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Disc Review

Philadelphia Mississippi / G. Love (Philadelphonic Records/Thirty Tigers)

フィラデルフィア・ミシシッピ/G.ラヴ

あれは確か1995年のこと。まだメジャー・デビューしたてだったG.ラヴが来日して。テレビの番組とか雑誌の記事とか、いろいろな場で彼にインタビューすることができた。

あのころ、G.ラヴとかベックとか、伝統的ブルースの味と、90年代的なヒップホップの方法論やオルタナティヴ系のエッジ感、ローファイっぽいグルーヴとをいきいきと合体させようとする新世代アーティストががんがん出てきていて。ぼくもものすごくハマったものだけれど。

そういう新旧文化をアナーキーに混在させるアプローチは今後も変わらないのか、あるいはよりルーツ・ミュージック寄りに、はたまた現代寄りになっていくのか、あなたがどういう方向に向かうのか興味があります…的なことを訊ねてみたら、彼はこんなふうに答えてくれた。

「どうかな。好きなものが過去のものであれ未来であれ、生きているのは今なんだから。作る音楽は今の音楽になるはずだろう? まあ、確かにデビュー・アルバムを作る前、ヒップホップをたくさん聞いてはいた。それである日、カントリー・ブルースを弾きながらその上でラップしてみたんだ。何の気なしにね。フィラデルフィア人だからさ、ぼくは。フィリーの感覚。スピリット。フィラデルフィアは自由の街なんだよ」

あれから30年近くの歳月が流れて。でも、G.ラヴは今なお同じアティテュードでブルースとヒップホップの間を柔軟に行き来している。かっこいいね。

と、そんなG.ラヴの新作。出ました。『フィラデルフィア・ミシシッピ』。G.ラヴの地元はペンシルヴェニア州フィラデルフィアなわけだけれど。アメリカには別のフィラデルフィアもあって。それがミシシッピ州ネショバ・カウンティの郡庁所在地にあたるフィラデルフィア市。ペンシルヴェニアから南部のブルースに憧れに満ちた眼差しを送り続けてきたG.ラヴにとって、フィラデルフィアを巡るこの不思議な偶然というのはきっととても刺激的なものだったに違いない。

というわけで、G.ラヴくん、またまた持ち前のクロスオーヴァー感覚を全開に。盟友、ノース・ミシシッピ・オールスターズのルーサー・ディッキンソンがプロデュース。参加ミュージシャンは、クリストン“キングフィッシュ”イングラムやティキラ・ジャクソン、ジョンテイヴィアス・ウィリス、ジュニア・キンブロウの孫にあたるキャメロン・キンブロウといったブルース・シーンの新世代をはじめ、G.ラヴと同じころ台頭してきた中堅というかベテランというかのアルヴィン・ヤングブラッド・ハート、遅咲きのヒル・カントリー・ブルース・マン、R.L.ボイスといった渋いところを迎え。そこにフィラデルフィアのスケーター・ハードコア系のチャック・トリースのグルーヴを絡ませたり、スクーリー・D、スピーチ、フレディ・フォックスらアイコニックなヒップホップ勢を大胆に投入したり…。あの手この手でG.ラヴ流ヒップホップ・ブルースの究極を編み上げてみせる。

2020年の前作『ザ・ジュース』は冒頭、25年前のぼくの質問で言えば、どちらかというとルーツ寄りのアプローチだった。あのアルバムはグラミーにノミネートされたり。それなりの評価を得たわけで、その路線をさらに突き進めたほうが安全策だった気もしなくはないけれど。そこにとどまることができず、こっち方面へと大きく振っちゃうところが、やっぱりG.ラヴだなぁ、と。頬が緩みます。

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