キンドレッド・スピリッツ/ラーキン・ポー
レベッカとメーガンのローヴェル姉妹がツー・トップを担うブルース・ロック・バンド、ラーキン・ポー。今年の6月にリリースされたアルバム『セルフ・メイド・マン』から半年も経たないうちに、なんとさらなる新作が登場した。
ファンならばきっと追いかけていたことと思うけれど、新型コロナウイルス禍、二人はYouTubeなどを通じて、妹のレベッカがアコースティック・ギターとリード・ヴォーカル、おねーちゃんのメーガンがラップ・スティールとコーラスという簡素な編成による多彩なカヴァー曲を着実なペースで公開し続けてくれていて。
今回の新作はそんな流れの中で急遽制作されたカヴァー・アルバムだ。選曲がわりと堂々としていて、ごきげん。何はともあれ、収録曲とそれぞれのオリジナル・アーティスト、オリジナル発表年をざざっと列挙しておくと——。
- ヘルハウンド・オン・マイ・トレイル(ロバート・ジョンソン、1937年)
- フライ・アウェイ(レニー・クラヴィッツ、1998年)
- ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド(ニール・ヤング、1989年)
- 悲しき悪魔((You’re The) Devil In Disguise)(エルヴィス・プレスリー、1963年)
- 夜の囁き(In the Air Tonight)(フィル・コリンズ、1981年)
- サテンの夜(Nights In White Satin)(ムーディ・ブルース、1967年)
- フー・ドゥ・ユー・ラヴ(ボ・ディドリー、1956年)
- テイク・ホワット・ユー・ウォント(ポスト・マローン feat. オジー・オズボーン&トラヴィス・スコット、2019年)
- ランブリン・マン(オールマン・ブラザーズ・バンド、1973年)
- ベル・ボトム・ブルース(デレク&ザ・ドミノス、1970年)
- クロコダイル・ロック(エルトン・ジョン、1972年)
女の子の年齢を云々するのは微妙かもしれないけど、この姉妹、今、たぶん30歳前後なので、「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」が、ぎり、生体反応があるころに発表された曲で。リアルタイムものは、あと「フライ・アウェイ」と「テイク・ホワット・ユー・ウォント」くらい。1930年代の「ヘルハウンド・オン・マイ・トレイル」はもちろん、残る楽曲は全部後追いで知った曲ということになるわけだけれど。
にもかかわらず、全曲を熱く深いリスペクトが貫いている感じで。おじさん、泣けてきます。後からどっぷり聞きまくったんだろうなぁ。そういう意味では、どの曲も彼女たちの世代を超えたルーツ表明と言ってよさそうだ。“キンドレッド・スピリット”というのは、まあ、気の合う仲間というか、同志というか、心の友というか? 言い得て妙なアルバム・タイトルかも。
ノッケのロバート・ジョンソンは、YouTubeで公開されていたのとはちょっと違って、1分足らずの導入部っぽいヴァージョン。「夜の囁き」や「ランブリン・マン」みたいに、わりとまっすぐ、原曲の感触を受け継いだものもあれば、リゾネーター・ギターのカッティングがブルージーに響く「フライ・アウェイ」や、3拍子のフォークっぽいアレンジをほどこした「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」や、なんとドラマチックなマイナー調へと大胆に改造された「悲しき悪魔」のように、換骨奪胎系のものも。
一部の曲で、レベッカの夫であるタイラー・ブライアントのバンドのドラマー、ケイレブ・クロスビーがパーカッションを担当しているほかは、姉妹の一発録りにちょこっとだけオーヴァーダブがほどこされただけという、まさに“素顔のラーキン・ポー”とでも言うべき真っ向からのアンプラグド・アルバム。彼女たちのウェブ・サイトのストアではフィジカルも売っているのだけれど、今のところ、日本のAmazonとか、タワーレコードとかで、フィジカルは扱っていないみたい。ダウンロード販売とストリーミングのみって感じ。盤、ほしいなぁ。またウェブで頼むか…。
二人ともギターうまいし、自然体だし、ヴォーカルも的確。特におねーちゃんのブルージーなラップ・スティールにはいつもしびれますわ。