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Disc Review

Up All Nite with Prince: The One Nite Alone Collection / Prince (Legacy/Sony)

アップ・オール・ナイト・ウィズ・プリンス/プリンス

プリンスという人には、過去何度も、あー、やっぱこの人すげえや、と、改めて思い知らされた瞬間というのがあって。

いや、もう、とてつもなくすごいことは最初から当然わかっているのに。その上を行く凄味というやつをいろいろな形で見せつけられる。多くの彼のファン同様、ぼくもそういう瞬間を繰り返し体験してきた。映画『パープル・レイン』の公開初日のバカみたいな盛り上がりをたまたま取材で訪れていたアメリカの映画館で味わったときとか、『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』の強烈なポップ・サイケ感覚に出くわしたときとか、『ラヴセクシー』のアナログ盤が面出しでだーっとレコ屋の店頭を占拠しているのを目の当たりにしたときとか(笑)、名前をいきなり妙な記号に変えちゃったときとか…。

ライヴだと、個人的には断然、2002年11月。結果、最後の日本ツアーとなってしまった“ワン・ナイト・アローン・ツアー”の追加公演として、来日日程のアタマに付け足されたあのコンサート。かっこよかったー。痛快。強烈。球場やアリーナ系ではない、ホール・コンサートという環境もうれしかったし。またまたこの人のすごさを思い知った瞬間だった。

前年暮れに出た当時の最新アルバム『ザ・レインボウ・チルドレン』のリリースに合わせたワールド・ツアー。2002年の春から秋にかけて、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ各国を回ったあと、その締めくくりとしてやってきた日本での公演だった。ジャジーに、ファンキーに、さらに宗教に深くのめり込んでいた当時ならではのホーリーなアプローチも詰め込みつつ構成された名盤『ザ・レインボウ・チルドレン』の世界観を基調に、それまでのキャリアをも大きく振り返るようなパフォーマンス。

「パープル・レイン」もやったし、他にも「テイク・ミー・ウィズ・U」とか「ラズベリー・ベレー」とか「サムタイム・イット・スノウ・イン・エイプリル」とか「ナッシング・コンペアズ・2・U」とか。大サービス。かのメイシオ・パーカーを含む強靱なバンド、ザ・ニュー・パワー・ジェネレーションを従えての濃密な2時間半だった。忘れられない。

と、そんな来日ツアーの直後、2002年の暮れに出たライヴ・アルバムが『ワン・ナイト・アローン…ライヴ!』だった。プリンスにとってオフィシャルとしては初のライヴ盤。2002年3〜4月に行なわれた北米ツアーのうち、9カ所で収録された音源からピックアップして構成された3枚組(本編2CD+アフター・ショーのジャム・セッション1CD)で。オフィシャル・ファン・クラブ“NPG Music Club”の会員向けに届けられたボックスセットには、ピアノ弾き語りを基調としたこれまたとてつもなく素晴らしいスタジオ・アルバム『ワン・ナイト・アローン』も特典CDとして封入されていた。

このCD4枚のセットに、やはり02年のライヴを収録した映像作品『ライヴ・イン・ラス・ヴェガス』を組み合わせた4CD+1DVDの豪華セットが『アップ・オール・ナイト・ウィズ・プリンス』。ストリーミングはされているものの、フィジカルとしてはなぜかすべて廃盤状態になっていた1995年以降のプリンスのオリジナル・アルバム群の再発プロジェクト“LOVE 4EVER”の最新リリースだ。

日本で歌ってくれた「パープル・レイン」はさすがに入っていないけれど、新旧レパートリーを絶妙にブレンドしながらの熱烈パフォーマンスをフィジカルCDとして楽しめるのはやはりうれしいものです。メイシオ、キャンディ・ダルファー、ナジーらも熱演。ギタリストとしてのプリンスも大爆発。アフター・ショーのほうではジョージ・クリントン親分も大暴れ。以前出ていた映像なしのセットは一時期ネットで数万円みたいな高値取引状態だったけど、こうして映像まで付いたアップグレード・ヴァージョンが輸入盤なら5000円、国内盤でも8000円くらいで買えるようになった。ありがたい。

当初は4月半ば、プリンスの命日直前にリリースされる予定だったけれど、新型コロナ禍のごたごたで発売が延期され、5月末になってようやく出た。アナログLP化されるというのも今回の再発の目玉だったけれど、そちらの計画は8月に延期されたみたい。ちなみに、今回同時に再発された『ザ・レインボウ・チルドレン』のアナログLPはクリスタル・クリア・ヴァイナル、初アナログLP化となる“ワン・ナイト・アローン”シリーズのほうはパープル・ヴァイナルだそうです。

今回はライヴのことばかり書いたけれど、ほぼプリンスひとりのピアノと歌で綴られた『ワン・ナイト・アローン』のほうも、今さら言うまでもなく、この人の音楽性の深さを思い知ることができる“静かな”超名盤。万が一、未体験の方がいらっしゃったら、この機会にそちらもぜひご堪能あれ。

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