Disc Review

Factories, Farms & Amphetamines / Myron Elkins (Elektra/Low Country Sound)

ファクトリーズ、ファームズ&アンフェタミンズ/マイロン・エルキンズ

ジャケット見て女の子かと思ったら、男の子でした。しかも、けっこうごつめの(笑)。

マイロン・エルキンズ。ミシガン州オトセゴ郡出身の21歳だ。ハイスクール卒業後、17歳のときに地元の工場に就職し溶接工として働いていた。音楽は好きだったようで、地域の教会や近所のバーなどで何回か歌ったりしたこともあったらしい。やがて親戚にすすめられローカルなバンド・コンテストに出場。といってもバンドを組んだことなどなかったので、従兄弟と友人に声をかけ、3人でテキトーにグループを組み、3週間ほど練習を重ねた。で、コンテストに出てみたら、さすがに急造バンドだっただけに優勝は逃したものの、結果は2位! このときの経験から、マイロンくんは音楽の道に進みたいという新たな夢を抱くようになったのだとか。

それからほんの数年。夢が早くもかなったのが本作『ファクトリーズ、ファームズ&アンフェタミンズ』だ。かのデイヴ・コブのプロデュースの下、なんと伝説のナッシュヴィルRCAスタジオAで録音されたファースト・アルバム。かっこいいです。

明らかに、コブさんがこれまで手がけてきたジェイソン・イズベルとか、クリス・ステイプルトン、スタージル・シンプソン、ブランディ・カーライルら新世代ルーツ・ロック/カントリー・ロック系アーティストたちからの多大な影響を感じさせる仕上がりだけれど。21歳ながらすでに酒焼けしたみたいなしゃがれ声で、彼方に横たわる初期オールマン・ブラザーズ・バンドやZZトップ的なサザン・ロックや、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル的なスワンプ・ロック、さらにはジョニー・キャッシュとかウェイロン・ジェニングズとかのアウトロー・カントリーの伝統などにアクセスしてみせたような、そんな頼もしい1枚だ。

全曲、マイロンくんのオリジナル。インチキくさい音楽界に物申す「ナッシュヴィル・マネー」とか、ステレオタイプな男女像を批判する「ミスター・ブレッドウィナー」や「グッド・タイム・ガール」、生きていく厳しさを綴った「オールド・トラウマ」や「マシーン」など、なかなか血気盛んでよろしいです。

まだ若いこともあってどのテーマにもあまり深入りしてはいないというか、まだまだ音的にも表現的にも“薄い”感じは否めず。ただ、近年の“ブロ・カントリー”とやらに漂うどこかヴァーチャルな田舎の寓話っぽい感触とは確実に違う、米国のスモールタウンで育つ中、生々しく目撃してきた光景をスケッチしているのだろうなという実感が伝わってくるのは確かで。今後が楽しみ。

フィジカルもリリースされているけれど、正規盤とはいえCD-Rだとか。そういう時代かぁ…。

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