Disc Review

Memorial Collection / Buddy Holly (Geffen/Decca), Down The Line: Rarities / Buddy Holly (Geffen/Decca)

メモリアル・コレクション+ダウン・ザ・ライン〜レアリティーズ/バディ・ホリー

ドン・マクリーンが名曲「アメリカン・パイ」の中で“The day the music died”、音楽が死んだ日、と表現した1959年2月3日。そうです。バディ・ホリー、リッチー・ヴァレンス、ビッグ・ボッパーの命を奪った、あの悲劇の飛行機事故から今年で50年。ということで、偉大なロックンロールのオリジネイターのひとりであるバディ・ホリーの死を悼み、その才能を改めてたたえようと、米Geffenが2組、バディ・ホリーのアンソロジーを編んだ。

ひとつは、基本的に代表的録音満載の表アンソロジー『メモリアル・コレクション』。もうひとつがレア音源満載の裏アンソロジー『ダウン・ザ・ライン~レアリティーズ』。前者がCD3枚組、後者が2枚組。両方あわせて、かつてマニアの感涙を呼んだLPボックス『ザ・コンプリート・コレクション』的なものになるってことかな。『コンプリート…』をそのままCD化してくれれば話は早いのに、と。誰もが思っていそうだけど。そう思う人は、もうブートで買っちゃってるか(笑)。何はともあれ、うれしいリリースです。

重要なレパートリーを総まくりした『メモリアル・コレクション』のほうにも初期のレア音源や、他界する直前、58~59年にマリア・エレーナ奥様のニューヨークのアパートメントで録音された伝説の音源のアンダブド・ヴァージョンなどが入っていたりもするが。熱心なファンには、やはり『ダウン・ザ・ライン』のほうがぐっとくる。13歳のときに自宅で録音されたハンク・スノウのカヴァーに始まり、50年代にボブ・モンゴメリーとのデュオ“バディ&ボブ”名義で録音された音源、まだバディ・ホリー&ザ・クリケッツと名乗る前、デッカに売り込みのために送られたアセテート盤音源を含むバディ・ホリー&ザ・スリー・チューンズ名義での録音、56年にテキサス州ラボックにあったバディ・ホリーの家のガレージで録音されたロックンロール・セッションからの音源、57~58年の録音からザ・ピックスのオーヴァー・ダブ・コーラスを抜いた音源やファルス・スタート系の音源、作曲用のデモ、そしてニューヨークのアパート音源などなど。

まあ、ファンにはおなじみどころのレア音源がずらりと並んでいるわけだが。バディ&ボブ音源の中には63年になってからファイアボールズがバック演奏をオーヴァーダブしたテイクしか出ていなかった曲もあって。そのうち、両アンソロジーあわせて5曲のアンダブド・ヴァージョンが今回初お目見えしている。ここが目玉かな。ニューヨーク・アパートメント・テープに残っていたマリア・エレーナとの会話も公開されていて、これも興味深い。

バディ・ホリーがロックンロール黎明期に成し遂げた功績は本当に大きい。プロデューサーであるノーマン・ペティとの共同作業のもと、先達レス・ポールの試行錯誤に影響されながら、ダブル・トラッキングを多用したレコーディングを行なったり。一発録りではなく、コーラスなどを後でダビングする形式を確立したり。ジェリー・アリソンのタム・ロールを強調したドライヴ感あふれるサウンドをクリエイトしたり。そして何よりも、サックスとピアノ中心だった従来の50年代型バンド編成をぶちこわし、ギター2本にベース、ドラムという現代に通じるバンド・スタイルを確立したり。

ロマンチックな歌詞も素敵だ。ちょっと青く、甘ずっぱく、楽天的なティーンエイジ・ヴァイブレーション。そんな気分を表現するために、バディ・ホリーは独特のリズミックな言語感覚を駆使した。「メイビー・ベイビー」とか「オー・ボーイ」といった曲名にもその傾向が見て取れるし。曲中に“プリティ・プリティ・プリティ・プリティ…”と、子供言葉ふうのくり返しを多用したり、“ア・ヘイ、ア・ヘイ・ヘイ…”という掛け声を折り込んだり、“well”という単語を“ア・ウェラ・ウェラ・ウェラ…”と発音してみたり。様々な試行錯誤の果てに、裏声と地声を巧みに交錯させた器楽的唱法や、今やロックンロール・ヴォーカルには欠かせないヒカップ唱法が完成した。

偉大です。改めてたたえましょう。そうそう。宣伝ですが。左の告知欄でもお知らせしている通り、今月のCRTイベントはバディ・ホリーが主役。お時間のある方はぜひ。一緒にお賑やかにバディ・ホリーの功績をたたえましょう。萩原祐子も DaDooRonRon.com のほうでお知らせしてます。そちらもぜひご一読を。

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