてだったようだ。

とはいえ、まだ激しい差別の時代まっただ中。アーティストとその家族を守るため、ローマックスは彼らの本名を明記せず、ナチェス(ビッグ・ビル・ブルーンジー)、シブ(サニー・ボーイ・ウィリアムソン)、リロイ(メンフィス・スリム)という偽名を使わなければならなかったほど。ほんといろいろ根深い…。まあ、実際は演奏中とか会話中に“サニー・ボーイ”とか“ビッグ・ビル”とか“メンフィス・スリム”とか呼び合っていたりするのだけれど。

ちなみに、これ、日本でもリリースされていたらしく。アルバムの邦題は『ブラック・エレジー(ブルースの誕生)』。解説は油井正一先生でした。

と、そんな臨場感に満ちた圧倒的な歌と語り集。アメリカでも1959年になってようやくユナイテッド・アーティスツがレコード化して。その後、1990年にライコディスクが、2003年にラウンダーが、それぞれCD再発してきたのだけれど。このほど、ある意味、本家のローマックス・アーカイヴズからLPでの復刻が実現。ヴァイナルとしてはUA盤以来のリリースということになるみたい。

最新デジタル・リマスター。アナ・ローマックス・ウッドによる最新ライナー、スティーヴ・ジョーダンの序文なども含む20ページのブックレット付き。「人生と真実を愛するすべての人に、この録音を聴いてほしい」というジョーダンの言葉がしみます。

Resent Posts

-Disc Review
-,