Disc Review

Last Chance to Learn the Twist / Graham Parker & The Goldtops (Big Stir Records)

ラスト・チャンス・トゥ・ラーン・ザ・トゥイスト/グレアム・パーカー&ザ・ゴールドトップス

来週の“敬老の日”に新宿ロック・カフェLOFTで催すCRT『祝・CRT25周年 敬老の日Special!』。ウィリー・ネルソン、ボブ・ディラン、ニール・セダカ、スモーキー・ロビンソン、ポール・サイモン、ジョニ・ミッチェルなど、年齢を重ねてなお、ますます輝き続けるレジェンドたちの“ご長寿ロック”をみんなで聞きながら楽しく敬おう! と目論んでおります。

PCでご覧の方は右方の、スマホでご覧の方は下方の、CRTインフォ・コーナーを参照のうえ、いらっしゃれる方はぜひいらしてください。盛り上がりましょう!

そういえばローリング・ストーンズも新曲を発表して。「アングリー」。これがまたごきげんな仕上がりだったし。過去のビデオクリップを使いながら今の音にシンクロさせちゃうという、そういう時代の最先端技術も臆することなく使いこなしながら、でも、肝心の音のほうは“これぞストーンズ”というある種の定型を堂々と、これまた臆することなくぶちかましてみせていて。痛快だ。

ブルース・スプリングスティーンが体調不良でコンサートを何本か延期しちゃっているのが心配だけれど、ポール・マッカートニーも快調に飛ばしているみたいだし、来年早々のビリー・ジョエルの来日も楽しみだし。ご長寿ロックの夜、題材には事欠かない予感。楽しみです。

思えば、時代を超えて生き続けるご長寿アーティストというのは、自分が信じる音をどんな時代にあっても新鮮に響かせる、その術を知っているというか。時代の最先端の空気感とやらに自分からいたずらに歩み寄る必要などないんだという事実に、いろいろな曲折ののち、気づいた人たちなんだろうな、というか。

そんなことを改めて思い知らせてくれるうれしい1枚が、またまた出ました。グレアム・パーカーの『ラスト・チャンス・トゥ・ラーン・ザ・トゥイスト』。ジェラント・ワトキンス(キーボード)、マーティン・ベルモント(ギター)、サイモン・エドワーズ(ベース)ら名手たちによるザ・ゴールドトップスを率いての新作だ。ドラムがロイ・ドッズから今回、ジム・ラッセルに代わったけれど、このコンビネーションは2018年の『クラウド・シンボルズ』以来。途中にデビュー40周年のアコースティック・ソロ作を挟んでのリリースになる。

“ザ・レディ・バグズ”なる2人組女性コーラスも、“ジ・イージー・アクセス・オーケストラ”という3管ホーン・セクションもごきげん。R&B調あり、レゲエ調あり、ロカビリー調あり、カントリー調あり、フォーク調あり、ゴスペル調あり。クラシック・ソウルのディープなグルーヴとルーツ・ロックの素朴であるがゆえに強烈なドライヴ感とが絶妙に交錯する1枚に仕上がっている。プロデュースは『クラウド・シンボルズ』同様、パーカーとタック・ネルソン。

確かに、特に新しいことなどひとっつもやっておらず。しかし、ここに収められているサウンドはどれもまったく疲弊していない。使い古されていない。それを72歳になったグレアム・パーカーが、若いころには絶対に手に入れることのできない“円熟”というご長寿アーティストならではの最終兵器を自然体で駆使しながら、堂々と、まっすぐ、盤面に定着させてみせているのだ。かといって保守的だとか、古臭いとかいうことも一切なく。そこがまたかっこいい。

日常のふとした出来事から文化的な問題まで、時に毅然と、時にウィットを交えつつ、クールに見据えた歌詞もしみる。初期、ザ・ルーモアと組んでごきげんにブルージーなサウンドを聞かせてくれていたころも最高だったけれど、今も負けずに最高。このバンドとのUKツアーも秋に予定されているのだとか。日本にも来ないかなぁ…。見たい。

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