Disc Review

Live At The Matrix 1967: The Original Masters / The Doors (Rhino Records/Elektra)

ライヴ・アット・ザ・マトリックス、1967:ザ・オリジナル・マスターズ/ザ・ドアーズ

先日、ローリング・ストーンズやグレアム・パーカーなど、年輪を重ねてなお現役感たっぷりにロックし続けるご長寿アーティストを賛美したばかり。そのときもお知らせした通り、今度の敬老の日にはCRTでも“ご長寿ロック”を寿ぐイベントをやる予定ではありますが。

その舌の根も乾かぬうちに、いやいや、そればかりじゃないよ、と。まだデビューしたばかりで将来どうなるかなんてまったくわかっていない若きアーティストの未知数のパワーってやつも、これはこれで何物にも代えがたい魅力を感じさせてくれるものだという事実を、今朝はまたみなさんと共有したいな、と思っているお調子者がここにいますよ(笑)。

今日の主役はザ・ドアーズ。彼らがデビュー直後、サンフランシスコのクラブ“ザ・マトリックス”で行なった超初期の伝説的ライヴ音源が出ました。マトリックスはジェファーソン・エアプレインのマーティ・バリンがピーター・エイブラムとゲイリー・ジャクソンとともに所有していたライヴハウスで。ジェファーソン・エアプレインはもちろん、グレイト・ソサエティ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーなどがそれぞれ出演時のライヴ盤を出しているので、名前を知っているロック・ファンも多いこととと思う。

ドアーズは1967年3月に出演。時期的には「ハートに火をつけて(Light My Fire)」が全米1位まで上り詰めるひと月半ほど前。5夜連続で出演し毎夜3セットずつライヴを行なったのだけれど。そのうち、3月7日と3月10日のパフォーマンスをピーター・エイブラムがオープン・リール・テープにまるっと録音していたのでした。

まあ、ご存じの通り、このマトリックスでのドアーズ音源、ブートレッグでもいろいろ出ていたし、1997年にはボックス・セットに数曲収められたり、2008年にCD2枚組でオフィシャル・リリースされたりもした。けど、それはすべてコピーのコピー…みたいな、コピーを繰り返した孫世代以下のテープを使った音質今いちのリリースで。こんなんじゃいかん、と、その後オリジナル・マスター・テープの捜索がスタート。

で、ついにファースト・ジェネレーションのオリジナル・マスター・テープが見つかって、2017年に3月7日の一部音源がレコード・ストア・デイ限定の商品としてアナログLP化されたり、ファースト・アルバムの50周年デラックス・エディションでCD化されたり、翌年のレコード・ストア・デイに3月10日の一部音源も世に出たり…。小出しにされてきたのだけれど。

ついに7日と10日、2公演それぞれの3セットの音源、現存するもの全部が出ました。CDだと3枚組、アナログだとLP7枚+7インチ・シングル1枚。CDで言うとディスク1に7日の1stセットと2ndセット、ディスク2に7日の3rdセットと10日の1stセット、ディスク3に10日の2ndセットと3rdセットを収録。全37曲。うち、未発表音源8曲、オリジナル・マスター音源での初リリースは14曲だ。

ちなみに、ディスク3の最後には2018年に出た、冒頭、ジム・モリソンの“Let's feed ice cream to the rats…”みたいな一言で始まる「ジ・エンド」も入っていて。最後、いきなりバスッと録音が切れてしまうやつ。これは10日ではなく8日か9日に録音されたものらしい。アナログではこれが7日の「ジ・エンド」とともにサイド6に入っていて。「ジ・エンド」2連発。これはこれですごい。

ファースト・アルバムの曲を中心に、まだ出ていなかったセカンド・アルバムの収録曲も交えつつのステージ。ミルト・ジャクソン作の「バグズ・グルーヴ」やマイルス・デイヴィス作の「オール・ブルース」といったジャズ系インストの未発表カヴァー音源も、ぐずぐず気味ではあるもののものすごく興味深いし。ハウリン・ウルフの「バック・ドア・マン」、ブレヒト/ワイル作の「アラバマ・ソング」、ジョン・リー・フッカーの「クローリング・キング・スネイク」のようなスタジオ・レコーディングもなされたカヴァー曲の他、ライヴ盤でおなじみのボ・ディドリー「フー・ドゥ・ユー・ラヴ」やマディ・ウォーターズ「クロース・トゥ・ユー」をはじめ、リー・ドーシー「ゲット・アウト・オヴ・マイ・ライフ・ウーマン」、B.B.キング「ロック・ミー・ベイビー」、バレット・ストロング「マネー」、ゼム「グロリア」、スリム・ハーポ「アイム・ア・キング・ビー」などのパフォーマンスも貴重だし。発見だらけ。拍手の感じから見て、クラブはけっして満員というわけではなかったみたいだけど、ブレイク直前のドアーズを目撃できた幸運な観客たちの驚きと戸惑いと熱い高揚が交錯するムードも追体験できて面白い。この場に居合わせてみたかったなぁ。

無敵状態の激走に突入する直前のスリリングなドキュメンタリーって感じです。フィジカル・リリースのみ。サブスクのストリーミングもデジタル・ダウンロードもなし。今どき珍しくてよいですね。

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