Disc Review

Wake UP! / Hazel English (Polyvinyl)

ウェイク・アップ!/ヘイゼル・イングリッシュ

2017年ごろからインディ・シーンで話題を巻き起こしていたヘイゼル・イングリッシュ。オーストラリアのシドニーで生まれて、今はアメリカ西海岸を本拠に活動するポップなシンガー・ソングライターで。なんともレトロなリヴァーブ感とキュートでヘイジーなメロディ・センスが交錯する、どこか切ない世界観がたまらなく。レイト・シックスティーズっぽいファッション感覚も含め、ぼくもあれこれEPなどが出るたび楽しませてもらってきたものだけれど。

ついに初のフル・アルバムが出ました。2018年から制作が始まっていたというから、けっこうじっくり取り組んだ1枚という感じ。もちろん時間をかけただけの価値がある、ぐっとスケールアップした仕上がりになっている。

キム・ゴードンやアリエル・ピンク、チャーリーXCXなどを手がけるジャスティン・レイスンと、ディアハンターやベル&セバスチャン、アニマル・コレクティヴらを手がけるベン・H・アレンがプロデュース。もちろん、基本的な路線は変わらず、1960年代後半のローレル・キャニオンあたりを思わせるマジカルな香り満載のドリーミーなポップ・サイケ・サウンドがアルバム全編を貫いているのだけれど。

かといって、超マニアックになりすぎず、適度に1980年代のニュー・ウェイヴ的な要素も、1990年代にかけてのネオアコっぽい要素も、あるいはぐっと遡って1960年代初頭のガール・グループ・サウンドのノウハウとかも平気で混ざってきてしまうざっくり感があって。それがいい形でコンテンポラリーな感触をもたらしているのかも。

加えて、やはり21世紀に暮らす女の子ならではの孤独感とか不安感とか、それでもなんとかどこかで誰かとつながり合いたい切なる思いのようなものとか、でも実は何もできない諦観みたいなものとかを紡いだ歌詞の感触もあり、結果、今の時代に機能するポップ・ミュージックにきっちり仕上がっているところが素敵だ。過去リリースされたどのEP群よりも、そのあたりのニュアンスが強まった感じ。時折、ラナ・デル・レイみたいに聞こえる瞬間すらあるし…。

おっさん世代にもぐっとくる新世代によるレトロ・ポップって感じです。ありがとうございます。

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