Disc Review

Band of Joy / Robert Plant (Rounder)

RPBOJ

バンド・オヴ・ジョイ/ロバート・プラント

「したまちコメディ映画祭~萩原健太の音楽と笑い」へのご来場、ありがとうございました。谷啓さんへの追悼も含めて、みなさんと爆音でアメリカのくっだらない冗談音楽を聴いたり、マキタスポーツさんのごきげんなパフォーマンスを楽しんだり、劇場公開のなかった微妙な音楽コメディ映画2本を大画面で見たりできて、ぼくも本当に楽しかったです。

で、明日は毎月恒例、CRTです。「帰ってきたナイアガラまつり」。こちらでも、もちろん爆音で谷さんを追悼するパートを設けようと思っています。Twitterでも書いたことなんですが、かつて谷啓さんとは一緒にFM番組を作らせていただいたことがあって。谷さんが一人で多重録音した曲とかたくさん聞かせていただいたり。谷さんが好きなアメリカの冗談音楽について語っていただいたり。笑いに関してはもちろんですが、音楽に対しても貪欲で、勉強熱心で。本当に感激したものです。

もうひとつ告知なんですが。10月、ぼくのエルヴィス講座第2回でお世話になるお茶の水Woodstock Cafeで、なんとレイチェル・ファーロのコンサートがあるそうです。70年代にジョン・サイモンやエリック・ワイズバーグ、アーレン・ロス、ハーヴィ・ブルックスなどウッドストック派のミュージシャンたちのサポートのもと、素晴らしいアルバムを2枚残した女性シンガー・ソングライター。10月の5日(火)と6日(水)、それぞれ20人限定という夢のようなシチュエーションでのライヴだそうです。詳細はこちらをご覧ください。

というところで、今回のピック・アルバム。ロバート・プラントです。レッド・ツェッペリン・ファンにとってどうなのかはわからないけれど、プラントさんを中心に集結したこのバンド、われわれアメリカーナ系音楽ファンにとっては間違いなく衝撃のスーパー・グループ。アリソン・クラウスと組んで制作された07年の傑作『レイジング・サンド』のリリースを受けて行われたコンサート・ツアー“レイジング・サンド・レヴュー”にも参加していたバディ・ミラーがバンマスとなって、パティ・グリフィン、ダレル・スコット、バイロン・ハウス、マルコ・ジオヴィーノら名うてが勢揃い。プラント名義ではあるものの、音のほうはプラント一人が主役で他がバック・バンドというありがちな手触りではない。プラントだけでなくグリフィン、ミラー、スコットもヴォーカル・パートを分け合いながら、柔軟で躍動的なバンド・サウンドを繰り出してみせます。

取り上げている曲も実に興味深い。まずはロス・ロボスのカヴァーでスタート。続いて、リチャード&リンダ・トンプソン作品。ライトニン・ホプキンス作品に触発されたと思しきブルース。ミネソタのスロウコア・バンド“ロウ”のカヴァー。バーバラ・リンのテキサスR&B。ケリー・ブラザーズの南部ソウル・バラード。再びロウのカヴァー。トラディショナル・マウンテン・ソング。タウンズ・ヴァン・ザント作品。ウィリー・ネルソンも近作でバディ・ミラーをバックに従えてカヴァーしていたトラディショナル・ブルース。そしてセオドア・ティルトンが19世紀に詠んだ詩『王様の指輪』を引用したプラント版トーキング・ブルース…と、アメリカーナ色を基調に、ちょこちょこ英国風味をまぶした全12曲。

ティルトンを引用したアルバムのラスト曲は、どんな富も名声も過ぎ去っていくものだという内容。ここにツェッペリンでのプラントの数年間を二重写しにすることはたやすい。再結成ツェッペリンでの活動継続を断ってこのソロ・プロジェクトに取りかかったことや、ツェッペリン結成以前に在籍したサイケデリック・フォーク・バンドの名義を今回の新バンドに冠したことなど、すべてがやけに象徴的。『レイジング・サンド』の成功がこの人に与えた自信は、本当に大きなものだったんだな、と再確認です。

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