Disc Review

Over the Rainbow: The American Standard EP / James Taylor (Fantasy/Concord)

オーヴァー・ザ・レインボウ:ジ・アメリカン・スタンダードEP/ジェイムス・テイラー

それにしても、今年、本ブログでもやはり新型コロナウイルス禍のことに触れることがどうしても多くて。ちょっと以前のエントリーを流し読みしてみたら、今年の2月ごろからえんえん“ちゃんとご飯を食べて、適度に運動して、よく寝て、きちんと手洗いして、うがいして、よく笑って、いい音楽聞いて、免疫力を低下させないようお互い気をつけましょう…”みたいなことばかり繰り返し書いていた(笑)。

仕方ない。こんな日々、これまで誰も体験したことがなかったわけで。コロナウイルスという、いまだ対抗策すらない、目に見えぬ敵のことを一瞬でも考えずに時をやり過ごすことなんかできるはずもなく。

そんな中、音楽ファンであるぼくは当然、音楽に救いを求めながら毎日を過ごしてきた。救いの求め方も、人それぞれ。あえてアゲアゲな気分にしてくれる音楽を選び取る人もいるだろうし、ゴスペル的なものに向かう人もいるだろうし、アンビエントな音像に包まれたい人もいるだろうし。

ぼくの場合は、この非常時だからこそ、古くから変わることなく息づく“歌”の生命力というか、時代性などにしばられない音楽の普遍性みたいなものに改めて心ときめかせた1年だった気がする。年齢を重ね、ポップ音楽リスナー歴も半世紀超え…みたいな地点に達してみて、もともと新しいだの古いだの、狭量かつ身勝手な価値観にとらわれることのバカバカしさを身にしみて思い知るようになってきていたのだけれど。

そこにこの非常事態。こうなってくると、さらにそんな思いは強まって。音楽の不変さ、普遍さ。それらにこそ救われるというか。落ち着くというか。泣けるというか。そういう気分になっております。と、懲りずにまた日々の雑感を綴っているわけですが。それもあって、以前も書いたことの繰り返しになるけれど、12月8日、CRT毎年恒例の忘年会企画としてお届けするヨシンバのスペシャル・ライヴ。こいつが本当に楽しみなのだ。

みなさんもよろしければ、いつものように、PCの方は右側サイドバー、スマホの方は下方のCRTインフォをご参照のうえ、ぜひチェックしてみてください。ヨシンバ、最高だからなぁ。メンバーの3人、吉井くん、西村さん、朝倉さんはもちろん、サポート・ゲストの隅倉さん(初恋の嵐)や中森さん(Hicksville)も含めて、ひとつのバンドでひとりのシンガー・ソングライターのような感じもあって。

自分たちが生まれたころ、あるいは生まれる以前の音楽の記憶みたいなものまで身体にしたためつつ、きっちりと今の時代に呼吸させる、という、こう、エヴァーグリーンなようでいてコンテンポラリーなたたずまいがなんとも素敵なバンドだなと思う。完全無観客での配信ライヴとなりますが、ヨシンバの場合、逆におうちでパーソナルな環境の下、じっくり、リラックスして味わいたい音楽って感じもするので、これはこれで楽しいのではないか、と。そういえば、なにやら必殺のカヴァー曲も披露してくれるようで。中森さんのバリトン・ギターがうなるらしいです。おー…。

で、ぼくをはじめ、レココレ新編集長の祢屋くん、そしてノージの3人もトークで加わって、音楽雑談が大好きなメンバーのみなさんとともに今年のベスト・アルバムは何か、あれこれ話し合うお楽しみコーナーとかもお届けする予定。そちらもお楽しみに。

たぶんそこに持って行くに違いない1枚が、今年のアタマ、本ブログでも紹介したJT、ジェイムス・テイラーの『アメリカン・スタンダード』。詳しい思いは以前のエントリーを読んでいただけるとうれしいのだけれど。これも個人的には今年ならではの感慨がある1枚というか。

ぼくがJTのことを好きになったのが1970年だから、あれから50年という歳月が流れて。で、そんなJTが、彼がデビューするよりもずっと昔に生まれた、いわゆる“グレイト・アメリカン・ソングブック”系のスタンダード・ナンバーを全編にわたって、自分らしく、しかしけっしてひとりよがりではない、エヴァーグリーンな持ち味を活かしながら丁寧にカヴァーしたアルバムをリリースして。それがこの、不安と無力感に満ちた毎日の空気感をほっと緩めて、ぼくたちの心をやさしく癒やしてくれて…。

こういうのがぼくにとって理想の音楽の在り方なんだなと再確認できた、そんな1年でした。不幸中の幸い的な?(笑)

今日、この流れで紹介するのは、この『アメリカン・スタンダード』の続編というか、追加分というか、そういう感じで去る11月20日に配信されたデジタルEP『オーヴァー・ザ・レインボウ:ジ・アメリカン・スタンダードEP』。収められているのは3曲で。1曲目が1956年のミュージカル『マイ・フェア・レディ』の挿入歌「忘れられない彼女の顔(I've Grown Accustomed To Her Face)」。2曲目が1950年のミュージカル『ピーター・パン』の「ネヴァー・ネヴァー・ランド」。そして、最後が表題曲でもある、ご存じ1939年のミュージカル映画『オズの魔法使』の「虹の彼方に(Over the Rainbow)」。

まあ、本体の『アメリカン・スタンダード』の米ターゲット専売CDとか、日本盤とかを入手した人は、最初の2曲はボーナス収録されていたので、特に新鮮ではないかもしれないけれど。「虹の彼方に」はたぶん今回が初出。珍しくヴァースからきちんと歌われていて。ギターのヴォイシングも素晴らしく。そういえば弟さんのリヴィングストン・テイラーも1970年代にこの歌をカヴァーして泣かせてくれたっけ…。

ああ、この人のことをずっと好きでいられてよかった、そして、新しいだの古いだの、そんな曖昧かつ無根拠な価値観に左右されることなく、いわゆるスタンダード・ナンバーとかをずっと聞き続けてきてよかった、と。改めて音楽の深さ、素晴らしさを噛みしめたくなる仕上がり。たまらんです。

人間の短い一生など軽々と凌駕する、ある種永遠と言ってもいいほど長く深い時の流れを音楽ははらんでいるのだなぁ。マジカルだなぁ。魅惑的だなぁ。そんな癒やしに満ちた思いをもたらしてくれるJTの歌声なのでありました。

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