Disc Review

Songs: the Music of Allen Toussaint / New Orleans Jazz Orchestra (Storyville)

2019.04.18

Songs

ソングズ〜ザ・ミュージック・オヴ・アラン・トゥーサン/ニューオーリンズ・ジャズ・オーケストラ

2015年に他界したニューオーリンズ音楽界の重鎮、アラン・トゥーサン。本当に特別な存在だった。

メロウで、まろやかで、トロピカルで、ちょっとエキゾチックで、飄々としていて、でもとびきりファンキーなその音楽性は絶品。ジャンルを超えて多くの影響を残した。R&B〜ファンク・シーンで活躍する多くのアーティストたちはもちろん、ザ・バンドやリトル・フィートのようなロック系アーティスト、細野晴臣や久保田麻琴のような日本のアーティストなど、多彩なジャンルに多くのトゥーサンズ・チルドレンが生まれた。

カントリー畑のグレン・キャンベルがトゥーサン作品で特大ヒットを飛ばしたこともあった。晩年のソロ・アルバム『ザ・ブライト・ミシシッピー』は、腕ききミュージシャンを従えたトゥーサンが、デューク・エリントン、ジャンゴ・ラインハルト、ルイ・アームストロング、セロニアス・モンクら偉大な先達の名曲を卓抜したピアノ演奏で綴ったジャズ・アルバムだった。50年代にミュージシャンとして、あるいはアレンジャーとして、コンポーザーとして、プロデューサーとしてプロ活動を開始して以来、その柔軟な感覚と幅広い音楽性を最大限に活かしながら、アラン・トゥーサンはニューオーリンズ音楽の興隆に大きく貢献してきたわけだ。

そんな偉人に捧げるトリビュート・アルバムがまたひとつ生まれた。それが本作。今回はジャズ的な側面からアラン・トゥーサンという素晴らしい才能を再評価しようという試みだ。言い出しっぺはジャズ・ヴォーカリストのディー・ディー・ブリッジウォーター。いろいろなジャンルでカヴァーされ、トリビュートされてきたトゥーサン作品だけれど、「ビッグ・バンド・ジャズ的なアプローチでアレンジされたものはあまり聞いたことがないわ…」と。ディー・ディーさんはふと、そんなことをアドニス・ローズに告げたのだとか。

ローズは2002年にアーヴィン・メイフィールドによって結成されたニューオーリンズ・ジャズ・オーケストラ(NOJO)のドラマーとして長年活動してきた男だ。メイフィールドが引退してしまったため、NOJOはある時期、活動休止を余儀なくされていたのだが、2017年、ローズが新ディレクター役を買って出て体制を立て直し。再び活発な活動に入ったところだった。ディー・ディーのアイディアにぴんときたアドニス・ローズはさっそくレコーディングに取りかかり、本作を完成させた。

アルバムに収められた全9曲中、6曲がアラン・トゥーサン作(75年にリリースした自らの傑作ソロ・アルバムのタイトル・チューンでもあり、グレン・キャンベルのカヴァーで全米1位にも輝いた「サザン・ナイツ」。78年のソロ・アルバム『モーション』の収録曲として、あるいはアーロン・ネヴィルのカヴァーなどでおなじみの「ウィズ・ユー・イン・マイ・マインド」。アーマ・トーマスに62年に提供した「イッツ・レイニング」と、63年に提供した「ルーラー・オヴ・マイ・ハート」。66年、リー・ドーシーに提供した「ワーキング・イン・ザ・コール・マイン」。63年、アル・ハートのトランペット演奏で日本でも大ヒットした「ジャワ」)。

ザ・チャンプスのヒット曲としておなじみの「テキーラ」はトゥーサン作品ではないが、69年にシングル「ウィー・ザ・ピープル」のカップリング曲としてカヴァーしていたことから選曲されたのだろう。残る2曲、「ガート・タウン」と「ジンプル・ストリート」がNOJOのメンバーがアラン・トゥーサンのことを思って作ったというオリジナル曲だ。

「ニューオーリンズは全米中の素晴らしいピアニストが集まった大きなジャズ・ホールだった。スペイン人も、有色人種も、フランス人もいた。世界中からあらゆる人種が集まっていた」

と、これは、20世紀初頭から活躍した偉大なピアニスト、ジェリー・ロール・モートンが故郷のニューオーリンズについて語った有名なコメントだが。アメリカ南部の玄関口と言われる港町だけに、ニューオーリンズには音楽の世界でも古くから様々な異文化がスパークし合っていた。スペイン音楽、フランス音楽、アフリカ音楽、カリブ音楽、そしてアメリカのジャズなど種々雑多な音楽性が渾然と渦巻いていた。そんな中から多くの魅力的な混合/融合音楽が新たに誕生し、音楽シーンに大きな影響を与え続けてきたわけだが。

そんなシーンの象徴のひとりでもあるアラン・トゥーサン絡みの作品を取り上げつつ、NOJOの面々がニューオーリンズという街の文化そのものへのトリビュートを成し遂げた意欲的な1枚だ。従来のビッグ・バンド・ジャズの味を思い切りたたえたスウィンギーなアレンジと、ニューオーリンズならではのマーチング・バンド/ブラス・バンドの躍動的なアレンジとがいきいき交錯。けっこうかっこいい。各メンバーのソロもなかなか充実。NOJOの専属シンガー、ニーヨ・ジョーンズやフィリップ・マニュエルらに交じって、ディー・ディー・ブリッジウォーターも「イッツ・レイニング」と「ウィズ・ユー・イン・マイ・マインド」にゲスト参加。ソロで、デュエットで、素敵な歌声を聞かせている。

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