Disc Review

Capricorn / Eddie 9V (Ruf Records)

カプリコーン/エディ9ヴォルト

2021年リリースの前作『リトル・ブラック・フライズ』を本ブログでも紹介したことがある突貫ヴィンテージR&Bボーイ、エディ9ヴォルトの新作。出ましたー。

タイトルからなんとなく想像できるかもしれないけれど、今回はなんとジョージア州メイコンにあるカプリコーン・スタジオへと出向いての1枚。そうです。1969年に創立され、かのオールマン・ブラザーズ・バンドやマーシャル・タッカー・バンド、ウェット・ウィリー、チャーリー・ダニエルズ・バンド、ボニー・ブラムレットなどが数々の名盤を生み出してきた南部の名門レコーディング・スタジオ。

出身が同州アトランタだけに、エディさんにとっちゃこの伝説のスタジオも、まあ、車で数時間の距離とはいえ、アメリカ国内的にはご近所って感じ。地元アトランタで録音された前作ではアルバート・キングやジミー・リードをカヴァーしたり、マディ・ウォーターズやエルモア・ジェイムスからの影響をストレートに表出したり、ブルース色を強く打ち出していたけれど、メイコン録音の今回はホーン・セクションを含む大編成のバック・バンドを従えてぐっとソウル寄りのアプローチを展開してみせる。

トニー・ジョー・ホワイトばりのスワンプ・グルーヴあり、デュエイン・オールマンばりの粘っこいスライド・ギターがうなるサザン・ロックあり、女性コーラスを前面にフィーチャーしたゴスペルあり、胸しめつけるサザン・ソウル・バラードあり、アコースティック・ギターとフルートがソウルフルに絡み合うメロウなミディアム・シャッフルあり。

「イェラ・アリゲイター」ってオリジナル曲が終わったところで、エディが演奏している“グレートなブラザー”たちに語りかける。“ありがとう! みんな、俺たちは今、歴史をたどっているんだぜ”と。でもって次曲、ボニー・レイットのヴァージョンでもおなじみ、シル・ジョンソンの「旅立つ私 (‘Bout to Make Me Leave Home)」のカヴァーに突入。名門スタジオで高揚している様子が伝わってくる。

ちなみに今回、カヴァー曲はもうひとつ、ボブ・ディランの「入江にそって(Down Along the Cove)」も取り上げていて。それ以外は前作同様、エディさんと彼の兄弟でベースを担当しているレイン・ケリーとの共作オリジナル群だ。今回、自ら得意のギターをあまり披露することはなくソロは他ギタリストにまかせ、ソングライターとして、あるいはフロントを担うリード・シンガーとしての役割により力を注いでいる感じかな。

国内盤(Amazon / Tower)も今月半ばには出るみたい。全11曲。ほぼ3分前後。全長35分。完璧、アナログ盤仕様っすね。もちろんヴァイナル(Amazon / Tower)も出てる。ビデオ・クリップもお古いロック・ファンにはおなじみ、ドイツの『ビート・クラブ』のパロディみたいな仕上がりで。エディさんのオタクぶりに頬がゆるみます。がんばれー。

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