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Disc Review

Peephole in My Brain: British Progressive Pop Sounds of 1971 / Various Artists (Grapefruit/Cherry Red)

ピープホール・イン・マイ・ブレイン~ブリティッシュ・プログレッシヴ・ポップ・サウンズ・オヴ・1971/ダナ・ギレスピー、カーヴド・エア、プロコル・ハルム、メディシン・ヘッドほか

みなさんには特に興味ないであろう個人史ではありますが。1971年。ぼくは15歳で。高校生になった年。中学時代から肌身離さず持ち歩いていたトランジスタラジオで楽しむAM放送はもちろん、自宅のステレオセットでは前年のFM東京開局で本格的に動き始めたFM放送にもどっぷり浸るようになって。もう洋楽ポップス三昧の時期。毎日が新たな出会いだらけで、ほんと楽しかったなぁ。

で、そんな1971年の英国ポップ・シーンのことを思い出してみると。これはもう断トツでジョージ・ハリスンの年だった。前年暮れに出た『オール・シングス・マスト・パス』がえんえん大ヒットしていて。シングル「マイ・スウィート・ロード」もバカ当たり。ぼくは早生まれなので、まだ中学生だったころのことだけれど。FM放送から流れてきたこの曲を初めてヘッドホンで聞いたとき、イントロ、深いエコーを伴った複数台のアコースティック・ギターによるコード・カッティングに包まれて、おーっ、これが『ミュージック・ライフ』の亀渕昭信さんの記事で読んで言葉としてだけは知っていた“フィル・スペクター・サウンド”ってやつなのか…と、まあ、まだあんまりよくわかっていないなりに身体が震えるくらい感動したことをよーく覚えている。

あとはT.レックス。これにもハマった。「ホット・ラヴ」とか「ゲット・イット・オン」とか大好きだった。あと、ミドル・オヴ・ザ・ロードの「チピチピ天国(Chirpy Chirpy Cheep Cheep)」とか、ハリケーン・スミスの「太陽を消さないで(Don't Let It Die)」とか、シングルでよく聞いたなぁ。アルバムで言うとポール・マッカートニーの『ラム』とか、ローリング・ストーンズの『スティッキー・フィンガーズ』とか、ロッド・スチュワートの『エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー』とか、ザ・フーの『フーズ・ネクスト』とか、ELPの『タルカス』とか、ムーディ・ブルースの『童夢(Every Good Boy Deserves Favour)』とか…。

アメリカに目をやれば、ジェイムス・テイラーとかキャロル・キングとかが大当たりしていて。マーヴィン・ゲイが「ホワッツ・ゴーイン・オン」を出していて。個人的にはビーチ・ボーイズの『サンフラワー』を聞きまくっていて。別の流れがあったわけだけれど。イギリスものだけ追いかけていてもすごい年だったんだなと、今振り返って改めて思う。あれからほぼ半世紀か…。お金も大して持っていない高校1年生が一人で全部をカバーすることなどできないから、高校で友達になったツカモトくんとかシノザワくんとかとLPの貸し借りをしながら、JASRACからは思いきり怒られそうだけれど、全部カセットにダビングしまくって満喫したものです。友達ってありがたいね!

と、まあ、まだマニアックな道へと本格的に分け入っていたわけではない高校生のぼくとしては、そんなふうに大ヒットもの中心にイギリスの音楽シーンを追いかけていたのだけれど。そんな1971年、ヒットチャートの向こう側でどんなことが起こっていたのかを教えてくれる最高に面白いコンピレーションが出た。チェリーレッド・レコード傘下のグレープフルーツ・レーベルからのリリース。このレーベルは主に1960年代半ばから70年代にかけて…という時期にこだわりながら、やばいコンピレーションを次々編纂し続けているのだけれど。その中に“The British Progressive Pop Sounds of…”という人気シリーズがあって。これまで1967年編、1968年編、1969年編とリリースを重ねて、去年『New Moon’s In The Sky: The British Progressive Pop Sounds of 1970』ってところまで来た。

今回出たのはその続編だ。1971年編。フィジカルだとCD3枚組全71曲入り、ストリーミングおよびダウンロード販売だとほぼ半数の全37曲というボリュームで1971年の裏ポップ・シーンを総まくりしてみせている。71年の71曲って感じで楽しまないと意味がないのかもしれないとは思うものの、予約しておいたフィジカルCDがまだ手元に届いていなくて、ぼくは今のところストリーミングで楽しんでいるだけなんだけど…。

それでも十分に楽しいコンピです。“ブリティッシュ・プログレッシヴ・ポップ”と銘打たれているけれど、後年の、いわゆるプログレとはちょっと違って。サンシャイン・ポップ寄りのソフト・ナゲッツというか、サイケ・ポップというか、適度な洗練と適度な粗暴さが微妙なバランスで共存する隠れた名曲集という感じ。

デヴィッド・ボウイ作品を歌うダナ・ギレスピーに始まり、カーヴド・エア、プロコル・ハルム、バークリー・ジェイムズ・ハーヴェストといった有名どころの音源群を経て、先代(笑)ニルヴァーナの静かな名曲「ザ・サッデスト・デイ・オヴ・マイ・ライフ」とか、後期セカンド・ハンドの「ハンギン・オン・アン・アイリッド」とか、もろCSNというか初期イエスみたいなモンタージュの「ダングリング・イン・ザ・クール」とか、マドンナが「レイ・オブ・ライト」の下敷きにしたことでおなじみ、カーティス・マルドゥーンの「セファリン」とか、メディシン・ヘッドの初ヒット「ピクチャー・イン・ザ・スカイ」とか、細かいところまで。レッド・ソックスの「ミスター・テン・パーセント」なんか、針音バチバチの板起こしマスターみたいで。それはそれで、やばいレア音源聞いている感じがあって楽しい。

当時のアンダーグラウンド・シーンが徐々にメインストリームとクロスしていく感じがじわじわ伝わってくる。先述した通り、同時期アメリカではシンガー・ソングライターとかがブームになって、ニュー・ソウル・ムーヴメントが盛り上がって、音楽シーンの手触りが大きく変わろうとしていたわけだけれど、イギリスはイギリスで独自の変容が、静かに、しかし確実に進行していたんだなぁ、と。

フィジカルのほうにはケヴィン・エアーズとか、ホリーズとか、アトミック・ルースターとか、ムーヴとか、エマーソン・レイク&パーマーとか、マグナ・カルタとか、クレシダとか、キンクスとか、コリン・ブランストーンとか、ステイタス・クォとか、その辺も入っているらしい。早く聞きたいです。特にライナーとかは付かないようだけれど、国内流通盤も9月アタマに出るみたい。

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