
1970〜1971/ラビ・シフレ
本ブログでは2020年、英エドセル・レコードが編纂した9枚組ボックスセット『マイ・ソング』というやつを紹介したことがあったけれど。
そんなラビ・シフレの初期2作のオリジナル・アルバム、セルフタイトル・デビュー・アルバム(1970年)とセカンド『ザ・シンガー・アンド・ザ・ソング』(1971年)に加え、『マイ・ソング』ボックスにも収録されていた同時期のシングルB面曲とかレア曲を詰め込んだボーナス・ディスク…という3枚組セットが新たに出ました。
この人の場合、一般的には1972年のサード・アルバム『クライング・ラフィング・ラヴィング・ライイング』に収録されていた「イット・マスト・ビー・ラヴ」がヒットしたあたりで知名度が上がったので、つまり本3枚組はそれ以前の作品群ということになる。
後年、ジェイ・Z、エミネム、カニエ・ウェストらがシフレの楽曲をサンプリングしたりして、いわゆるフリー・ソウルとか、フォーキーなR&Bとか、そういったシーンで再評価の気運が高まることになるわけですが。この初期2枚、まあ、ぼくも以前のエントリーに書いた通り、オリジナル・リリースからは5年くらい遅れて聞いたわけで、あまり大きなことは言えないものの、この柔軟で、瑞々しい感触がいいんだよなぁ…。
この初期2作は、ハリー・ニルソン、ランディ・ニューマン、ローラ・ニーロといったシンガー・ソングライターと共鳴する形で当時ぼくの耳を静かにとりこにしたものだ。特にニルソンの「メイビー」やビージーズの「ワーズ」のカヴァーも含むファーストは、だいぶ遅れて接することになったタイム・ラグを埋める勢いで1970年代半ば、大いに聞きまくったものだ。
ファーストのオープニングを飾っていた「トゥー・レイト」のようなクールな曲調も、ラストに収められていた「ラヴ・ソング・フォー・サムワン」みたいな優しくオーガニックな楽曲も、バカラックっぽい「サムシング・オン・マイ・マインド」みたいな曲も、辛辣な社会的メッセージが託された「アイ・ドント・ノウ・ホワッツ・ハプンド・トゥ・ザ・キッズ・トゥデイ」のような曲も、自作曲もみんな素晴らしく。アコギの腕前も最高で。
セカンドは全曲オリジナル。オープニングを飾る「ゼアズ・ナッシング・イン・ザ・ワールド・ライク・ラヴ」とか、出会い系アプリだか何だかを通じて近年一気に評価が高まった弾き語り曲「ブレス・ザ・テレフォン」とか、ファンキーな「ロッキング・チェア」とか、キャッチーな曲調と裏腹にきつめの歌詞が印象的な「サンキュー・ラッキー・スター」とか、こちらも名曲ぞろい。
ファースト全部とセカンドの5曲でプロデュースとアレンジを手がけていたイアン・グリーンが、弦やら木管やらを的確に配しつつバロック・ポップっぽい感触を醸し出していて。ぐっときます。今やTikTok/インスタ世代の間でしっかり再評価もなされた感じのラビ・シフレですが。この機会に、特に初期作品群のさらなる再評価を、ぜひ。


