Disc Review

A Little Touch Of Schmilsson In The Night / Harry Nilsson (RCA/BMG Funhouse)

夜のシュミルソン/ハリー・ニルソン

なんだか、うれしい。配給元が東芝EMIからエイベックスに移ったURCレコードの一連の再発盤。エイベックスはこの9月から全リリースに、例のカクタス・デジタル・シールド方式の劣悪コピーガードをかけると発表していたから、当然URCものもそうなっちゃうのかなと悲しんでいたのだけれど。

なんと、これが見事コピーガード回避。素晴らしい。つーか、まだぼくは実際に買っていないので自分で確かめたわけではないです。これ読んで知りました。何がどうなって、誰がどう判断して、こういう事態に至ったのかは全くわからない。でも、立派なことだと思う。CDエクストラ仕様、ばんざい!(笑) 俺は買いますよ。今回、再発される盤は全部すでに持っているものばかりだけどさ。コピーガードを回避してみせた誰かさんの勇気をたたえて、全盤買いに行きましょう。エイベックスにお金出すのは、なんとなく抵抗あるんだけど。

そういえば、つい先日までは国内盤もこれまたカクタス・デジタル・シールドによるコピーガード仕様になると発表されていたローリング・ストーンズのベスト盤。これもコピーガード回避みたいね。こちらは収録曲数が多すぎて、パソコン再生用のへっぽこプレーヤー&へっぽこ音源ファイルを併録するスペースがディスクになくなっちゃった…という、なんとも情けない消極的理由によるもののようだけど。まあ、結果オーライ。これから出るCD、全部収録時間が80分ぎりぎりになっちゃえばいいのに。あるいは、今回のURCもののようにCDエクストラ仕様になるか。

いや、でも、それじゃあまりにもわびしいか。もっと真っ向から、コピーガードなんて醜悪な発想自体が世の中から消えてくれればいいと思う。不況の直中であえぐ企業としてのレコード会社が、ほんの少しでも音楽を愛する者の心を取り戻してくれることを願うばかりです。

とはいえ。現実はなかなかそうもいかないみたいで。エイベックスも相変わらずあくどいショーバイしてるなぁ、と、またあきれてしまった。安室ちゃんの新曲だ。「Wishing On The Same Star」。どの報道を見ても、“作詞作曲にダイアン・ウォーレンを迎え…”とか書いてあって。中には“ダイアン・ウォーレンが書き下ろした新曲”って記述もあったぞ。びっくりだ。ヒットチャート・マニアなら知っている人も多いと思う。これ、1991年にキーディって女性ポップR&Bシンガーが全米86位にちらっとランクさせた曲のごくフツーのカヴァーじゃん。にもかかわらず、大方の報道では“シカゴ、セリーヌ・ディオンらに大ヒットを提供してきたダイアン・ウォーレンが安室にも新曲を提供…”みたいな書き方になっている。まあ、書く側の絶対的な知識不足も責められるべきではあるけれど、そういう書き方をするようにリードした資料をレコード会社側が出しているからこそであって。実際、エイベックスの公式サイトにも、“半年ぶり通算21枚目のシングル。Dian Warrenを作家に迎え壮大なバラードに仕上がっています。”って書いてあった。ウソじゃないんだろうけど。でも、この表現、なーんかずるっこいと思う。ほんと、せこい。カヴァーって隠さないといけないようなことなのか?

ユーザーによく実態がつかめないようにしながら、そーっと危ない仕様のコピーガードCDをリリースし続けている“あの感じ”と、やっぱイメージがだぶるね。品がないね。情緒がないね。醜い。

なんともやさぐれた気分になりつつ。そういうとき、ぼくはニルソンを聞きます。このほど日本でニルソンのRCA在籍時のオリジナル・アルバム14枚がまとめてCD化されて。ほぼ全盤、ボーナス入りだ。うれしい。アメリカではRCA/ブッダが、ヨーロッパではBMGが、それぞれ独自の形で進めていたニルソン再発シリーズだけれど。それ以外にもDCC盤があったり、ブッダを傘下に収める以前の米RCA盤があったり、ややこしくて。それが日本で一本化されたって感じ。もちろん、全盤が愛おしい名作。また、いつ品切れになるかわかったもんじゃないので、なんとかお金を工面して全部入手しておいたほうがいいと思う。ニルソンについては、かつて米RCAが何枚かリマスターCDを出したときに書いた文章があるので、それを参照していただくとして。

今回は、1973年、ぼくが大学受験を前にこればっかり聞きながら受験勉強していたという、実に個人的な思い出盤『夜のシュミルソン』をピックしておきましょう。フランク・シナトラとのコンビネーションでおなじみのアレンジャー/ソングライター、ゴードン・ジェンキンス指揮のフル・オーケストラをバックに、懐かしのスタンダードばかりを淡々と歌い綴った名盤。このアルバムのおかげで、まだ十代だったケンタ少年はロックンロール以前のアメリカ音楽への興味をますます増したのでありましたとさ。

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