Disc Review

G. Love & Special Sauce (30th Anniversary Expanded Edition) / G. Love & Special Sauce (Epic Records)

G.ラヴ&スペシャル・ソース(30周年記念拡張エディション)/G.ラヴ&スペシャル・ソース

G.ラヴが大好き。かっこいい。ずっと。なので本ブログでもちょいちょい彼の新作を取り上げてきているけれど。

やっぱり忘れられないのは彼がスペシャル・ソースを率いてリリースした初アルバムを聞いたときのこと。以前、2020年に彼の『ザ・ジュース』ってアルバムを取り上げたときにも書いたことを、ここで改めて引用させてもらいますね。

初めてこの人のアルバムを聞いたときのショックは忘れられない。

1994年のことだ。ある時期、旧譜音源の再発だけで細々と生きながらえていたブルース/R&Bの名門レーベル、オーケー・レコードが、再起をかけて新譜をリリースすることになって。その第一弾として登場したのが、当時22歳の若者だったG.ラヴくんが自らのバンド、スペシャル・ソースを率いて録音した『G.ラヴ&スペシャル・ソース』で。伝統的なシカゴ・ブルースの味をベースに、大胆にヒップホップ的な方法論とか、ファンキーなグルーヴとか、オルタナなエッジ感とかを導入した逸品。しびれた。

翌年に実現した来日公演もやばかった。かっこよかった。常にファンキーにバウンドし続ける現代的なグルーヴと、まさにブルースとしか表現できない“枯れ”と。熱さとクールさ、と言い換えてもいい。あるいは、伝統への敬愛と現代への目配り、とか。とにかく、そうした様々に刺激的なパラドックスがうねうねと渦巻くステージは圧倒的だった。

過去の音楽の要素を現代的な感覚で再構築するという方法論自体、たいして目新しいものではないけれど。しかし、G.ラヴは過去のおいしいところを無責任にかすめ取るという安易なやり口ではなく、間違いなく伝統をきっちり身体にたたき込んだうえで現代に生きている。そんな手応えが実に爽快だった。番組に来てもらって生演奏してもらったり、雑誌でインタビューさせてもらったり。ほんと、楽しかった。

ついでにもうひとつ軽めの引用。こちらは2022年にソロ名義でのアルバム『フィラデルフィア・ミシシッピ』が出たとき書いたことだけど、“あのころ、G.ラヴとかベックとか、伝統的ブルースの味と、90年代的なヒップホップの方法論やオルタナティヴ系のエッジ感、ローファイっぽいグルーヴとをいきいきと合体させようとする新世代アーティストががんがん出てきていて。ぼくもものすごくハマった…”のでありました。

そんな初ショックから、なんと30年! いやいや。歳月が過ぎゆくのは速い。G.ラヴくんももうすっかり大ベテランだ。というわけで、30周年記念盤、ダウンロード/ストリーミングのみではありますがデジタル・リリースされました。聞いているといろいろ思い出します。「コールド・ビヴァレッジ」とか「ジス・エイント・リヴィング」とか「シューティング・フープス」とか、ほんと大好きだったなぁ。

もちろんエクスパンデッド・エディションになっていて。1994年のオリジナル・アルバムの収録曲14曲に加えて、1994年7月にニューヨークのニッティング・ファクトリーでレコーディングされた未発表ライヴ音源11曲が追加されている。寒い日のウォーキングがホットになります!

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