Disc Review

The Roses / Ava Earl (self-released)

ザ・ローゼズ/エイヴァ・アール

ほんとだったら、ローラ・ニーロの初期アルバム群をヴァイナルで復刻して詰め込んだ待望のLP8枚組ボックスセット『アメリカン・ドリーマー』(Amazon / Tower)が本日リリースにされるので、それ紹介したかったのだけれど。さすがにまだ発売日当日の朝。買ったブツが手元に届いてません(笑)。当たり前か。なので、最新リマスターの具合とか、かつてCDのボーナス・トラックとかで世に出たレア&ライブ音源の初アナログ化の様子とか、ブックレットの内容とか、詳しいことがわからない状態。てことで、これはあわてず、後日手元に届いてからってことにして。

今朝は、ちょっと前に聞いて、なんとなく気になっていたアルバムをひとつ、軽くご紹介しておくことにします。

エイヴァ・アールの『ザ・ローゼズ』。アラスカのアンカレッジから車で1時間ほどのところに位置するという森と山の街、ガードウッド出身の18歳のシンガー・ソングライターの新作アルバムだ。7月末にストリーミングで聞いて、ほんわか素敵だなと思ったものの、フィジカルが本人のWEBサイトバンドキャンプでしか買えないみたいで。どうしようかなぁ…と悩みつつ、ついそのまま放置しておりました。

なんと18歳にして、これが4作目なのだとか。本人のサイトにそう書いてあった。けど、そこにもバンドキャンプにも、あと2枚のアルバムしかリストアップされてなくて。もう1枚はどんななのか、謎のまま。とりあえずそれら、以前出ていた2作もストリーミングでちょこっと聞いてみたら、自ら奏でるアコースティック・ギターを核に、ほんのちょっとだけ他のアコースティック楽器で彩りを加えた程度のきわめて簡素な弾き語り盤だった。それはそれで素敵な仕上がりだったのだけれど。

対して、今回は初のフル・アレンジド・アルバム。初めてナッシュヴィルへと出向いてレコーディングされている。本格デビュー作と考えていいのかな。プロデュースはジョー・ヘンリーやルーサー・ディッキンソンらとのコラボでも知られるアメリカーナ系夫婦デュオ、バーズ・オヴ・シカゴのJTネロ。といっても、けっしてやりすぎることなく。JTネロは基本的にこれまでのエイヴァのイノセントな路線を受け継ぎつつ、ホームメイドっぽい手触りをきっちり残す形で的確に多彩な音要素を彼女の紡いだ楽曲に添えてみせた。いい感じ。

オープニング・チューン「スプリングタイム」とか、最初はわりと親しみやすいカントリー・ロック〜フォーク・ロックのような形でスタートしながら、途中からバーズ・オヴ・シカゴのもう一人、奥さまのアリソン・ラッセルのコーラス・ハーモニーがふわっと滑り込んできて、清廉な聖歌っぽい味わいを醸し出していく。どの曲もこの感触に貫かれていて。心地よい。触れたら壊れそうなエイヴァの繊細な歌声と、アリソン、あるいはカナダのシンガー、オウナ・テイシェイラによる透明なコーラスの相性はばっちり。生まれ育った環境が活かされているのだろうなと思しきエイヴァのナチュラルな曲作りの才能もなかなか。それをペダル・スティール・ギターや、ヴァイオリン、抑制の効いたドラム/パーカッションなどがさりげなくサポートして。

今後、どんなふうにすくすく育っていくのか。ちょっと楽しみな個性です。

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