Disc Review

Two Hands / Big Thief (4AD)

トゥー・ハンズ/ビッグ・シーフ

エイドリアン・レンカーとバック・ミークという2人のシンガー・ソングライターを核に活動する米ブルックリンの4人組、ビッグ・シーフのニュー・アルバム。今年の5月だったかに、これまで在籍していたサドル・クリークから4ADに移籍して通算3作目にあたる『U.F.O.F.』をリリースしたばかりなのに。もう新作が出ました。それが本盤『トゥー・ハンズ』。

プロデューサーとエンジニアは前作と同様、アンドリュー・サルロとドム・モンクス。すべての曲を書いているエイドリアン・レンカーは、前作を作る際、もう曲ができちゃってできちゃって…。もともとこんなに早く次作を出す気もなかったようだけれど、できちゃったものはしょうがない。かといって2枚組にするというのもちょっと違う気がするということで。前作を録り終えた瞬間、すぐさま2部作形式の続編制作に着手した、と。そういう流れらしい。

前作『U.F.O.F』をレコーディングしたワシントン州の森の中にあるベア・クリーク・スタジオではなく、今回は広大な砂漠の中にあるテキサス=メキシコ国境付近のソニック・ランチ・スタジオへ。気温40度。きわめて過ごしやすかったに違いない前回とは正反対と言ってもよさそうな過酷な環境をあえて選んだうえでのレコーディングだったのだとか。この2枚は双子のような関係で、前作を“天”だとすれば今作は“地”だ…と、そんなことを語っているエイドリアンのコメントをあちこちで目にしたけれど。

『U.F.O.F』には、内在するもの、外在するもの、両者ひっくるめた形での“未知なる対象”との遭遇というか、そういうものに対する好奇心というか、希望というか、畏れというか、諦めというか、そういったものが描かれていて。それを“天”と表現したのかも。対して、今回は“地”。地球、泥、そしてその下に埋まる骨…みたいなイメージらしい。自分たちがよく知り抜いているように思える様々な事象に、しかしどれほど不確かさというか、感知できていない真実が潜んでいるか、みたいなテーマもはらんでいそうだ。収録曲の大半は歌も含めてほぼオーヴァーダブなしのライヴ・レコーディングだったようで、それもまた文字通りアーシーな感覚を否応なく増幅してみせる。

エイドリアンの歌詞はイメージ豊かすぎて、ぼくごときの英語力では太刀打ちできず。今回もよくわからないまま。「フォゴットン・アイズ」って曲では、“忘れられた目は私たちが失ったもの/忘れられた手は私たちが選んだもの”とか“忘れられたダンスは生まれたときに置き去りにされたもの/忘れられた木々は地球の化石”とか、もうどう受け止めたらいいのかぐるぐるになっちゃうイメージを、例のちょっと震えているような、寂しげに揺らめく歌声で次々と突きつけてきて。で、ラスト、“忘れられた舌(言語?)は愛の言葉”という、意味ありげな、いかしたフレーズへと帰結。その瞬間、なんかもう、わからなくていいやって気分になったりして(笑)。

ちなみに、この曲の高音部とかでふにゃっと声が裏返りそうになるエイドリアンがなんだか魅力的で。これなど一発録りならではの効能かも。最高。

以前、ここのブログでも取り上げた先行トラックの「ノット」もいい。繰り返しになるけれど、あの曲、“部屋じゃない/始まりじゃない/群衆じゃない/勝利じゃない/惑星じゃない/旋回じゃない/覚醒じゃない/熱じゃない…”などと、脈絡なく、もう徹頭徹尾、あらゆることを否定しまくったあげく、歪みまくりのニール・ヤングばりのギターが暴れて、壊れて、静寂…みたいな。どことなく2016年のファースト『マスターピース』を想起させる、彼らなりの“激しさ”のようなものが感じられて。今回の『トゥー・ハンズ』は、全体的にそういうアルバムに仕上がるのかなとぼんやり予想していたのだけれど。

どうやらそうでもなく。そういう曲もあれば、ぐっと鎮静した感じの曲もあって。これまで以上に彼らの豊かな“幅”を見せつけられた1枚という感じ。そうやって、ビッグ・シーフというバンドが凄まじい勢いで成長しつつあることをぼくたち聞き手に思い知らせてくれるのだ。来年5月に来日するんだよね。まじ、楽しみ。

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