
アイ・マスト・ビー・ドリーミング/アラバマ・シェイクス
なんか、これをずっと待ってた気がする。
アラバマ・シェイクス。『サウンド&カラー』が2015年のリリースだから、11年ぶり。いやー、もう戻ってこないんじゃないかと恐れておりました。
いや、もちろんブリタニー・ハワードのソロ活動も、他アーティストとのコラボも、それはそれで強力だったし。しびれたし。でも、やっぱりバンドとしての音が聞きたかったというか。ぼくの場合、それだけ2012年のファースト・アルバム『ボーイズ&ガールズ』の音にいまだ未練たらたらのめんどくさいファンだったりするわけですが。
2024年12月、地元アラバマ州タスカルーサでのサプライズ・ライヴがあって。それを経てついに再集結! オリジナル・ドラマーのスティーヴ・ジョンソンは不在で、ブリタニー、ヒース・フォッグ、ザック・コッカレルのトリオ編成での復活だ。
プロデュースはバンド自身と、旧知のショーン・エヴェレット。録音はナッシュヴィルのサウンド・エンポリアムとブラックバード。『サウンド&カラー』から引き続き、という感じのサイケデリック・ソウル/ロック路線の流れにある1作って感じかな。ブリタニーの表現力の深まりには改めて圧倒されるし、けっして強く存在を主張しすぎないヒースとザックのプレイも的確。とともに、この人たち、今のアメリカに対してちゃんと怒っていて。そこが今作の最重要ポイントかも。
オープニング、なんともサイケで不穏なグルーヴに乗ってスタートする「ティー・タイム」から、いきなり“もしも私が軍隊を持っていたら/彼らを故郷へと率いていく/川へ/野の花とソウルのある場所へ…”と静かに、しかし毅然と歌い出し、やがて“太陽の下、この地球上のすべてが/この歌の中にある/そこでは戦いは血で勝つのではなく/「ノー・モア」と告げる勇気によってこそ勝つの”とメッセージする。
終盤の「アメリカン・ドリーム」って曲でも、“私たちは同じものを求めていると思っていたのに/夢でも見ているのかしら/アメリカン・ドリーム/平和、愛、幸せ/叶わぬ夢/チャンス、自由/夢でも見ているのかな/私たち、いったい何をしているんだろう…”と歌い出して、以降じわじわと、噓まみれの政権のこと、ホワイトハウスの悪趣味な改修のこと、銃の氾濫のこと、環境問題のこと、低賃金のことなどを歌い綴って。もう寝たくなる、でももう夢は見続けられない…みたいな。ギル・スコット・ヘロンの精神がここに生きている気がする。
先行でリリック・ビデオとかも公開されていた「アイ・フィール・ホープ・カミング」って曲にもぐっときた。こちらはカーティス・メイフィールド、ソロ初期の精神が蘇ったかのような感じで。“この場所を変えるには祈りだけでは足りない/「自分にできるかどうか、わからない」という言葉を何度も繰り返さなきゃいけない/やつらは私たちを打ちのめし正気を失わせる/私たちを病ませ怠け者呼ばわりする/戒厳令なんていらない、きれいな空気が欲しい/もともと存在しない敵なんていらない”とソウルフルに訴えて、“希望が近づいてくる/愛が近づいてくる”と、オバマ時代の理想を繰り返した後、“だから踏ん張ろう、しっかり根を張ろう”と歌う。
もちろん、そういうメッセージ・ソングばかりではなく、「イージー」みたいに今ここにある小さな幸せを慈しむような曲もあるし。
シェイクス、かっこいい。

