Disc Review

New Morning Howl / Brent Windler (Goldstar Recordings)

ニュー・モーニング・ハウル/ブレント・ウィンドラー

カンサス・シティのシンガー・ソングライター/ギタリスト、ブレント・ウィンドラー。ローカル・バンド、サンズ・オヴ・グレイト・デインのメンバーだ。10年くらい前にアルバムを発表したり、その後もEPを何作か出したり。「バレット・レフト・イッツ・バレルズ・ヘッド」って曲とか、なんか、それなりに聞いていた覚えも…。

まあ、ジャングリーなパワー・ポップというか、ほのかにアメリカーナ的な郷愁も漂うサンシャイン・ポップというか、そういう、バンドキャンプあたりにひしめいている感じの、ちょっと雑な、いかにもローカルなインディー・バンドではあるのだけれど。

そんなバンドの中心メンバー、ウィンドラーさんが放つ初ソロ・アルバムが本作だ。2019年あたりからちらちらリリースしてきたシングル曲なども含む1枚で。バンドでの持ち味と基本的には同路線。ただし、音作りはより精密に。曲によっては1960年代半ば過ぎのビーチ・ボーイズというか、フィレス末期のフィル・スペクターというか、“ホワイト・アルバム”前後のビートルズというか、そういうニュアンスが見え隠れするドリーミーなオーケストラ・ポップっぽい仕上がりのものもある。

8月末にリリースされた1枚。このリリース時期にぴったりな、夏の終わりから秋に向かう季節の微妙なムードをたたえた佳作って感じ。ファウンテンズ・オヴ・ウェインとかジェイソン・フォークナーとか、あの辺が好きな方の耳にはふっと引っかかるかも。なので、ぼくの耳には見事に引っかかっちゃいました。

広がりのあるコーラス・ハーモニーを伴った淡いインスト曲などもあって、思いきりビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』っぽかったり、コード感が『サンフラワー』あたりを思い出させたり、あるいは深いエコーに彩られたスライド・ギターの響きがジョージ・ハリスンやバッドフィンガーふうだったり、アコースティック・ギターを核に据えたサイモン&ガーファンクルっぽい3拍子ものがあったり、アソシエーションっぽいハーモニーが聞かれたり…。

アルバムのエンディングを飾る「イン・マイ・デイズ」とか、そのあたりの要素が全部、ぐわっと交錯したみたいな1曲で。既視感たっぷりではあるものの、それら詰め込まれた元ネタのどれとも違う世界観を生み出していて。印象的に何度か聞こえてくる“Goddamn, it’s a beautiful day”って歌詞も耳に残る。“day”のところで広がるハーモニーもたまらないです。

アルバムのオープニング・チューン「アラウンド・ザ・ベンド」のビデオ・クリップに映り込む『ペット・サウンズ・ボックス』とか、8ミリ映写機とか、たぶん地元と思われるローカルな風景とか、それらがすべてを物語っているような…。

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