Disc Review

HONK / The Rolling Stones (Promotone BV/Universal Music)

Honk

HONK/ザ・ローリング・ストーンズ

久々の全米ツアー“ノー・フィルター・ツアー”の幕開けに合わせてリリースが予定されていたローリング・ストーンズの最新ベスト・アルバム。ミック・ジャガーの手術でツアーが延期になってしまったため、まあ、ミックの完治祈念リリースみたいになってしまいましたが。何はともあれ、2CD、3CD、3LP、4LP、ストリーミング、ダウンロード…と、様々なフォーマットで出た。

2CDというのが通常盤のようで、1971年、ローリング・ストーンズ・レコードからの第一弾リリースとなったアルバム『スティッキー・フィンガーズ』から2016年の『ブルー&ロンサム』まで、要するに初期のロンドン/デッカ時代以外の音源からセレクトされた36曲が収められている。3CDものは、そこに2013〜18年までの未発表ライヴ音源で構成された10曲入りのボーナス・ディスクが付く。こちらのライヴのほうで、「一人ぼっちの世界」「シーズ・ア・レインボー」「夜をぶっとばせ」「アンダー・マイ・サム」みたいなロンドン/デッカ時代の曲をあれこれ取り上げているのが面白い。ブラッド・ペイズリーとの「デッド・フラワーズ」、フー・ファイターズのデイヴ・グロールとの「ビッチ」、エド・シーランとの「ビースト・オヴ・バーデン」、フローレンス・ウェルチとの「ワイルド・ホース」という4曲のゲスト参加音源も聞き物だ。

まあ、ストーンズの場合はベスト盤もたくさん出ていて、わりと直近の2012年には、やはり40曲入り、50曲入り、80曲入りなど、多彩なフォーマットで編まれたベスト『Grrr!』をリリースしているし。正直、収録曲のダブりが気になるわけですが。そのあたりをざっくりチェックしておくと。

通常盤の36曲中、『ブルー&ロンサム』からピックアップされた「ジャスト・ユア・フール」「ライド・エム・オン・ダウン」「ヘイト・トゥ・シー・ユー・ゴー」という3曲のブルース・カヴァーをはじめ、『スティール・ホイールズ』からの「ロック・アンド・ア・ハード・プレイス」、『ブラック・アンド・ブルー』からの「ホット・スタッフ」、『山羊の頭のスープ』からの「ダンシング・ウィズ・ミスターD」、『ブリッジズ・トゥ・バビロン』からの「アウト・オヴ・コントロール」、『ヴードゥー・ラウンジ』からの「アウト・オヴ・ティアーズ」が『Grrr!』では聞けなかった曲。その他、「ビッチ」「ラフ・ジャスティス」「ユー・ガット・ミー・ロッキング」「レイン・フォール・ダウン」「セイント・オヴ・ミー」あたりも『Grrr!』では80トラック・エディションでしか聞けなかった曲だ。

というわけで、今回のコンピレーションを手に入れる場合の目玉となるとは、これらの曲と、ボーナス・ディスクに収められた近年のライヴ音源ということになる。そこら辺を意識しつつ3枚組エディションを買うというのが今回の正しい姿勢ということになりそう。ちなみに、今回みたいなコンピの場合、楽しむならストリーミングじゃなくフィジカルのほうがいい。ストリーミング版もアップル・ミュージックでざっと聞いてはみたけど、リマスターの具合が違う様々なアルバムからの音源の寄せ集めみたいな形で構成されているようで、音質・音圧がバラバラ。曲順も違うし。しかもボーナス・ディスクの収録曲のうち、エド・シーランとやってる「ビースト・オヴ・バーデン」と、デイヴ・グロールとやってる「ビッチ」が、日本だけかもしれないけれど聞けないし…。

つか、ストーンズなんだから。今さらベストじゃなく、全部オリジナルで揃えとけよ…って話ですかね。でも、まあ、普通だったら今回も半数近い15曲収められた70年代作品までのみで語られてしまいがちなストーンズの現在までの全体像を改めて意識する、その入口としては悪くないコンピなのでは…とも思いましたです。

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